■連載/法林岳之・石川 温・石野純也・房野麻子のスマホ会議
スマートフォン業界の最前線で取材する4人による、業界の裏側までわかる「スマホトーク」。今回は、KDDIとソフトバンクが発表した「デュアルSIMサービス」について話し合っていきます。
デュアルSIMサービスは〝通信の保険〟ではない?
房野氏:2022年夏に発生したKDDIの通信障害を受けて、緊急時の対応について議論が進む中で、ローミングは技術的に大変、時間がかかりそうということで、KDDIとソフトバンクが「デュアルSIMサービス」を始めます。
房野氏
石川氏:KDDIの高橋さんが「本当にやるの?」とソフトバンクの宮川さんに問い合わせたところ、「本気だ」と回答があったので実現するようです。月額数百円台の下のほうになりそうで、KDDIには基本料金0円の「povo 2.0」があるけれど、オンラインのみの対応ではなく、ショップで契約できるようにして、裾野を広げていく狙いがあります。
さらに、宮川さんはワンナンバーでやりたいと思っているようです。もし自分が知らない番号の電話がかかってきたら、電話を取らない人もいる。だから、いつも使っている番号でかけられるようにしたいという話です。ワンナンバーはあくまで宮川さんの思い付きだったみたいで、実現するかどうかは疑問ですが(笑)
KDDI株式会社 代表取締役社長 髙橋 誠氏
ソフトバンク株式会社 代表取締役 社長執行役員 兼 CEO 宮川 潤一氏
石川氏
石野氏:調べていくと、ワンナンバーの実現はなかなか難しいという話をする人が多い。そもそも、KDDIに割り当てられた電話番号をどうやってソフトバンクが使うのかという、制度上の問題がある。仮にワンナンバーが実現したとしても、KDDIで通信障害が発生した時に、電話番号をソフトバンクにどうやって転送するのかというハードルもある。それなら、ローミングを選んだ方が技術的には簡単でしょうね。
石野氏
石川氏:厄介なのは、宮川氏の発言なので、周囲が「できそうだ」と思ってしまう点ですね(笑)。
房野氏:デュアルSIMサービスの仕組みはもう発表されていますか?
石川氏:具体的なことはまだですね。
石野氏:今のところは、KDDIとソフトバンクがそれぞれからSIMカードを卸してもらって売る。簡単にいえば、KDDIがソフトバンクの回線、ソフトバンクがKDDIの回線を売るというだけの話ですね。
石川氏:そうだね。スマートフォンを購入する段階で、KDDIとソフトバンクのSIMが入っている状態になる。リリースの段階では、今まで使用していた電話番号に加えて、もう1つ別の電話番号を発行して、基本料金を数百円の下の方に設定する。ただし、予備の回線を使う場合は従量制となりそうです。
気になるのは、緊急時の回線使用が従量制となり、料金が上がってしまうという点。なんでキャリアの事情でネットワークが使えないのに、ユーザーがその負担をしないといけないのか、ちょっと疑問です。
石野氏:そこはおかしいですよね。
石川氏:だよね。〝保険のような商品〟とはいうけど、結局保険ではない。保険は、自分が怪我や病気をした時に備えてお金を払うけれど、デュアルSIMサービスを利用する場合は、障害を起こしているのは通信会社ですから、キャリアが備えるべきって考え方もある。
法林氏:電車の振替輸送のチケットを自分で買っているような状態になるよね。
法林氏
石川氏:しかも、いつもの料金よりちょっと高いっていう(笑)
房野氏:緊急時に使った時に支払った料金は、通信障害を起こした会社とサブ回線として使われた会社のどちらに支払われるのでしょうか。
法林氏:そのあたりの詳細はこれから詰められて行くでしょうね。
石野氏:2022年に発生したKDDIの通信障害では、1ユーザーあたり数百円程度の返金がありましたが、今後、デュアルSIMサービスを契約している人に対して、従量制で使用した分をチャラにしますという形はありかな。というかそうしないとダメだと思います。
法林氏:本来はそこを含めて仕組みを考えなければいけないけど、現時点では決まっていない。