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世界で高評価のタイトルが続々!インドネシア製ゲームが台頭としている背景とその裏側

2023.04.03

近年台頭のインドネシア製ゲームで見つめる「この国のビジネス事情」

インドネシアでは「ゲーム産業」が盛んになりつつあることはご存じだろうか。

ゲーム制作というのは、原材料がいらない。しかもそれを輸出するのに船や飛行機は必要ない。現代ではネット回線という名の高速船がある。それを使って、マンハッタンの大都会から南極点基地まで世界各地にゲームを配信することができる。

そして実際に、世界各国で高評価を得ているタイトルも登場している。

それらを実際にプレイしてみると、インドネシアがどのような方向性の経済成長を目指しているのかがよく分かる。今回は筆者がプレイしたタイトルをいくつか取り上げつつ、現代インドネシアの様々な事情を考察していきたい。

「多様性の中の統一」を表現する『Coffee Talk』

STEAM HPより
© 2023 Valve Corporation.All rights reserved.
©2019 Toge Productions

「ノベルゲーム」は、高性能のPCやスマホを必要としないジャンルである。

それはそうだろう。ノベルゲームに出てくるのは、基本的にイラストと文章のみ。キャラが複雑な動きをする、というわけではないから低スペックのデバイスでもしっかり処理できる。

PCゲームというものをしたことがなく、所持しているPCも高スペックのものではない……という人には『Coffee Talk』(Toge Productions開発)がお勧めだ。

これはアメリカ・シアトルの片隅の小さなコーヒーショップで繰り広げられる「人間関係」を題材にしている。

もっとも、このゲームの世界は人間と亜人、モンスターが共生している。狼男、サキュバス、エルフ、オークといった亜人が来店し、コーヒーやお茶を飲みつつ交流を展開する。

人間と亜人は法律上は同権とはいえ、それが制定されたのは最近の話。実際問題、亜人に対する差別がまだ根強く残っている。しかも、亜人同士でも種族間の温度差や軋轢も存在する。

たとえば店に来るエルフとサキュバスはカップルで結婚を考えているが、そもそもこの世界では「異属間結婚」は稀で、互いの実家が許さない。それについて話し合ううちにカップルは喧嘩を始めてしまうが、プレイヤーであるマスターがどのような飲み物を提供するかで彼らの結末が変わる……という内容だ。

そして現実のインドネシアでは、ひとつの都市に様々な民族が共生するという状況が本当に存在する。

インドネシア最西端のアチェは国内でも最も厳格なイスラム教徒が占める地域だが、アチェより少し東へ行ったメダンは大都市だから、当然キリスト教徒もいる。一気に東へ飛んでパプアに行ってみると、そこはアジアではなくオセアニア。ところがここもインドネシア領なのだ。

無論、言語も違う。確かにインドネシアにはインドネシア語という公用語が存在するが、人々が普段話す言語はまた別のもの。ジョグジャカルタ市民はジャワ語、バリ島の市民はバリ語といった具合に。

首都ジャカルタはそこに外国人も混ざるから、その様子はまさに『Coffee Talk』である。

つまり、このゲームはある意味で「インドネシアらしい」内容と言えるのだ。

混沌の90年代後期を描いた『A Space for the Unbound 心に咲く花』

STEAM HPより
© 2023 Valve Corporation.All rights reserved.
©2019 Toge Productions

そんなインドネシアに住まう人々が、未だに「黒歴史」と捉えている出来事がある。

アジア通貨危機だ。

欧米のファンドのカラ売りから始まったこの大騒動は、当時ドルペッグ制を実施していた東南アジア諸国の経済を混沌の渦に陥れた。インドネシアも例外ではなく、通貨ルピアが暴落して非常識なインフレーションが発生した。

そのアジア通貨危機直後のインドネシアを舞台にしたゲーム『A Space for the Unbound 心に咲く花』(Mojiken開発)というタイトルがある。

人の心を覗くことができる少年少女が、終末に向かう世界の中で淡い青春を過ごす……という感傷的な内容だ。上の『Coffee Talk』と同じく、ストーリーテリングの要素が強い作品でもある。

「90年代末期は終末世界だった」と言って頷く人は、実は日本でも少なくないのではないか。

この時期、日本でも経済的動揺が相次いでいた。三洋証券、山一証券、北海道拓殖銀行の破綻はいずれも1997年だ。日本経済を支えていたはずの金融機関が次々に破綻し、いよいよ出口の見えない不況に突入したことを誰しもが実感した。

筆者はこの時代を中学生として過ごしたが、青少年に対してやたらと偉ぶっている大人がたくさんいたことはよく覚えている。そしてその大人たちは、実は何もかも上手くいかない現状に突き当たっていて、その裏返しで我々10代に辛く接しているのだ……ということもちゃんと分かっていた。

『A Space for the Unbound 心に咲く花』は、平たく言えばそのような状況をゲームにしてしまった作品である。

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