DIME MAGAZINE
アウトドアウェアに求められる2点を満たした最強カットソーが誕生した理由
松本 このカットソーのように、プラックスウールという新素材が開発されたことにより、今後も今回と同様のコンセプトの製品の登場を期待するところです。と同時に、プレスリリースで拝見したのですが、120日もの間（※）洗濯せずに日常生活で使用しても、不快感のない防臭性能を有している点に驚愕してしまいます。
「長期間のキャンプや、災害時にもこれなら匂いの心配が出ないのは安心だ」と感じました。この防臭性能は、開発時点である程度こだわりをもって追求したものなのでしょうか？
ヤマップ 乙部さん 日常生活を送る上でカットソーに求める機能性は、UVカット機能などかもしれませんが、アウトドアウェアとしては同じくらいに求められることがあります。
「早く乾くこと」と、「臭わないこと」です。それは登山では「大量に発汗すること」を前提としているから。
たくさん汗をかいた時に気になるのは、すぐ乾くかと、臭わないかの2点ですよね。
そのため、この速乾性と防臭性というのは、もともとアウトドアウェアを開発する時にわたしたちが追求する機能性なのです。
既存の素材の中では、速乾性能としては「ポリエステル」、消臭性能としては「ウール」に軍配が上がるなと感じていました。
今回、PlaXと出会い、もっとも魅力に感じたのは、ただ生分解性素材であるからでも、植物由来の素材であるからでもありません。
植物由来の生分解素材であるのにもかかわらず、そもそもの素材特性として、防臭性が高く疎水（水分を保水しない）素材という、アウトドアウェアに求められる機能性を持っている点でした。
だからこそPlaXという素材に興味をもち、開発をスタートさせたのです。
ここに、もともと防臭性能の高いウール素材や、吸湿・吸水力のあるキュプラなどを組み合わせた素材を採用することで、さらなる防臭性能や吸水性を高めていきました。
※120日連続着用時、カットソーの下に1枚アンダーを着用。（ヤマップ調べ）
生分解性を有する素材を使ってアウトドアウェアを作ることの意義に目を向けるヤマップ
松本 今回の製品、もっとも目を引く特徴はなんと言っても「土にかえる」という性質ではないかと感じます。かなり印象的なこの性質ですが、具体的に自然下では、どの程度の日数で分解されるのか、教えてください。「気になるものの、実際に試すには製品がもったいない…」と思う方も、きっと多いはずですので……。
Bioworks 小栗さん 製品に使われている素材は「生分解性」を備えていますが、それは「土に埋めてよい」わけではありません。有機物が土壌中に潜む微生物によって、最終的に水や二酸化炭素に分解される性質、それを「生分解」と呼びますが、微生物はいつでも、どこでも分解のための活動をしてくれるわけではなく、分解を促すために、それらが好む高温多湿の環境が必要となります（一般的には工業用コンポストがその環境に該当します）。ですから、環境が整っていない土の中に製品を埋めたところで、目視できるレベルの分解が、短期間で発生することは決してありません。
一方で、ポリエステルやナイロンなどのいわゆる石油を由来とする合成繊維は、数百年経っても分解されず残り続け、その自然環境への負荷が懸念されています。
それに対し、当素材は微生物が活性化する高温多湿の環境下でなくとも、緩やかに分解は進んでいくので、いずれは「土にかえります」(土壌の微生物環境に左右されるので、具体的な年数は言及が難しいのですが)。また、天然由来の素材を使用しているため、分解過程で土壌に残ったとしても害を及ぼすことはありません。
気になる方はぜひゲットを！
ということで、今回は乙部さん、小栗さんより丁寧な回答をいただくことができた。
特に生分解については筆者はある部分で誤解をしており、分解が長い時間と特定の条件を満たさないと進まないということは、門外漢にも程があるレベルで全く無知だったことに気付かされた。考えてみれば筆者は九州の山奥育ち。
昔は土の中に卵の殻などを埋めて植物の栄養にしている世帯があったし、我が家もそんなことをしていたが、鶏の骨、トウモロコシの芯なんかですら分解には相当時間がかかっていた。
土にかえる素材で作られたこのカットソーも、実際に分解されていくまでには、長い時間がかかるのだろうが、その過程においても環境に一切の害すらないというのは、やっぱり素晴らしい特徴に感じる。
本製品は男性用のM’s PlaX Wool LS Tee/メンズ プラックスウールロングスリーブティー（サイズはS、M、L、XL。カラーはブラック、カーキ、アッシュブルー）がラインアップ。
女性用はW’s PlaX Wool LS Tee/ウィメンズ プラックスウールロングスリーブティー（サイズはS、M、L。カラーはブラック、アッシュピンク、アッシュブルー）でラインナップされている。
どちらも価格は税込11,550円となっている。
お求めは「YAMAP STORE」から。
文／松本ミゾレ
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