一般的に「にぎる」は「何かを手中に入れること」という意味で使われる。しかし、ビジネスシーンで使われる「にぎる」には、これとはまったく異なる意味が込められていることも少なくない。そこで本記事では、ビジネス用語として使われる「にぎる」の意味や語源、使い方、類語・英語表現を紹介していく。ぜひこの機会にチェックしておこう。
にぎるとは
まずは、ビジネス用語の「にぎる」の意味を解説する。語源についても併せてチェックしていこう。
意味
ビジネスシーンで使われる「にぎる」には「認識を揃えること」「約束すること」の2つの意味がある。「認識を揃えること」を表すために使われる場合、具体的には同じチームのメンバーと価値観や考え方、状況などののすり合わせができている状態を指すことが多い。また、「約束すること」の意味として使われる場面としては、顧客と約束するシーン、クライアントや上司、社内の部署との合意を取るシーンが挙げられる。
語源
ビジネス用語としての「にぎる」の語源は、ゴルフ用語の「にぎり」だとする説が有力だ。もともとゴルフでの賭けを承諾したり、掛け金が成立したりした場合に、その合意の印として手を握ることが慣習となっていた。この行為が転じて「賭け」の隠語として「にぎり」が使われはじめ、「合意する」「すり合わせる」の意味で「にぎり」が用いられるようになったという。
「にぎる」の使い方
「にぎる」は、同じチームのメンバーと価値観や考え方、状況などの認識を揃える時や、クライアントや上司、社内の部署と約束する場面で使われる。2通りの意味について、それぞれの例文を見ていこう。
意味:認識を揃える
【例文】
「今日は顧客と料金発生のタイミングをにぎらなければいけない」
「同じ部署の先輩と売上目標をにぎった」
意味:約束する
【例文】
「その契約書の件は既ににぎっているから心配ない」
「取引先とにぎっておくよう上司から言われた」
「にぎる」の類語
次に、「にぎる」の類語をいくつか紹介する。ぜひ表現の幅を広げるのに役立ててほしい。
類語1. 合意(ごうい)
お互いの意思が一致することを意味する言葉。法律上の合意の定義は、当事者がお互いの意思表示を合致させることとされている。
【例文】
「彼と揉めていた件は、合意に達した」
「彼女はとうとう観念して離婚に合意したそうだ」
類語2. 取り決め(とりきめ)
物事を取り決めること、約束・契約することを表す。また、使い方によっては、その取り決め内容そのものを指す場合もある。
【例文】
「人として取り決めは守るべきだ」
「クライアントと商品納期の取り決めをする」
類語3. 申し合わせ(もうしあわせ)
話し合って物事を決めることを意味する。また、その取り決めのこと。
【例文】
「申し合わせに従い社内行事を進めた」
「この書類に記載されている申し合わせ事項を確認しなければならない」
類語4. 同意(どうい)
他人の意見や考えなどに対して賛成、賛同することを表す言葉。
【例文】
「保護者の同意を得てイベントに参加してください。」
「その場にいる皆が満場一致で彼が企画した提案に同意した。」
「にぎる」の英語表現
最後に、「にぎる」を英語で言いたい時に使える表現について確認していこう。
on the same page
認識を合わせる、認識が一致しているといった意味で使われる表現。
「on the same page」の直訳である「同じページを見ている」から派生し「同じ認識である」の意味に転じた。
【例文】
「I would like to make sure they are on the same page.」
(和訳:私は彼らの認識が一致していることを確認したい。)
「I need to get everyone on the same page.」
(和訳:皆に共通の理解を持たせなければならない。)
come to an agreement
お互いに認識しあうこと、取り組んでいた物事や話がまとまることを意味する。
【例文】
「I will come to an agreement about the new project.」
(和訳:新しいプロジェクトについて認識合わせする予定だ。)
「I was unable to come to an agreement on the terms.」
(和訳:私はその件について結論に達することができなかった。)
exchange views
意見を交換する、互いの見方を伝え合うことを指す言葉。相手が持つ見解の相違点や共通点を理解しあうニュアンスがあるため、にぎるが持つ意味「認識を揃える」に近い英語表現だ。
【例文】
「We should exchange views before the conference in Japan next week.」
(和訳:来週の日本での会議の前に、社内ですり合わせをしておくべきだ。)
「I want to exchange views with government leaders.」
(和訳:私は政治関係者と意見交換をしたい。)
compare notes
お互いの見解や考えを比較する際に使用する表現。直訳である「メモの内容を比べる」から派生し「認識を揃える」に近いニュアンスを持つ意味に転じた。
【例文】
「Let’s compare notes next year.」
(和訳:来年はぜひ情報交換をしましょう。)
「We compared notes about the new project.」
(和訳:私たちは新規プロジェクトに関する認識を揃えた。)
文/編集部