■連載/阿部純子のトレンド探検隊
「ノーリツ国内商品戦略&温水新商品発表会」が開催され、2030年の社会課題解決を目的にした新商品戦略テーマ「NORITZ For 2030」と、社会課題に対応した付加価値を搭載した新製品「高効率ガスふろ給湯器GT-C72シリーズ」が発表された。
「ノーリツは日本が抱える社会課題を捉えこれまで提供している商品の価値を見つめ直し、2030年という少し先の未来の生活を見据えて、2023年の現在から取り組む戦略商品を発表していきます。
2030年に向けたノーリツの商品戦略テーマには2030年の未来に起こりうる社会課題として、『衛生ニーズの対応』『超高齢社会への対応』『日本人の睡眠不足』『日本の調理の悩み』『男性の調理初心者』の5つを設定しました」(ノーリツ 代表取締役社長 腹巻知氏)
お湯を沸かすだけじゃない!付加価値を搭載した給湯器「GT-C72シリーズ」
商品戦略テーマ5つの課題のうち、衛生ニーズの対応、超高齢社会への対応、日本人の睡眠不足の3つを解決する「高効率ガスふろ給湯器GT-C72シリーズ」が2023年7月3日に発売される。同商品を年間約30万台規模を出荷する主力商品と位置づけ、3つの社会課題解決を取り組む商品の構成比を25%にすることを目指す。
〇除菌機能の進化
「GT-C72シリーズ」には、オゾン水で除菌する「AQUA OZONE(アクアオゾン)」と、紫外線で除菌する「LED-UV除菌ユニット」の2つの除菌ユニット(下記画像)を搭載したダブル除菌で、浴槽から風呂配管まで除菌、排水溝のイヤなニオイも抑制、キレイなお風呂を実現する。
「AQUA OZONE」は、工学院大学との共同研究でオゾン水生成技術を応用したオゾン水除菌ユニット。水を電気分解して発生したオゾンを水に溶け込ませてオゾン水を生成する。オゾン水除菌ユニットにはダイヤモンド電極を搭載し水中のオゾンの分解を促進、オゾンガスの発生を抑えながら、除菌力の強いOHラジカルという酸素と水素が結合した分子を生成することで、安全に除菌、脱臭効果を実現した。
オゾン水除菌ユニットで生成されたオゾン水は、オゾン水配管クリーンという機能によって浴槽を排水した後に、風呂配管から浴槽の排水栓を経て洗い場の排水口までオゾン水を届ける。
これにより、見えない場所にあり普段は掃除ができない風呂配管を99%除菌し、洗い場の排水口の排水中の菌を減少させてニオイも低減する。オゾン水配管クリーンの効果(下記画像)は本機能がない場合と比べ大幅に減少している。
さらに2017年から搭載している紫外線で除菌する「UV除菌ユニット」が「LED-UV除菌ユニット」として進化。浴槽のお湯を循環させ紫外線によって浴槽水を99%除菌。2人目以降でも気持ちよく入浴ができる。
〇見守り機能の進化
神戸大学、九州大学と共同で研究を行い開発した、ノーリツ独自の人体熱モデル「HIITO(ヒート)」は、浴室内の環境情報を元に入浴中の体の深部体温の変化を推測する技術。
深部体温とは体の中心部の体温で、入浴時には深部体温が上昇する。深部体温の上昇は発汗、睡眠、血流促進などにつながる効果がある一方で、深部体温を上げ過ぎるとのぼせなどの不調にもつながる。入浴中の深部体温の変化を精度よく推測する技術で、お風呂の設定温度と浴室温度に合わせて、最適な入浴時間の推測を可能にした。
ノーリツでは、超高齢化社会への対応として、入浴事故の主な要因に配慮した様々な見守り機能を搭載した商品を推進してきた。さらなる強化として入浴タイマーを進化。「ホッと湯上がりモード」は浴室環境に合わせて知らせることで、長湯によるのぼせ対策をサポートする。
日本人の睡眠時間は世界ワーストレベルにあるが、睡眠と入浴には密接な関係があることに着目して、新たに搭載したのが「あったか睡眠サポートモード」。就寝予定時刻から逆算した、おすすめの入浴開始時刻や、退浴時間を知らせる機能で就寝前の入浴習慣をサポート。近年注目を集めている睡眠の質向上についてもアプローチしていく。
【AJの読み】2030年の社会情勢を先取りした付加価値のある給湯器
2030年には3人に1人は65歳以上の高齢者となる。入浴事故は交通事故よりも多く、入浴事故の主な要因は「ヒートショック」、「のぼせ」、「気づきの遅れ」。「ホッと湯上がりモード」は入浴タイマー以外にも浴室モニターも装備されており、高齢者の見守り機能を給湯器が担うのは心強い。
新型コロナのパンデミック以降、衛生意識が高まり、除菌が当たり前の時代になった。「GT-C72シリーズ」のダブル除菌もこうした社会環境に対応した商品だが、ノーリツでは日本のキレイなお風呂を考える取り組みとして、アース製薬、ジョンソン、「ウタマロ」ブランドの東邦と連携した新プロジェクト「日本のおふろをもっときれいにプロジェクト」を発足した。
新商品を含め、日本のお風呂をアップデートするアクションを起こしていくとのことで、こちらの動向にも注目したい。
文/阿部純子