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住宅価格の高騰によって生じるいくつかのリスクと対策

2023.04.09

住宅価格が高騰している。背景は複数あるが、ウッドショックや資材・人件費の高騰、円安などの影響が大きいといわれている。ハウスメーカーはここ数年で次々と値上げを発表しており、新築は避けたいと思っている人も多いはずだ。

こうした住宅価格高騰によって生じる、盲点となるリスクとその対応策を専門家に聞いた。

火災保険の建物保険金額のリスク

現在、戸建て住宅に住んでおり、当面、住宅購入を考えていないという人は、今般の住宅価格高騰についてそれほど影響がないと思っているかもしれない。

しかし加入している火災保険の建物保険金額を適切なものにしていないと、万一の際に建築費のほうが保険金よりも上回り、現在と同等の建物を再建できない可能性があることは知っておきたい。

ソニー損害保険株式会社が2023年1月に実施した戸建てで火災保険を契約している全国400人を対象にした実態調査では、近年、建築費が上昇しているにも関わらず、火災保険の建物保険金額の見直しをしていない人は約8割(79.3%)もいた。

●「建物評価額」とは?

そもそも建物評価額とは何か。ソニー損保の解説によれば、建物評価額とは建物の価値を表す金額のこと。建物に被害を受けた際には、この建物評価額を基準として支払われる保険金が決定する。

建物評価額は「新価」と「時価」の2通りの考え方があり、どちらかの契約となるのが一般的だ。

新価とは、損害が生じた保険の対象となる建物や家財などと『同等のもの』を現時点で再築または再購入するために必要な金額。一方、時価とは、新価の額から経年劣化などを経て『消耗した分を差し引いた金額』を指す。

万一の際に、しっかりと補償が受けられるのは新価のほうであるため、新価での契約のほうが一般的といわれる。時価で契約した火災保険も存在するため、万一のときに備えて時価で良いのか見直したほうが良いだろう。

ファイナンシャルプランナーが教える火災保険の見直しポイント

独立系ファイナンシャルプランナー事務所の株式会社アルファ・ファイナンシャルプランナーズ 代表取締役であり、自身もファイナンシャルプランナーの資格を持つ田中佑輝氏は、建築費高騰の昨今の情勢を受け、火災保険についてはできるだけ早く次の2つのポイントを見直すことを勧める。

1.火災保険の補償額自体を見直す

「火災保険は、保険会社が定める補償額×1.3倍程度まで加入することができます。この手法を用いて補償額の見直しをすることにより、保険金額を増額することが可能です。その際に、契約していた保険会社に限ることなく、保険会社を比較し最も割安なところを探すことがおすすめです。ただし、保険会社によって倍率が異なるため、加入前に確認をしましょう」

2.「事故時の諸費用特約」を利用する

「事故時諸費用特約とは、事故発生時の見舞金のようなもので、支払い保険金額の10%~30%(限度額100〜300万円)がもらえる特約です。事故発生時に諸費用の負担がゼロだったとしても、この事故時諸費用はもらえます」

「ただし、築年数が経過すればするほど保険会社の評価額が下がってしまうため、1、2ともに補償される額が下がる前に実行する、もしくは、更新を迎える前に対処しておくことがおすすめです。

また、以前は35年分の保険に入ることができましたが、今はできなくなりましたので、保険料が割高になります。保険料と補償を冷静に比較してみましょう」

これから戸建てを建てるならどうする?

ところで、これから新規で戸建てを建てたい人は、できるだけコストを抑えるために、試行錯誤しているだろう。果たしてどんな対策があるのか。

田中氏は次の3点を挙げる。

1.自社林を保有している建築会社に依頼・交渉する

「自社林を持つ会社は、国内の木材を利用することになるため、ウッドショックの影響が大きい木材そのものの価格や為替の影響を受けづらく、比較的コストが下がりやすいです」

2.軽量鉄骨と併用しながら建築ができる会社を選ぶ

「やや専門的な話になりますが、理論的には、建築会社の中でも軽量鉄骨と併用しながら建築ができる会社は、コストダウンになる可能性があります。軽量鉄骨は木材よりも価格は高いものの、建てるための人員が少なく済むため、併用することでトータルコストを下げることが可能です」

3.建築するタイミングを遅らせる

「ウッドショックの影響も終焉が見えてきています。ウッドショックの影響を避けたいのであれば、木材価格が下がったところで契約をすることです。ただし、待った分、家賃を支払う期間が長くなるなど、遅らせることによるマネープラン上のマイナスも起き得るため、冷静な比較が必要となります」

