取扱高は10年で25倍に
このような具合に、日本では年々「デビット戦争」が激しくなっている。
ビザ・ワールドワイド・ジャパンが作成した資料が筆者の手元にあるが、それによると日本におけるVisaデビットの2022年取扱高は2012年の25倍とのこと。言われてみれば、10年前はレジで「デビットカード使えますか?」と聞いても「少々お待ちください……」と返されることが多かった。店長しかその対応の有無を知らないような、極めてマイナーな決済手段だったのだ。
そんな光景が過去のものになったのは、パンデミックがきっかけ……というわけでもなさそうだ。単純に、デビットカードの利便性が広く認識されたというのが真相に近い。
国際ブランドが付与されたデビットカードは、その使い勝手がクレジットカードと殆ど同一である。たとえば海外旅行でATMから現金を引き出すにしても、クレジットカードのキャッシングと同じ要領で(しかしそれはローンではなく、自分の口座から引き出しているに過ぎない)利用できる。
ならば、海外旅行ができなくなった2020年からの約2年はデビットカードの利用者が減っていそうなものだが、一度周知された利便性はそれを凌駕する新発明が登場するまでは絶対に見放されることはない。
子供の小遣い管理にも一役
そしてよく考えてみれば、国際クレカブランドが付与されたカードは「子供の小遣い管理」にも使えるのではないか?
子供が普段の決済にVisaやMastercardを使い、それを親が「いつどれだけ使ったか」を確認できれば「小遣いの浪費」も防げるだろう。だが筆者などがこのように提案するまでもなく、既にそういうコンセプトのデビットカード及びプリペイドカードは存在する。
三井住友カード発行の『Visaプリぺ』は、まさにその代表例だろう。申込条件を見ると、何と「満6歳以上(小学生以上)の方」とある。クレジットカードによるオートチャージ機能はあるが、カード残高上限額は30万円。1日のチャージ上限は30万円、月間のチャージ上限は100万円という細かい条件もある。
Visaプリぺ
その上で「ご利用コントロール機能」なるものも実装されていて、「月間の利用額が指定額を超えた場合にメールで通知されるので、使い過ぎを防止できます。さらに、海外での利用やインターネットショッピングでの利用可否を設定できるなど、使い方に合わせた設定が可能です」とのこと。
これなら、子供にカードを持たせた場合でも使い過ぎを防止することができるだろう。
「金を電子化する」ということ
「子供がクレジットカードと同様の使い勝手のものを持っている」ということは、もしかしたら未だ風当たりが強いかもしれない。
子供にそのようなものを使わせたら、現金のありがたみが分からなくなり金銭感覚が……などというのは的外れな説教である。むしろ現金は紛失の可能性があり、万が一盗難の被害に遭ってその後に使われでもしたらもう戻ってはこない。
それなら、最初から「金」というものを電子化したほうが管理がしやすくなる。
欠点を挙げるとしたら、現金を必要とされる場面では対処できない可能性が高いということだろう。現実問題、日本ではまだまだ「現金でしか対応していない場所」が存在する。そのようなところにVisaプリぺしか持ってきていない……となれば、難儀するのは間違いない。
しかしそのあたりは「ケースバイケース」でもある。コンビニやスーパーマーケットでの買い物なら国際クレカブランドのデビットカード・プリペイドカードで難なく対応できるし、最近では公共交通機関でのクレカタッチ決済乗車の実証実験も行われている。
「小学生でもVisaやMastercard」は、もはや常識になりつつあると言ってもいいだろう。
【参考】
りそなデビットカード(プレミアム)
https://www.resonabank.co.jp/kojin/visa_debit/premium/landing.html
Mastercardプラチナデビット付キャッシュカード
https://gmo-aozora.com/priv/card/master.html
Visaプリぺ
https://www.smbc-card.com/prepaid/visaprepaid/index.jsp
取材・文/澤田真一