「常圧凍結乾燥技術」とは?
冷凍した食品を乾燥した冷気にさらすと氷が昇華して乾燥が進む現象を利用し、常圧の大気圧下で温度を独自のアルゴリズムで制御することで、水分活性を0.6以下まで乾燥させることができる。出来上がった乾燥食品は香りがよく、1カ月の常温保存が可能なほか、水分活性の調整で食感の異なる乾燥食品をつくることも容易だ。常圧凍結乾燥したフルーツの乾燥品では、既存の真空凍結乾燥と同様に多孔質な構造を持ちつつも細孔の大きさが異なることが確認できており、独自の特長との相関が示唆される。また、熱風乾燥と比べて、色・香りのほかビタミンCなどの栄養価の成分変化も小さいという。
新たな価値創造への取り組み
KYOTO SNT LAB.のアイデアの起点となったのは、「食品のもつ香りのいかし方」。例えば、山椒、生姜、大葉など香りを特長とする食品本来の香りをうまくいかしたまま常温で保存することが可能になれば、湯を注ぐ、レンジで温めるといった手軽な調理で簡単にプロの味を再現できるのではないか、ということ。
実際、常圧凍結乾燥を用いて出来立ての雑炊を乾燥食品に加工すると、湯を注いだ際に既存製法よりも三つ葉や松茸の香りが広がり、より出来立ての状態を再現。同社では常圧凍結乾燥は、料理において香りを残したい食材で強みを発揮することも確認している。
新技術による乾燥食品(鰻の炊き込みご飯)
そこで今回、常圧凍結乾燥を用いた乾燥食品のプロトタイプとして、「鰻の炊き込みご飯」「雑炊」「ぜんざい」の3品を完成させた。
なお、「鰻の炊き込みご飯」は、家電と食のサブスクリプション「foodable」で、限定販売が予定されている(※)。世界中から注目される日本の食文化。これをもっとグローバルレベルで普及、浸透させていくためには、様々な技術革新も必要となる。その有力なツールになる可能性を秘めているのが、この常圧凍結乾燥技術。今後の展開に期待したい。
※2023年上期中を予定。
◆関連情報
https://www.eatpick.com/shop/foodable/
構成/清水眞希、編集部