DIME MAGAZINE
いつの時代も、陰に隠れて悪事をたくらもうとする者は尽きない。「伏魔殿」は、そんな悪者が身をひそめる場所を表す言葉だ。普段、見聞きする機会が少ない言葉かもしれないが、アニメやゲームの中で使われたり、小説のタイトルに起用されたりするなど、さまざまな場面で登場している。
そこで本記事では、「伏魔殿」の意味や使い方を詳しく解説していく。言葉の意味を理解しておけば、日常会話やビジネスシーンでも活用できるため、ぜひチェックしてほしい。
伏魔殿とは？
まずは伏魔殿の読み方と意味、語源を見ていこう。
読み方と意味
「伏魔殿」の読み方は「ふくまでん」。悪人たちがたむろし、さまざまな悪事をたくらんでいる場所を指す名詞だ。小説やゲームなどの創作物において、悪魔が潜む殿堂を指して使われるほか、陰謀や悪事などがたくらまれることが絶えない場所を比喩的に表す言葉として用いられることもある。
語源は中国の伝奇小説
伏魔殿の語源は、中国の伝奇小説『水滸伝』に登場する建物の名前。『水滸伝』は、施 耐庵（し たいあん）によって著された作品とされており、「四大奇書」の一つとして歴史に名を残した名作だ。
物語の中では、一人の道士が山中に造られた建物の地下に魔王を封じ込める。軒先には金の文字で「伏魔之殿」と記された看板が掲げられ、のちにこの伏魔殿は“決して封印を解いてはならない場所”と人々の間で言い伝えられる。
伏魔殿の使い方
次に、伏魔殿の使用シーンと例文、類義語を紹介する。言葉の持つニュアンスを正確に理解できれば、さまざまな場面で会話の幅が広がるため、ぜひ使い方をマスターしておこう。
使用シーン
先ほど紹介した通り、伏魔殿は陰謀や悪事などが絶えずたくらまれている場所を指す言葉。フィクション作品に限らず、実生活においても怪しげな人物が出入りしている建物などを表して使うことができる。ただし、伏魔殿はネガティブな意味を持つ言葉であるため、使用する場面は慎重に選ぶ必要があるだろう。
例文
より具体的に使い方をイメージできるよう、伏魔殿を使った例文をいくつか紹介する。
【例文】
「表向きは善良な会社だが、陰で悪事ばかりたくらんでいるにもかかわらず、周囲から摘発されない伏魔殿だ」
「自分が配属された部署に新入社員が数名入ってきたが、ここは伏魔殿だから長く続かないだろう」
「あのビルには近づかないほうが良い、過去に伏魔殿だったと噂されている」
「5年振りに実家へ帰省したが、親戚一同が顔を合わせる度に遺産相続の話が絶えず、伏魔殿と化している」
伏魔殿の類義語
次に、伏魔殿の類義語を見ていこう。似た意味を持つ言葉は複数あるが、ここではそのうち3つを取り上げる。
裏社会（うらしゃかい）
「裏社会」は国家により確立させた法律に従わず、警察の取り締まりから逃れるように、いくつもの犯罪集団が集まる社会を表す言葉だ。また、暴力や威力を振るう反社会的勢力の活動も裏社会と呼ぶ。伏魔殿のように特定の建物や場所を指す言葉ではないが、組織犯罪などが平然と行われている場所を表す場合に適した言葉といえる。ただし、タブーに切り込むような表現でもあるため、使う時には注意が必要だ。
魔窟（まくつ）
「魔窟」には「悪魔の住んでいる場所」「麻薬の売買や売春などの犯罪行為が行われているような場所」の2つの意味がある。伏魔殿と同様に、集団で陰謀をたくらみ不正を働く場所を表すことができ、例えば「あのエリアには魔窟があるから危険だ」のような使い方ができる。
アジト
「アジト」はagitating point（アジテーティング・ポイント）の略語で、非合法運動や、組織的な犯罪を目論む犯罪者たちが隠れ家にする秘密の場所を指す。ゲームでは、敵の本拠地を表す言葉として使われることも多い。一般的にはマイナスイメージのある言葉だが、子どもが作った秘密基地をアジトと称することもある。
伏魔殿を英語で表すと？
伏魔殿と同じような意味を持つ英語としては「abode of demons（悪魔の住処）」や「den of iniquity（悪の巣窟）」などが挙げられる。
・abode of demons（悪魔の住処)
【例文】
This forest was known to be an abode of demons, and many people avoided it, fearing for their safety.
（この森林は悪魔たちの住まいだとして知られており、多くの人は自分たちの身を案じてそこを避けていた）
・den of iniquity（悪の巣窟）
【例文】
The warehouse had become a den of iniquity for drug dealers and other criminals.
（その倉庫は、麻薬取引業者やその他の犯罪者たちの悪徳の巣窟になっていた）
文／編集部
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