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〝狩りゲー〟の新境地「WILD HEARTS」開発陣が語る、海外チームとの共同制作で学んだこと

2023.04.02

コーエーテクモゲームスが開発した『WILD HEARTS』は、人気ジャンルであるハンティングアクションの新しい領域へと挑んだ意欲作だ。海外市場を見据えて開発された本作は、パートナーとしてアメリカのゲーム製作会社で『Apex Legengs』などで知られるElectronic Artsと共同で制作にあたっている。言語だけでなく文化も異なる会社との共同開発という挑戦に対して、どのように乗り越えていったのか。またグローバル企業と組むことで分かった、海外市場を狙う上で大切なこととは。

「新しい柱を作りたい」名門ゲームメーカーの新しい挑戦

海外の名門ゲーム会社、Electronic Artsから『WILD HEARTS(ワイルドハーツ)』が2023年2月に発売された。同作はいわゆる”狩りゲー”と呼ばれる、ハンティングアクションというジャンルに属しているタイトルだ。開発は人気アクションゲーム『無双』シリーズを手掛けているコーエーテクモゲームス内の開発チーム「ω-force」。ディレクターの平田幸太郎さんによると、元々はコーエーテクモゲームス側で立ち上がったプロジェクトだったという。

「主力タイトルである『無双』シリーズに次ぐ、新しい”柱”となるタイトルを作りたいと考えていました。開発初期の段階で、海外市場を見据えたタイトルにしようということは意識していました」(平田さん)

『WILD HEARTS』のカギを握るシステムとなるのが、フィールドに設置する「からくり」だ。壁を作って敵の攻撃を防いだり、砲弾を打ち込んだりするなど、攻撃・防御の両方において重要な要素となる。

そこで、ビルド(初期開発モデル)をいくつかの海外ゲーム制作会社に見せたところ、Electronic Artsから協力の申し出があったとディレクターの枝川拓人さんは語る。

「従来のハンティングアクションにない新しい取り組みである『からくり』、そして狩る対象である『獣』という2つの要素に対して興味を持ってもらえたのだと思います」(枝川さん)

本作の敵キャラである「獣」のデザインは、一番初めに取り組んだ要素だという。「自然とはあくまでシステムの一部で、人間の力ではどうにもならないもの、という印象を持たせることを目指しました」(枝川さん)

海外でウケるのは”Sorry”ではなく”Gomen”

Electronic Artsとの共同制作体制となってからは、驚きの連続だったと平田さんは振り返る。

「とても大規模なチーム体制なのに、開発フローが徹底的に体系化されていて、効率的に開発するノウハウを学べました。またグローバル企業なだけあって、ユーザーの特性に合わせたアクセシビリティに関するアドバイスなどの精度も高く、勉強になることが多くありました」(平田さん)

中でもユニークだったのは、開発中に定期的に実施するテストプレイのレビュー方法だ。

「テストプレイ時のゲーム画面だけでなく、まるでゲーム実況動画のように、プレイしている人の様子も収録されていました。ゲームバランスだけでなく、どこでユーザーが驚いたり苦労したりするのかといった、ユーザー体験の指標としても大いに参考になりました」(平田さん)

海外チームと組むことで、英語圏ユーザーの需要やゲーム文化を知ることができたことも開発チームにとっては大きな収穫だった。

「日本を舞台とすることで、かえってマーケットを狭めてしまうのではないかという懸念を初期のころに抱いて、相談したことがありました。しかし、海外ユーザーは我々の思う以上に日本への興味が強く、その心配はないとアドバイスを頂けたのはありがたかったですね」(枝川さん)

海外市場での成功を見据えるためには、自分たちが感じている「日本人としての先入観」を捨てるべきだと、言語のローカライズ作業の際に感じたと枝川さんは語る。

「作中で使われる『ごめん』や『ありがとう』『すごい』といったセリフを英訳せず、日本語のまま導入するという案が上がりました。日本語を英語の中にそのまま交ぜるのは、日本人としてはどうしても違和感が拭えません。しかしElectronic Artsから『絶対に日本語のままがいい』と言われ……半信半疑で採用したのですが、『Gomen』が海外ユーザーで話題になり、受け入れてよかったなと思っています」(枝川さん)

本作の敵「獣」を倒す際、「御免」と言い残して斬るカットシーンが入る。人間に仇なす獣とはいえ、彼らも一つの生命。敬意を持って欲しいという思いが込められている。

また、お互いにリスペクトを持って制作にあたれたことも、開発がスムーズに進んだ要因だったという。

「制作において、基本的な舵取りはほぼ我々に任せてくれていました。唯一強く主張してきたのがクロスプレイ(※)。実装が難しいシステムで、対応しないタイトルが多いのですが、絶対に実装したほうがいいとアドバイスを受けました。悩みましたが、普段開発を見守ってくれているElectronic Artsの助言は素直に聞き入れようと。結果、やはり実装して正解だったなと感じています」(枝川さん)

※異なるプラットフォームで同時プレイを可能にするシステム

発売しておよそ1ヶ月、海外での評判は上々だ。今後は『WILD HEARTS』を新たな主力タイトルにするためにも、まずは目の前のやるべきことに集中したいと語る。

「改善すべき部分は改善しつつ、コンテンツの拡充も図っていきます。『WILD HEARTS』が面白いゲームだとより思ってもらえるようなゲームに仕上げていきます」(枝川さん)

すでに確立されたジャンルへの挑戦はリスクがつきものだが、誰も知らない光景を見せてくれるパイオニアとなる可能性を秘めている。『WILD HEARTS』はハンティングアクションにおいて従来の作品と一線を画した内容のゲームに仕上がっている。それだけでなく、Electronic Artsという強力なパートナーを得たことで、海外で通用するノウハウもふんだんに盛り込まれている。本作は”狩りゲー”の新たな境地を切り開くポテンシャルを持ったキラータイトルだといえる。

取材・文/桑元康平(すいのこ)
1990年、鹿児島県生まれ。プロゲーマー。鹿児島大学大学院で焼酎製造学を専攻。卒業後、大手焼酎メーカー勤務などを経て、2019年5月から2022年8月まで、eスポーツのイベント運営等を行うウェルプレイド・ライゼストに所属。現在はフリーエージェントの「大乱闘スマッシュブラザーズ」シリーズのプロ選手として活動中。代表作に『eスポーツ選手はなぜ勉強ができるのか』(小学館新書)。

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