また西山ライフデザイン株式会社の代表取締役で、不動産に強いファイナンシャルプランナー西山広高氏は次のように述べる。

「新築建築価格が高騰するなか、新築戸建て住宅をできるだけコストを抑えて建てるための方法としては、住宅のグレード下げるか、ハウスメーカーの決算時期に出されるキャンペーンを利用する方法が当面の対策といえます。

また価格高騰の影響を受けているのは戸建てだけではありません。新築・中古を含めてマンションの価格も戸建てに先行して上がっています。『住宅ローンの金利が低いこと』『初めてマンションを購入する人のほか、高齢者のマンションへの買い替え需要が高いこと』などが主な要因と考えています。

最近は金利上昇圧力も高まっています。金利が上がると住宅ローンの返済額が上がり、住宅ローンの利用を考えている人は住宅購入予算を下げざるを得ません。団塊の世代の買い替え需要が落ち着くと思われる4~5年後くらいには価格は落ち着くと考えています。立地にもよりますが、戸建てはマンションに比べ土地部分の占める割合が高く、『将来の資産価値』という観点では戸建てのほうが有利ともいえると思います」(西山氏)

建築費高騰の新築戸建て以外への影響

住宅業界を襲う価格高騰。新築戸建て以外に影響が出ている分野とは? 田中氏は次のように述べる。

「新築価格の上昇に引っ張られて中古市場も上昇しています。新築マンションの価格上昇に伴って中古マンションが値上がりしているように、中古戸建ても新築戸建て価格の上昇に引っ張られています。最も大きな要因は、金融緩和による影響なのですが、中古戸建ては、ウッドショックの影響を受けた新築戸建てに引っ張られて上がっている側面は確認できます。

また、リフォームの価格にも影響が出ています。スケルトンリフォームという壁や床、天井などは取り払って、必要な柱や梁などだけを残すリフォームをする場合などは、比較的木材の使用料も多いため、それなりの影響が出ていると考えてよいでしょう」

今後の住宅分野へのウッドショックの影響の見通し

今後、住宅業界に対するウッドショックの影響はどうなっていくだろうか。田中氏は次のように述べる。

「ウッドショックによる高騰は終焉を迎えると考えています。もともと今回のウッドショックは米国からの木材の輸入が大幅に減少したことから始まりました。コロナやウクライナショックにより供給・輸送が制限されていた中、好景気により投資・自宅購入ニーズが高まった米国国内の需要を優先した結果です。

また、日本全体の建築用木材市場における『外材:国産材』の割合はおよそ『6:4』なのですが、東京・首都圏に限っては外材が7~8割を占めます。リモート環境を求めて狭いマンションから広い戸建てへ移る人々が増えたという“実需”が発生しながらも、外材の価格が高止まりしていることで国産材も引っ張られるよう上昇しました。

現状は、米国での木材価格はウッドショック前の水準に戻っており、ウッドショック当初と比べても円高ドル安になっています。また、国産材業界では、ウッドショックを受けて、国産材のサプライチェーンを形成しようと動いており、政府も改正森林組合法やグリーン成長の基本方針を掲げ国産材の供給拡大に寄与する動きが出ています。米国の価格が低下にしている中、国内産の価格が高止まりすることは考えづらく、さらに国全体で国内産を推奨する動きが出てくることで木材の安定供給および、価格の適正化が進み、最終的には価格が下がることが期待できると考えます」

住宅購入を検討している場合には、ぜひ参考にしたい。また火災保険については戸建てに住むすべての人に見直しを検討したい。

【取材協力】

田中佑輝氏
株式会社アルファ・ファイナンシャルプランナーズ 代表取締役
アジア金融の中心地であるシンガポールに10年間滞在。その後、外資系銀行にてプライベートバンカー、セールスマネジャー、行員向け経済学講師を経て独立系ファイナンシャルプランナー事務所を設立。著書に『58歳で貯金がないと思った人のためのお金の教科書』、『50代から考えておきたい“お金の基本”』。Bond University大学院でマーケティングと組織マネジメントを研究。経営学修士。
https://alphardic.com/

西山広高氏
西山ライフデザイン株式会社 代表取締役
2015年に23年間勤めた大手ゼネコンを退職し、不動産に強いファイナンシャル・プランニング事務所「西山ライフデザイン(株)」を設立。住宅の取得を資金計画からサポートするほか、相続対策のアドバイスにも力を入れている。AFP、宅建士、宅建マイスター、上級相続診断士。
https://www.nishiyama-ld.com/

【調査出典】
ソニー損害保険株式会社

文/石原亜香利

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