社会人になって触れる機会が増えるのが、契約関連の用語だ。「約定」もその一つ。NISA(ニーサ)やiDeCo(イデコ)といった投資・資産運用の分野では特によく聞く言葉なので、定義や使い方をしっかりと覚えておきたいところだ。
そこで本記事では、「約定」の読み方や言葉の意味、使い方について説明する。この機会にぜひチェックしておこう。
約定の読み方と意味
約定の読み方は「やくじょう」。意味は、何かをする約束を取り決めることを指す。特に、法律上の約束事項を表す場合に用いられる改まった表現であり、契約書をはじめとした重要書類に頻出するため覚えておこう。
金融用語としての「約定」
投資を始めとした金融分野では「約定」という言葉が頻繁に使われる。基本的には売買契約が成立することを指すが、投資商品によって取引の仕組みや約定のタイミングなどが異なるため注意しよう。
投資信託における「約定」とは?
投資信託における「約定」は、購入・売却注文が成立することを指す。約定した日の基準価額がその投資信託の約定価格となり、そこからの値動きによって手持ちの投資信託の価値が増減する。投資信託の基準価額は一日一回のみ算出され、同一日の注文は同額で処理される。そのため、売買注文を出した日(申込日)の基準価額で約定するケースが多い。
株式における「約定」とは?
株式における「約定」は、証券会社に出した株の売買注文が成立することを指す。株式の買い手は、約定した価格で株式を保有し、投資信託と同様に、そこからの値動きによって損益が発生する。なお、投資信託とは異なり、株式の価格は市場のオープン時間中、リアルタイムで変動するため、同一日内の売買注文であっても、約定価額が異なるケースが少なくない。
FXにおける「約定」とは?
FX(外国為替証拠金取引)における「約定」は、通貨の売買取引が成立する(売買注文が確定する)ことを指す。約定した際の通貨の価格が約定価格となり、その後の為替レートの変動によって手持ちの通貨価格との損益が発生する。なお、FXの特徴として、為替レートの急激な変動時に、注文時の価格と約定時の価格にずれが生じる「スリッページ」という現象が起きる場合がある。スリッページはFX業者の受発注システムの能力に左右されるため、業者を選ぶ場合は参考にしたい。
不動産取引における「約定」とは?
不動産取引における「約定」は、不動産の売買取引が成立することを指す。「契約」とほぼ同じ意味で使われることが多いが、「約定書(不動産の売買契約書)」「約定金額(不動産の売買金額)」「約定日(不動産の売買契約が成立した日)」など具体的なものを指す場合に使われるケースが多い。
ローンの「約定日」とは?
投資分野以外では、カードローンや住宅ローンといった融資関連の分野で「約定返済日」という言葉を聞くことがある。こちらも金銭の貸借契約に関わる重要な言葉と概念なので、併せて覚えておこう。
毎月決まった日に決まった金額を返済する「約定返済日」
ローンにおける「約定日」は、「約定返済日」を指しているケースがほとんどだ。約定返済日とは、金銭を借り入れた際に交わす契約書(金銭消費貸借契約書)に記載されている毎月の決まった日に、決められた金額(約定返済金額)を返済すること。
この日に返済を怠ると、同じく契約書に定められた規定に基づいて「遅延損害金」の支払いが発生する。また、信用情報機関に延滞の事実が記載され、クレジットカードの作成や住宅ローンの借り入れ(借り換え)が難しくなる場合があるため注意したい。
一方、約定返済日以外に追加の返済を行うことを「繰り上げ返済」と言い、追加の返済を行うことでローン利息を圧縮(削減)し、総返済額を減らす有効な方法となっている。
「約定」は英語でなんという?
日本では金融用語として有名な「約定」だが、英語で表現する場合は、どのようなシチュエーションで使われるかによって表現がが変わる。契約を意味する場合は、「contract」が一般的。一方、合意や協定といったニュアンスを含む場合は「agreement」が適当だ。
文/編集部