インドネシアは、パンデミック前から「有望スタートアップ出現地帯」である。
しかもそれらは、今の今まで誰も注目していなかったような「隙間」から発生したりする。
たとえば今、筆者は静岡県静岡市葵区にある青葉公園を見つめている。ここは静岡市役所の裏側にある細長い敷地で、Uber Eatsの配達員がベンチに座ってオーダーを待っている。
もしもここに、キヨスクが1軒あればどうだろうか?
インドネシアでは、そうした「配達員向けキヨスク」が急拡大している。
バイクタクシーの待機所『Warung Pintar』
筆者がインドネシアの首都ジャカルタで『Warung Pintar』の取材を初めて行ったのは、確か2017年だったはずだ。その頃のWarung Pintarは、まだジャカルタ市内に数店舗しかなかった。
当時の筆者は@DIMEとはまったく別の、インドネシアの経済情報を日本人駐在員向けに発信するメディアでそのような記事を担当していた。知り合いにWarung Pintarとやらの話を聞き、中央ジャカルタにある店舗に行ってみたという次第だ。
工場で量産された、まるで箱のような店舗。いや、これは屋台と言うべきか。イエローのカラーリングがやたらと目につくが、それ以外は至って普通の「ワルン」である。
インドネシアの実体経済を支えるのはワルンだ。キヨスクと軽食店を兼ねた具合の店舗で、とりあえずここに来ればパンとコーラとタバコくらいなら手に入る。コンビニよりも遥かに小さいが、かゆいところに手が届く店でもある。
Warung Pintarは、一言で言えば「現代型ワルン」だ。
Wi-Fiと充電器、コンセント差込口を完備してオーダー待ちのバイクタクシーの需要に応える。現代のインドネシアではバイクタクシーもスマホで手配できるようになったのだが、彼らは仕事が来るまでの「待機所」を常に求めている。ワルンはうってつけの場所だ。
もちろん、オーダーを待っている間のスマホはオンライン状態でなければならないし、電池を切らせるわけにもいかない。しかし昔ながらのワルンにそのようなものがあるとは限らない。
以上の理由から、Warung Pintarはバイクタクシーに重宝されるようになった。今やインドネシア全国に50万以上の店舗を構えている。