DIME MAGAZINE
海外ドラマは現地と同時配信で世界的流行に乗る
2022年は『HBO／HBO Max』の人気ドラマの影響もあって、海外ドラマファンの支持が高く好調をけん引した。さらに韓流ドラマやタイドラマなど女性人気の高いドラマも人気を集めた。特に韓流ドラマは、これまでも20代から40代の女性の支持が高かったが、最近では特に20代以下の女性が人気をけん引しているという。海外ドラマの展開については、これまでCS放送やDVD発売後に配信するというスケジュールが多かったが、最近では現地との同時配信を積極的に行っている。
「グローバルの配信サービスでは当たり前だった世界同時配信ですが、SNSの普及で世界的に話題化することが増えています。海外の最新作への興味は以前より高くなっています。いまは現地の俳優さんなどの情報がSNSなどでダイレクトに入ってくるので、ネタバレ回避や現地の盛り上がりをタイムラグなしで体感したいという要望も大いですね。『U-NEXT』では韓流ドラマを筆頭に昨年から本国の放送と同時配信を積極的に行っています」（U-NEXT／ブランドマーケティング・伊藤さやかさん）
世界的大ヒット作『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』は、字幕版に加えて豪華声優陣による日本語吹き替え版も同時配信して人気を集めた。4K／ドルビービジョン／ドルビーアトモスなどにも対応。
© 2023 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO® and all related programs are the property of Home Box Office, Inc.
独占見放題で配信している韓流ドラマ『月水金火木土』は、2022年に現地・韓国での放送と同時配信された。韓流ドラマの人気を支える20代女性は、SNSなどの現地情報にも敏感なので同時配信は好評だという。
劇場やライブ会場との連携でファンをサービスに誘導
日本映画との連携や音楽やステージのライブ配信の充実も『U-NEXT』の特徴だ。邦画では『流浪の月』や『沈黙のパレード』といった話題の邦画を独占配信したが、特番を制作して劇場公開時から盛り上げる展開も行っている。さらにTOHOシネマズ、イオンシネマ、松竹マルチブレックスシアターズ、ユナイテッド・シネマなど大手映画館チェーンと提携してU-NEXTポイントで全国の劇場チケットを購入できるなど、『U-NEXT』を経由して映画館でも自宅でも映画を視聴してもらう施策も用意している。
「映画は映画館で観てほしいという想いもありますし、ライフスタイルに合わせて映画館でも配信でも観られる選択肢を用意することで、映画鑑賞の習慣、映画に触れてもらうサイクルをしっかり作って映画業界全体を盛り上げていきたいと思っています」（伊藤さん）
音楽ジャンルについてもコロナ禍以降、ライブ会場以外の鑑賞の選択肢としてライブ配信が定着。2020年6月のサザンオールスターズから課金型のライブ配信サービスをスタートさせ、2022年には、あいみょんの全国ライブや甲子園ライブなどのライブ配信を見放題で提供。2022年に独占見放題で配信された音楽イベント『日比谷音楽祭』は、ライブ会場に3日間10万人を動員したが、リアルタイム視聴者数は20.8万を記録するなど成功を収めている。すでにライブ配信は定着しているが、人気アーティストはまだ課金配信が多い。今後は、見放題で視聴できるライブ配信を増やしていく方針だという。さらに舞台などでは会場との差別化としてマルチアングルなども行なっている。
「人気の2.5次元のステージでは、マルチアングルで観たいカメラを選べるなどして、プラスアルファの体験を提供しています」（佐野さん）
さらに音楽ジャンルでは、ライブやMVの配信に加えて人気アーティストとコラボした形のコンテンツ配信の試みなども進めている。秦基博の楽曲『イカロス』では、インスピレーションを受けた3本の映画を制作し、楽曲の独占ライブ映像やMVと映画を合わせた作品群を特集として配信。ジャンルを横断して、アーティストを軸にしたさまざまなコンテンツを配信するという試みは『U-NEXT』らしい仕掛けといえるだろう。
映画『イカロス 片羽の街』は独占配信中。合わせて秦基博の過去のライブ映像やMVなどもまとめて独占配信されている。
動画配信の人気コンテンツのスポーツと格闘技も拡充
昨年頃から動画配信の人気コンテンツとして注目を集めるようになったジャンルがスポーツ・格闘技だ。『U-NEXT』は、これまでもゴルフの『マスターズ』や『JLPGA女子ゴルフツアー』などさまざまなスポーツ・格闘技を配信してきたが、今年に入って世界的人気の総合格闘技『UFC』や老舗番組をリニューアルしたボクシング『WHO’S NEXT DYNAMIC GLOVE on U-NEXT』などの配信を発表。さらに3月28日からはサッカープレミアリーグ、セリエA、MLBなどの人気スポーツリーグを配信している『SPOTV NOW』と提携。スポーツ・格闘技のジャンルでも魅力的なコンテンツがそろった。
「スポーツや格闘技のファンは、配信で音楽を楽しむファンよりもリアルタイム性を重視するので、ライブ配信に対する熱量がより高い印象があります。『U-NEXT』の『SPOTV NOW』パックは1200ポイントで視聴できます。毎月のポイント付与の範囲内なので、追加料金なしで視聴できますし、テレビの大画面でもお楽しみいただけます」（佐野さん）
毎月の付与ポイントで『SPOTV NOW』パックを利用すれば、これまでのサービスに追加してプレミアリーグの三苫薫選手やMLBの大谷翔平選手の活躍がそのまま視聴できる。最近の大画面テレビには『U-NEXT』アプリが用意されており、リモコンにボタンが配置されているメーカーも多い。スポーツの魅力であるライブ視聴が、手軽に大画面テレビで視聴できるのも大きな魅力になりそうだ。
電子書籍では、今年4月から『週刊少年ジャンプ』の配信がスタート。これまでもアニメとコミックスをシームレスに利用できることで電子書籍の存在感はあったが、多くの映像化作品を抱える『ジャンプ』ブランドは動画にも好影響がありそうだ。さらに2022年11月からはIP開発の一環として、コミックレーベルを立ち上げてオリジナル作品の配信もスタートさせている。ネットビジネスを手掛ける企業で独自IPの開発に取り組むところも増えているが、『U-NEXT』もその動きを加速させていくという。
「すでに専任の漫画編集者が複数所属しており、オリジナルのコミックや今年配信開始予定のウェブトーンを定期的に配信し、そこから映像化を目指すIP開発も行っていきます」（佐野さん）
これまで映画や海外ドラマ、アニメなどに強い印象だった『U-NEXT』だが、今年に入っての国内ドラマ、バラエティ、スポーツ、格闘技といったジャンルの人気コンテンツの追加は、新規登録を考えているユーザーにうれしいニュースだろう。これまで国内の他サービスと比較して月額が高い印象だったが、新ジャンルのコンテンツが一気に追加されたことで、かなりの割安感が出ている。特にスポーツ・格闘技ファンにとっては加入を検討したいサービスになった。他のサービスには値上げをしているところも出始めているが、月額を据え置きにしつつ攻めのコンテンツ拡充路線を取る『U-NEXT』は今後も注目を集めそうだ。
構成／久村竜二
最新号
