NTTコミュニケーションズ(以下NTT Com)は、幅広い端末でキャリア冗長を実現できるIoT向けSIM「Active Multi-access SIM」の開発に成功したと発表した。
2023年度内には「IoT Connect Mobile Type S」において商用サービスを提供開始予定
近年IoTソリューションを活用して事業を展開する企業が増加するなか、信頼性の高いネットワーク構築のために複数のキャリアを利用した冗長化を必要とするニーズが高まっていることから、NTT Comでは、ローミング方式により日本で複数のキャリアに接続できるモバイルデータ通信サービス「IoT Connect Mobile Type S」(TSLプロファイル)や、「ドコモIoTマネージドサービス」におけるDual SIM対応ゲートウェイを用いたモバイル回線冗長化ソリューションを展開している。
しかし、これらの方法による冗長化は、監視・切り替え動作を追加するために端末を改修したり、特定の端末を用いる必要がある。
そこで、同社では、より多くの企業が通信の冗長化を簡易に実現できるよう、モバイル端末の機種に依存せず汎用的に利用できるサービスの開発を進めてきたという。
そのような背景から誕生したのが、今回発表された「Active Multi-access SIM」だ。1枚のSIMで2つのキャリアを利用でき、一方のキャリアで障害などが発生した際にSIMで自律的にもう一方のキャリアに接続先を切り替えることが可能だ。
本SIMに実装されたアプレットは、インターネット上のホストに対して定期的に通信確認を行なうことで通信が正常に行なわれているかを監視し、一定の条件下でメインのキャリアの通信障害を検知すると、予備のキャリアに自動で切り替えを行ない、一定時間経過後はメインのキャリアへの切り替えを自動で行なう。
このため、多数の汎用的な端末にSIMを利用している場合でも、1つ1つ手動でキャリアの切り替えを行なう必要がない。
また、ETSI(European Tele communications Standards Institute)/3GPP(3rd Generation Partnership Project)で標準化された仕組みにより動作するため、これらの標準に準拠したモバイル端末(SIM Toolkitが動作するもの)であれば動作可能。
ただし、機種によっては標準で規定されたコマンドなどの一部または全部に対応しておらず正常に動作しない場合があるとのことで、今後、使用企業にて動作確認を行なえる枠組みや、動作確認済機種リストの公開などを検討していくとしている。
さらに、NTT Comの独自技術である「アプレット領域分割技術」を活用している点も特徴だ。アプレット領域分割技術とは、SIM内において通信に必要となる情報を書き込む通信プロファイル領域と、アプリケーションなど通信以外の情報を書き込むアプレット領域を完全に分離して管理する技術であり、通信以外の機能をパートナー企業などが独自に実装できるようにしたもの。
本SIMはこの技術を活用し、SIM内の情報へのアクセスに関して安全性を高めることによって、通常SIMに求められる耐タンパ性を確保しているという。
今後の展開としては、IoTサービス提供事業者などを対象に「Active Multi-access SIM」のトライアルサービスを2023年6~9月に実施し、2023年度内には「IoT Connect Mobile Type S」において商用サービス提供を開始する予定とのこと。
トライアルサービス参加企業から本SIMの有効性や課題に関するフィードバックを受けることで、機能向上を図るという。
関連情報
https://www.ntt.com/index.html
構成/立原尚子