■連載/大森弘恵のアウトドアへGO!
機能性ウエアで定評のある「ファイントラック」より、汗や皮脂のにおいはもちろん焚き火や魚のにおいにも対応する「マルチ消臭スプレー」(1210円)が発売された。レインウエアの泥汚れがするっと落ちる洗剤で知られる「ケアファイン」シリーズの最新作で、もちろん国産だ。
開発したのは田中由希子さん。生地開発を担当しながら、前職(製薬メーカー)の知識・経験をいかして「ケアファイン」シリーズの研究・開発を一手に担っている
〝遊び手が創り手〟をモットーとするファイントラックだから、田中さんも夏の縦走、雪山、スキー、釣りなど一年を通してフィールドで過ごしている。
「メーカーとしてはやはりメインテナンスをして製品を長く使っていただきたいと考えています。そうしてはじまったのがケアファインシリーズ。洗剤のオールウォッシュにはじまり、レインウエアのはっ水性を復活させるウォーターリペル、吸汗性を復活させるベースリカバーを発表し、ユーザーの〝長持ちさせるには?〟という問いに明確な回答ができるようになりました。
3つの製品を作り、次はにおいも気になると思って消臭剤の開発を始めたんです」(田中さん)
消臭成分の選定に2年をかけ、たどり着いた京都北山杉の樹皮
もっとも大変だったのが消臭成分の選定だ。
においのもととなる成分には酸性とアルカリ性があり、大半の消臭スプレーはどちらか一方への効果は高いけれど、他方に効きづらいのだという。人体や環境への負荷を考えればエタノールや界面活性剤、香料は避けたいし、かといって安全性の高い天然成分は消臭力が弱いものが多い。
2年ほどかけてたどり着いたのが京都北山杉の樹皮を再利用したポリフェノール。
「消臭成分にポリフェノールを使うというのは知られた話でしたが、濃い色で使いにくかったんです。ところが無色化させたメーカーがあると知り、紹介してもらいました。本来廃棄する樹皮を使うサステナブルな素材であることも適しています」(田中さん)
成分は樹皮抽出液と抗菌剤のみ。他の消臭剤同様にレーヨンなど水に弱い素材への使用には適さないが、多くのアウトドアウエアには問題なく使える。酸性、アルカリ性どちらのにおいにも強く、抗菌剤が入っているので雑菌によるにおいにも対応する。まさに〝マルチ〟
田中さんは渓流釣りも趣味としており「イワナをキャッチした網にスプレーしたところ、きれいににおいが消えましたし、一般の消臭スプレーでは効きづらい焚き火のにおいにも効果がありました。ほかの社員にも試してもらって、クライミングシューズの強烈なにおいが消えたという報告もあったんですよ」(田中さん)
悪臭を入れた密閉容器に、マルチ消臭スプレーを10mL入れたシャーレを静置した検知管試験の結果は次の通り。
アンモニア
エチルメルカプタン
イソ吉草酸
アンモニア(汗・皮脂、疲労臭、糞尿臭)、エチルメルカプタン(刺激臭)、イソ吉草酸(足臭)を使った検査では1分でppmに。アンモニア系の魚臭やペット臭にも効果がある。焚き火臭にも効くのがスゴイ
化粧品ではないので皮膚に吹きつけることは想定しないが、うっかりスプレーの先に人やペットがいても害がないよう目刺激性、皮膚刺激性、経口毒性は検証しているとのこと。
容量は120mL。キャップなしで持ち運びやすいよう、トリガー式で一番小さいボトルを選んだという。ボトルもバイオマス由来約25%のエコボトルというから徹底している