DIME MAGAZINE
筆者は昔から「企画書」や「記事の構成」を作ることが嫌い……というより、全くできない。やる気が湧かないし、なぜこのようなクリエイティブではない単調な作業に時間を費やすのか、今でも意味が理解できない。
故にこの記事も、構成などは最初から存在しない。フリージャズの即興演奏かプロレスのようなものだ。
ChatGPTなら、簡単な指示でそれをやってくれる。無料版でも何かの催事の企画書くらいなら、こちらが特にチェックを入れるまでもないほどのクオリティーで作ってしまうのだ。
しかし、この企画書の中に「固有名詞」がある場合はどうだろうか？
ChatGPTで「日本の有名人」のプロフィールを作ってみる
今回はChatGPTの無料版（GPT-3.5）を使った試み、ということを最初に明記しておきたい。今現在、世間を騒がせている「大学生並みの人工知能」は、課金しなければ利用できないGPT-4である。
ただ、現実問題としてごく普通の人は月20ドルを支払うより、無料で使えるGPT-3.5を利用するのではないか。
さて、自民党の平将明衆議院議員が「自分の名前を入力したら、“日本の中世の有力な武将”と出た」という話を国会で披露している。これは平将門と混同されたためと見られている。チャットボットに人名、会社名等の固有名詞を入力して「これは誰？」と聞いたら全く的はずれな答えが出てくる……というのは「チャットボットあるある」だ。
平議員の発言をテレビで視聴した筆者は、早速ChatGPTにこんな質問をしてみた。
「長嶋茂雄と王貞治の関係について」
日本人なら誰しもが知っているであろう、プロ野球の2巨頭に関する質問である。それに対する回答は、以下の通り。
“長嶋茂雄と王貞治は、ともに日本のプロ野球界で活躍した伝説的な選手で、両者は互いにライバル関係にありましたが、同時に非常に尊敬し合う関係でもありました。
長嶋茂雄は読売ジャイアンツの選手として、1958年から1974年までプレーし、現役時代にはリーグ優勝9回、日本シリーズ優勝5回を経験し、また、1975年から1992年まで巨人の監督を務め、通算で1,498勝という驚異的な成績を残しました。
一方、王貞治は、読売ジャイアンツのライバルである阪神タイガースと、その後ジャイアンツの選手として、1959年から1980年までの22年間にわたってプレーし、通算868本塁打という、世界的にも類を見ない記録を打ち立てました。
長嶋茂雄と王貞治は、プロ野球の世界で互いにライバルとして戦い、時には激しい競争を繰り広げましたが、同時に互いに尊敬し合う関係でもありました。特に、長嶋茂雄は王貞治を高く評価し、彼のバッティングスタイルを真似たり、技術的なアドバイスを送ったりすることもあったとされています。また、両者はともに日本のプロ野球を世界に広めるために、1971年にはアメリカのメジャーリーグとのオールスターゲームで共にプレーし、その後も共同でチャリティーゲームを行うなど、良好な関係を築いていました。”
衝撃的なのは「王貞治は、読売ジャイアンツのライバルである阪神タイガースと、その後ジャイアンツの選手として」という部分。お、王さんってタイガースの選手だったの！？
その他にも間違っている部分や「これは実際にあったのかなぁ？」という部分も数多く見受けられる。いやでも、長嶋さんと王さんを「伝説的な選手」と認識してる点はちゃんと評価してあげるべきなのかなぁ……。
岸田総理は「愛媛県生まれ」？
次の質問は「岸田文雄について」。この人は現職の総理大臣なのだから、たとえ無料版と言えど簡単な経歴くらいはちゃんと答えてくれないと困る。
ところが……。
“岸田文雄（きしだ ふみお）は、日本の政治家で、2021年9月からは自由民主党総裁、同年10月からは第100代内閣総理大臣を務めています。
岸田氏は、1958年に愛媛県で生まれ、東京大学法学部を卒業後、外務省に入省し、1996年に自由民主党から衆議院議員に当選しました。以来、数多くの政府要職を歴任し、内閣官房副長官、外務大臣、財務大臣などを務めてきました。
岸田氏は、政治的には、保守的な立場をとっており、外交・安全保障政策に力を注いでいます。また、経済政策にも詳しく、自由主義的な政策を支持しています。
2021年9月に行われた自由民主党総裁選挙では、他の候補者を大きく引き離し、圧倒的な支持を受けて当選しました。その後、同年10月には、第100代内閣総理大臣に就任しました。
岸田氏は、外交・安全保障政策や経済政策など、幅広い分野に精通しており、今後の日本の指導者として期待されています。”
え、愛媛県生まれ？ 岸田さんって、一族は広島だけど本人は東京育ちじゃなかったか？ あと、岸田さんは確か早稲田大学の卒業生だよね？ でもって卒業後は銀行の営業マンだったって話だけど……。
このような具合に、岸田総理のプロフィールですらかなりの誤りが出てきてしまう。もっともこのあたりは、4月10日に首相官邸を訪れたオープンAIのサム・アルトマンCEOも「言語バイアスが存在する」と認めている。日本にまつわる情報の精度はまだ甘い、というわけだ。
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