日本に輸入される日は来るのか?
ただこの「クレジットカードで乗車」のシステム、日本でも採用されるだろうか?
結論から言うとおそらくむずかしいというのが私の考えだ。というのはオーストラリア・クイーンズランド州の従来型のICカード乗車券「Go Card」はもっぱら公共交通機関の乗車や乗船専用。
一方で日本のSuicaやPASMOやICOCAなどのICカード乗車券は、乗り物だけでなくスーパーマーケットやコンビニエンスストアや小売店、はたまた地方の土産物店などでも使える。
通勤や通学などをしていないが、「現金やクレジットカードでの支払いよりも早い」という理由でむしろ「店舗での支払い中心」で使っている人もいるだろう。
そういう点からすると、日本の「ICカード乗車券」はある意味で「クレジットカードの競合商品」と言える。「ICカード乗車券」の発行元である鉄道会社やその連合体が、その「利権」を手放すとは思えない。
ブリスベンの郊外駅には○○がない!?
さてさて最後は少しトリビア的クイズ。
ブリスベンで電車を利用しようとしたとき、おそらく日本の皆さんが驚くことがある。中央駅など乗降客が極めて多い駅ならそんなことはないのだが、そこからわずか数駅離れただけで、日本なら無人駅などを除けば絶対に存在する、あるものがなくなってしまうのだ。それは何かおわかりになるだろうか。
答えは「改札」だ。
ではどうやって乗車するのかというと、ホームに設置されたカードリーダーにICカード乗車券またはクレジットカードをタッチするだけ。
住宅地の駅のホームには改札がなく、このようにカードをタッチする機械だけが置かれている
紙の乗車券の場合もホームの券売機で購入するだけ。ホームにいる駅員に券を見せるといったことも通常はない。
そんな状態だと良からぬことを考える輩も出そうなもの。
だが、おそらく改札の設置費用やら駅員の人件費やらと、不正乗車による損失とを天秤にかけた結果なのだろう。
以上、最後は少々「脱線」した。
文/柳沢有紀夫
世界約115ヵ国350名の会員を擁する現地在住日本人ライター集団「海外書き人クラブ」の創設者兼お世話係。『値段から世界が見える』(朝日新書)などのお堅い本から、『日本語でどづぞ』(中経の文庫)などのお笑いまで著書多数。オーストラリア在住