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論文の質は日本一高い!?開校からわずか10年で世界の科学者から注目を集める沖縄科学技術大学院大学の強さ

2023.04.02

世界最高の知性が集まるOIST

沖縄・恩納村にある「沖縄科学技術大学院大学(以下、OIST)」という教育機関の名前をご存じだろうか。2012年に開学してからわずか10年ほどしか経っていないが、実は世界中の科学者から熱視線を集めつつあるという。

19年に、世界の科学研究機関を格付けする「ネイチャー・インデックス」で、質の高い科学論文の割合が世界で9位、日本国内ではトップと認定。また、科学誌『Nature』を出版するシュプリンガー・ネイチャー社が、20年のデータを用いて分析した結果は「質の高い研究論文を生み出す割合が、無作為に抽出した世界の著名な10の研究大学すべてを上回る」というもの。この時、比較された“著名な研究大学”には東京大学やハーバード大学、オックスフォード大学などを含む。

シュプリンガー・ネイチャー社が分析した、質の高い論文の割合を示すグラフ。OISTが赤い折れ線グラフを示しており、2020年の正規化指標でOISTが10の世界の著名大学を上回っていることが示された。(OIST提供)

23年1月時点の教員数は88人で、1000名以上の教授がいる東京大学と比較すると明らかに小規模な研究機関だ。しかし、ノーベル生理学・医学賞を受賞したスバンテ・ペーボ教授を筆頭に、世界トップレベルの研究者を引き寄せており、世界で初めてサンゴの全ゲノム解読を行うなど海洋研究の分野でも実績がある。

ペーボ氏がOISTに魅力を感じた理由は、神経科学の専門家と共同研究を進められる点にあったという。OISTメディア連携セクションマネージャーの大久保氏は、「自然発生的に学内で共同研究が始まることは頻繁に起こる」と話す。

「まったく専門が異なる教員のオフィスが隣接していたり、専門分野外の人に分かりやすく説明を行うセミナーが開かれる頻度も非常に高いです」(大久保氏)

学生に求められる力は語学力より知的好奇心

5年一貫制のOISTで学ぶ270名弱の学生は8割が外国人で、ルーツは非常に多様。事務職員含めて、学内で話される公用語は英語だ。ただ、学生採用を担う研究科学外エンゲージメントセクションマネージャーのグスマン氏によると、「入学時点で求められる英語力は、実はそこまで高くない」という。

「最低限、教授と研究についてコミュニケーションを取ることができれば、文法や発音は気にする必要はないんです。ただ、TOEFLの点数などを指標にして、一部の学生には『ギャッププログラム』に取り組んでもらっています。9月入学予定の学生であれば4ヶ月前の5月から、実際に研究グループに所属して英語でやり取りをする環境に慣れてもらうというプログラムです。母国語が英語でない学生であっても、OISTで研究を進めていく内に自然と英語でのコミュニケーションは問題にならなくなっていますよ」(グスマン氏)

OISTには“学部”が存在しない。大きく9つの領域に分けられてはいるものの、従来の学術分野を横断して組み合わせることを奨励している。そのため、学生に求められるのは語学力より研究に対する知的好奇心の深さだという。

「学生に与えられる裁量権は、かなり大きいです。一般的な大学で博士課程を取得しようとすると、ある程度教授からプロジェクトが与えられた状態でスタートすることは少なくありません。OISTでは、学生主体で予算も含めた5年間のプロジェクトを自らマネジメントをしていく必要があるんです。学びたい研究テーマのコアをある程度持っていて、より深く学びたいという意欲がなければ、OISTにフィットすることは難しいでしょう」(グスマン氏)

次世代ナノデバイスの基盤となるような新しい物理現象を探求している量子物質科学ユニット。超高真空クラスターシステムなど、最新の設備が整った環境で研究に打ち込むことができる。(OIST提供)

学ぶ意欲の“深さ”だけでなく、教授陣の共同研究のように専門領域ではない研究に関しても幅広く興味をもてるかどうかという点も、重要になってくるそうだ。

「新入生は、専門分野・学士に関わらず、必ず3つのラボを4ヶ月ごとに配属替えする『ラボローテーション』を行います。ローテーションの内、1つは専門外の研究を必ず経験しなければなりません。人的交流も促されるので、刺激を受けた学生が入学当初想定していた研究とは異なる分野に傾注することも少なくないです。教員同様に、学生たちも領域を横断的に研究することが当たり前と感じる仕組みになっているんです」(グスマン氏)

学生たちがOISTを知ったきっかけは、意外なことに多くが“口コミ”なのだという。OISTでは学部生や修士生を対象としたリサーチ・インターンシップという体験入学のようなプログラムを設けており、2ヶ月~半年間OISTの研究グループに所属し研究を行うことが可能となっている。そのリサーチ・インターンシップを終えて母校へ戻った学生や、OISTで開かれるカンファレンスやシンポジウムに出席した研究者や教授からOISTの評判を聞いて興味を持ったという学生が多いそうだ。

「国際的な環境を保って世界で羽ばたける学生を育むために、学生の5割以上は外国出身者というルールが前提としてありますが、一定の水準をクリアできる優秀な人材であれば国籍を問わず集めています。最終的には、研究や論文の質の高さが高ければ高いほど、OISTの評判は伝播しますし、今所属している優秀な学生が世界に羽ばたいた後、OISTの良さを喧伝してより高質な循環が生まれていくことを期待しています」(グスマン氏)

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