画素に入ってきた光の粒子を数える「フォトンカウンティング」を採用
キヤノンは、世界最高画素数(※1)の約320万画素1.0型SPAD(Single Photon Avalanche Diode)センサー(※2)を搭載したレンズ交換式超高感度カメラ「MS-500」の開発を進めている。
MS-500
2023年中の発売が予定されており、SPADセンサーの特徴である優れた暗視性能に、高い望遠性能を有する放送用レンズを組み合わせることで、高度監視用途への活用が期待されている。
2023年4月15日(土)~19日(水)まで米国ラスベガスで開催される放送・映像制作機器の展示会「2023 NAB Show」の同社ブースに本製品が参考出展される予定だ。
近年は国境や港湾、空港・駅・発電所などの重要なインフラ施設において、人の目では認識できない暗闇や遠方などの厳しい環境下でも、いち早く対象物を発見できる高度な監視システムが求められている。
1.0型SPADセンサー
現在開発中のMS-500は、低ノイズを特徴とする1.0型SPADセンサーを搭載しており、暗闇でもフルHDの鮮明なカラー撮影が可能。加えて、超望遠撮影に優れた同社の豊富な放送用レンズとの組み合わせにより、遠方の暗所撮影においても被写体を正確に捉えることができるという。
わずかな光を正確に検出して被写体を鮮明なカラーで撮影
夜間の港湾監視イメージ
たとえば、夜間の港湾監視において、数km先の船舶を発見するだけでなく、船体の種類の確認まで行えるなど、高度な監視を実現する。
現在、カメラで広く採用されているCMOSセンサーは、ある一定時間に画素に溜まった光の量を検出する「電荷集積」という仕組みを採用している。
この方式では、蓄積された電気信号を読み出す際にノイズも混在するため、特に暗所撮影において画質劣化に繋がる課題があった。
これに対して、MS-500に搭載するSPADセンサーは、画素に入ってきた光の粒子(以下、光子)を数える「フォトンカウンティング」という仕組みを採用。画素に光子が1つでも入ると、瞬時に約100万倍に増倍して大きな電気信号を出力することができる。
しかも、これら一つひとつの光子をデジタルに数えることができるため、読み出しの際にノイズが発生しないことが大きな特徴となっている(※4)。
これにより、“MS-500”は、星の出ていない闇夜(※5)のような暗い環境下でも、わずかな光を正確に検出し、被写体を鮮明にカラー撮影することが可能だという。
レンズマウントは、放送用レンズで主流のバヨネットマウント(BTA S-1005B規格準拠)を採用。光学性能に優れた同社の豊富な放送用レンズを活用できるため、数km先の被写体も認識可能な撮影を実現する。
※1. 映像撮影用のSPAD センサーにおいて。2023年4月2日現在。(同社調べ)
※2. 総画素数約320 万画素/有効画素数約210 万画素。
※3. カラー撮影用のカメラとして。2023年4月2日現在。(同社調べ)
※4. SPAD センサーの仕組みやCMOS センサーとの違いの詳細は下記URL のキヤノンテクノロジーサイトを参照。
URL:https://global.canon/ja/technology/spad-sensor-2021.html
※5. 星明りの明るさの目安が 0.02lux、星の出ていない闇夜の目安が 0.007lux としている。
構成/清水眞希