ワクチン接種者はコロナ後遺症リスクが4割以上低い可能性
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の急性期以降にさまざまな症状が遷延する、「コロナ後遺症」と呼ばれる状態(post-COVID-19 condition;PCC)のリスクに関連する因子が報告された。
女性や喫煙者、急性期に入院を要した人などはリスクが高く、反対にワクチン接種によってリスクが大幅に抑制されている可能性が示された。英イースト・アングリア大学のVassilios Vassiliou氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Internal Medicine」に2023年3月23日掲載された。
Vassiliou氏らは、PCCのリスク因子を探るために、既報論文を対象とするシステマティックレビューとメタ解析を実施。
MedlineおよびEmbaseに2022年12月5日までに収載された論文を対象とするシステマティックレビューにより、18歳以上のPCC患者(何らかの症状が3カ月以上持続している患者)合計86万783人が含まれている、計41件の研究を抽出した。
メタ解析の結果、女性や高齢者、喫煙者など、さまざまな因子がPCC発症と有意な関連のあることが明らかになった。詳細は以下の通り。
男性に対して女性はオッズ比(OR)1.56(95%信頼区間1.41~1.73)、40歳未満に対して40~69歳はOR1.19(同1.06~1.34)、70歳以上はOR1.21(1.11~1.33)、喫煙者はOR1.10(1.07~1.13)、肥満(BMI30以上)はOR1.15(1.08~1.23)、COVID-19急性期に入院を要した患者はOR2.48(1.97~3.13)、ICU入室を要した患者はOR2.37(2.18~2.56)。
基礎疾患については、喘息はOR1.24(1.15~1.35)、COPDはOR1.38(1.08~1.78)、糖尿病はOR1.06(1.03~1.09)、虚血性心疾患はOR1.28(1.19~1.38)、免疫抑制状態はOR1.50(1.05~2.15)、不安や抑うつはOR1.19(1.02~1.40)だった。
検討された基礎疾患のうち、慢性腎臓病についてはPCCリスクとの有意な関連が示されなかった〔OR1.12(0.98~1.28)〕。
一方、ワクチン接種者はOR0.57(0.43~0.76)であり、4割以上リスクが低い可能性が示された。
Vassiliou氏は、「ワクチン接種者はPCCリスクが低い可能性が示された点は安心材料と言える。PCCリスク抑制のためにワクチン接種を推奨することの根拠にもなり、重要な知見だ」と述べている。
また論文著者の1人である、英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)およびイプスウィッチ病院に所属しているEleana Ntatsaki氏は、「われわれの研究結果はPCCリスク因子を明確にしていく作業にとって有用である。さらに、禁煙、ワクチン接種、体重管理など、修正可能なリスク因子の改善を働きかけるといった、公衆衛生政策の最適化にも役立つだろう」と語っている。
PCCの患者数に関しては、英国で約200万人、米国では約2300万人との推計値が報告されている。PCCの主な症状として、息切れ、咳、動悸、頭痛、耳鳴り、倦怠感、胸痛、ブレインフォグ(頭がぼんやりして記憶力などが低下した状態)、不眠、めまい、不安や抑うつ、食欲低下、嗅覚や味覚の障害、関節痛などがある。(HealthDay News 2023年3月23日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://jamanetwork.com/journals/jamainternalmedicine/fullarticle/2802877
Press Release
https://www.uea.ac.uk/news/-/article/vaccination-halves-risk-of-long-covid-largest-study-to-date-shows
構成/DIME編集部