■連載/法林岳之・石川 温・石野純也・房野麻子のスマホ会議
スマートフォン業界の最前線で取材する4人による、業界の裏側までわかる「スマホトーク」。今回は、楽天モバイルの法人プランについて会議します。
楽天モバイルが法人向けサービスを開始、ショップやCMでコストカット
房野氏:楽天モバイルが法人向けプランを正式に発表しました。2023年1月下旬に、楽天市場の出展者を集めたイベントがありましたが、三木谷さんが来場者に契約を呼びかけていました。
楽天グループ株式会社 代表取締役会長兼社長最高執行役員 三木谷 浩史氏
房野氏
法林氏:社員に対し、三木谷さんが「年末年始の休みを利用して、家族や友人から回線契約を取るように」と指示したということもニュースに取り上げられていましたが、そんなの別に今に始まったことじゃない。昔から各キャリアとも、似たようなことをやっているわけです。ドコモもauもソフトバンクも、代理店さん経由で散々やってきている。今さら、ギャーギャー指摘することではない。新聞が騒ぎすぎ。最近のいわゆる若いネットニュース媒体も騒ぎすぎ。
法林氏
石川氏:うんうん。三木谷さんは「これからはテレビCMではなく、リファラル(紹介・推薦)マーケティングだ」と言っていたけど、単なるポイント施策、ポイントを配るだけじゃんと思った。物は言い様だなと(笑)
石川氏
石野氏:衝撃を受けたのは、テレビCMを出すコストまでカットするようになったのかということ。
石野氏
石川氏:ほかの3社はテレビCMをたくさん行って、CM好感度でもバチバチに競っているのに。楽天モバイルも少しは宣伝するだろうけど、テレビCMを減らす。あと、ショップに関しても「適材適所でやる」と言っていたけど、どうやら減らす方向にあるのかなと。減らすことがSNSなどに取り上げられて、「楽天、ダメなんじゃないか?」という悪いイメージにつながるので、大丈夫かなと。
石野氏:決算資料によると、2022年12月末時点で楽天モバイルのショップは1200店舗もあるんですよね。約2500店舗あるドコモショップが3割削減されるといっていて、楽天モバイルはドコモの10分の1くらいの契約者数なのに、ショップは約半分ということで、どれだけショップを作っているんだよと。まぁ、郵便局内のショップも含まれていて、そこからいきなり200店舗ドカンと減るという。すごく振り幅が大きいですよね。小さいショップを一気に増やして一気に削って、という、その決算資料の数字に意味があるのかなと(笑)
石川氏:新規契約の7割がネットから、ということだけど、「やっぱりそうかな」みたいな気にもなってくるよね。
石野氏:楽天モバイルの新規契約は7割がネットってことは、3割のユーザーのために1200店舗も持っているということで、ざっと割り算すると、1店舗で1か月7人ぐらいしか契約、純増を取れていないってことになってしまう。ちょっとどうなんだろうって思いますね。
房野氏:費用対効果が悪いですね。
石野氏:ネットーワークの完全仮想化でコストは低いですよという割には、テレビCMをバンバンやっちゃったりとか、ショップを作りまくっちゃったりとか、料金を0円にして回線数を増やしちゃったりとか。「そこに金をかけるか?」というところにかけちゃっていることが、時々ある気がします。
法林氏:以前も話したけど、僕らは楽天モバイルが都市型で展開した方がいいと考えていた。都市部のユーザーをターゲットにして、郊外はとりあえず最初は繋がらなくてもいい、みたいな話をしていたんです。もうひとつ、主要3社と戦っていくうえで、「1.7GHz帯の周波数だけで足りますか?」っていう疑問もあったけれど、楽天モバイルはその指摘に耳を貸さなかった。でも、結局、「プラチナバンドがないと……」みたいなことを言い出したわけです。最近、都内に住んでいる人たちの中で「楽天に変えるといいかな」と思う人が出てきているというのは、やっぱりそういうこと。
房野氏:都市部では結構良い感じになっていると。
法林氏:そう。行動範囲によりますが、楽天モバイルのエリア内で活動している人であれば、今のプランで全然、僕は良いと思う。ただ、大手キャリア並みのショップの数だったりとか、楽天モバイルのハンドリングが……
房野氏:楽天モバイルは「No.1キャリアを目指す」と明言していますからね。
法林氏:そうは言うけど、でも、No.3にも届かない限りはNo.2にも届かないし、ましてやNo.1には絶対届かない。
石野氏:楽天モバイルの1200店舗の中には、机しかない程度の店舗もあるので、ドコモショップの1店舗と同じカウントでいいのかって疑問はありますけど。
法林氏:困った時にサポートしてくれる場所があるという意味でショップの存在はすごく大きいんだけど、「オンラインで伸びてきました」ってことがよっぽど戦略的には正しい気がする。
石川氏:まずは、本当に楽天グループのサービスを使っているユーザー、ロイヤルカスタマーを取っていくという戦略にようやく気がついたというか、そこから取っていくしかないということ。楽天グループのサービスの月間アクティブユーザーは3900万人いるそうなので、まずはその3900万人にドコモやau、ソフトバンクから楽天モバイルへシフトしてもらう方がいい。
法林氏:楽天市場、楽天カード、楽天証券のユーザーは優遇する施策をするくらいのことを、最初からやるべきだった。
石野氏:1GBまで0円だったおかげで、ユーザー数が一時期は500万を超えていましたが、2022年12月の数字を見ると450万で、ほぼ1年前と変わらない。
法林氏:やっぱり500万契約の壁は厚いねぇ。
房野氏:先に楽天市場の人たちにガンガンお願いするべきだったんですね。
法林氏:楽天市場に出店している企業さんの、楽天に対するロイヤルティ(忠誠心)の高さはすごいですよ。もちろん、そうじゃないところもたくさんあるけど、やっぱり、最初からそこを頑張るべきだったのかなぁって。今になって「頑張りますので、よろしくお願いします」と言っているけど、それは2年前に言っておくべきことだった。
石野氏:法人プランね。