銀行や証券会社の取引において、「補填」という言葉が使われることがある。しかし、漢字から大体のニュアンスは想像できても、具体的な意味や使い方まではよくわからない方も少なくないだろう。
そこで本記事では、「補填」の読み方や意味をはじめ、よく似た「補充」「補完」との意味の違いや類義語、対義語について紹介する。この機会に正しく使い分けられるようにしておこう。
補填とは?
補填の読み方は「ほてん」。足りない部分を補って、埋め合わせることを意味する言葉で、お金に関わる内容を対象として使われることが多い。
ちなみに、2文字を入れ替えた「填補(てんぽ)」も補填と同様の意味を表す言葉だが、こちらは主に保険会社が保険金を支払うことを指す専門用語として使われる表現であり、「補填」の方が一般的な表現と言える。
補填は、不足を穴埋めすることを意味する「補」と、土で中身をいっぱいにすることを表す「填」という漢字が組み合わさって成り立つ熟語だ。
「補填」の使い方
補填は、「〜を補填する」「〜の補填」のような形で使われることが多い。基本的に「〜」には、「穴埋めが必要な損失分や不足分」が入る。
【例文】
「赤字を補填するためには、この土地を売却する必要がある」
「物損事故で発生した損害を賠償金で補填した」
「火災保険に加入すれば、万が一の場合でも損害の補填ができるだろう」
「補填」の類義語と対義語
ここからは、補填の類義語と対義語についてそれぞれの意味と違いを見ていこう。
類義語
補填の類義語としては、「補充」「補完」「補償」などが挙げられる。どれも大まかな意味合いは共通しているが、実際にはニュアンスに違いがあるため、それぞれの特徴を覚えておこう。
・補充(ほじゅう)
人や物を補って満たすこと。「欠員を補充する」「商品を補充する」「防災の備蓄を補充する必要がある」というように、人や物に対して、決まった数やあるべき数が不足した際に、それを埋めるという意味で使われる。
【例文】
「今日は体調不良で一人スタッフが欠勤したため、早急に欠員を補充する必要がある」
「在庫を切らさないように商品の補充をお願いします」
・補完(ほかん)
不十分な部分を補い、完全なものにすることを意味する。「補完」の対象となるのは、主に物や状態で、「不備を補完する」「補完的な機能が備えられている」というように使われる。
【例文】
「書類の不備を明日までに補完してください」
「このスポーツウェアは、補完的な機能が備わっています」
・補償(ほしょう)
ものごとの欠けている部分を補い、修正することを表す。また、損害賠償として、財産や損失を金銭で償うことを指し、「労働災害を補償する」「補償金」のように使われる。
【例文】
「地震で家が倒壊したが、補償金を受け取れたため、生活の心配が少し和らいだ」
「自転車の衝突事故で相手に怪我を負わせてしまったので、治療費は私が補償します」
対義語
補填とは反対に、足りない部分を補う前の、不足した状態を表した対義語としては、「欠損」や「欠落」「不備」などが挙げられる。それぞれの詳しい意味は以下の通り。
・欠損(けっそん)
一般的に、欠けてなくなることを表す。また、支出が収入を上回り赤字と化することを指す場合もある。
【例文】
「発掘された遺跡の一部が欠損している」
「今月は、経営悪化で赤字のため、欠損金の繰戻による還付を請求した」
・欠落(けつらく)
本来あるべきものの一部が失われていること。「金銭感覚が欠落している」「記憶の欠落部分」のように使われる。
【例文】
「彼は金銭感覚が欠落していて、先行きが心配だ」
「彼女は喜びや悲しみの感情が欠落している」
・不備(ふび)
足りない部分があり、十分に整っていないことやそのさまを表す。
「書類の不備を訂正する」「防災設備の不備がないか点検する」という使い方ができる。
【例文】
「書類の不備がありました。明日までに訂正をお願いします」
「もしもの時の避難計画に不備がないか点検します」
補填の英語表現は?
「補填」を英語で表したい場合に使える英語表現には「compensation(補填)」「make up for(~で埋め合わせる)」などがある。
・compensation(補填)/compensate〜(〜を補填する)
例文:I bought insurance that compensates for medical expenses.
(私は、医療費を補填する保険を購入した)
・make up for〜(〜で埋め合わせる)
例文:We need to make up for the loss last year.
(昨年発生した損失を補填する必要がある)
文/編集部