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最新スマホ「Galaxy S23」のカメラがヤバい!夜景撮影と驚異の100倍ズームに秘められたAIの性能

2023.03.31

■連載/法林岳之・石川 温・石野純也・房野麻子のスマホ会議

スマートフォン業界の最前線で取材する4人による、業界の裏側までわかる「スマホトーク」。今回は、日本での発売にも期待ができる「Galaxy S23」シリーズについて話し合っていきます。

「Galaxy S23」シリーズ登場! 2億画素カメラの実力は?

房野氏:「Galaxy S23」シリーズがグローバル発表されました。石野さんはアメリカまで取材に行かれていましたよね。

房野氏

石野氏:自腹でサンフランシスコまで取材に行ったのに、出てきた端末はパッと見は2022年モデルとあまり変わりませんでした(笑)。

石野氏

法林氏:あれ? って感じだよね(笑)

法林氏

石野氏:そうですね。ラインアップとしては「Galaxy S23」「Galaxy S23+」「Galaxy S23 Ultra」の3モデル。外観はあまり変わりませんが、Galaxy S23 Ultraは2億画素センサーやSnapdragon 8 Gen 2 for Galaxyを搭載するなど、中身が結構変わりました。

 クアルコムが去年開催した「Snapdragon Summit 2022」で発表していた、AIを使って画像のリアルタイム処理を行う技術を積極的に取り入れていて、暗い場所での写真、動画がすごく明るくなる。このあたりは明確に違いを感じられます。

 一方、Galaxy S23、Galaxy S23+は、スペックも見た目もあまり前モデルと変わらないので、パンチ力に欠ける印象です。

石川氏:僕もGalaxy Harajukuで実機を試しましたが、インカメラでも暗い場所できれいに撮れる。2億画素のインパクトに引っ張られがちですが、実はAIの力が大きいなと。

石川氏

房野氏:インカメラの画素数はどれくらいですか?

法林氏:1200万画素ですね。写真にAIを使う「コンピュテーショナルフォトグラフィー」は各社が進めていて、そこから写真の仕上がりを誰が手助けするのかという点が注目ポイント。昨今はライカなども出てきていますが、Galaxyはもともとデジカメをやっていた歴史がある。画像処理をする技術があるということですね。

 2億画素を搭載したうえで大きいのは、画素数ではなくて、4×4のピクセルビニング(隣り合う画素を仮想的に1画素として出力する手法)ができるという点。明るく撮影できる理由はここでしょう。昨年あたりからスマートフォンの動画性能はかなり向上していて、今回Galaxyは自信がついたからこそのアピールなのかなとも思います。

石野氏:昨今のスマートフォンのカメラは、画素数を大きくしてピクセルビニングをすることで、1ピクセルあたりのサイズを大きくする方向と、1インチセンサーを搭載してサイズを大きくする方向がある。各社は、人々が画素数に反応するのか、インチ数に反応するのかを試しているような時期なのかもしれません。

石川氏:画素数を上げてアピールするのは、ケータイの時代から変わらない。ただ、昔は画素数が上がると写真が暗くなっていたのに対して、今はピクセルビニングによって明るく撮れるようになっている。このおかげもあって、また画素数を上げる動きが見られています。

 アップルも昨年からiPhoneのカメラで4800万画素とスペックを言い始めたので、各社が1億、2億とアピールしているのかなと。だからソニーはクアルコムと手を組んで1インチセンサーもやると話しているし、Galaxyは2億画素に進んだ。しばらくは、インチ数と画素数での競争になると思います。

 ただし、1インチセンサーはどうしても接写が弱かったり、物撮りすると周りがボケすぎるので、まだスマートフォンのカメラとしてはこなれていない印象ですね。

法林氏:最終的にどういう画にまとめるかにもよりますよね。僕は周りがボケたほうが好きですが、人それぞれの好みの問題なので、どちらがいいという話ではありません。

房野氏:2億画素カメラは、Xiaomi(シャオミ)のスマートフォンにも搭載されていますね。

法林氏:Xiaomiが意地でも先に出した形だね。あとGalaxy S23は天体モード(タイムラプスで星空を長時間露光する撮影モード)が搭載されているのも特徴。東京では明るすぎて全然撮影できなかったけど(笑)

石野氏:地方の高台のような場所で撮影しないと、なかなかいい写真が撮りにくいですよね。

法林氏:そうだね。スマートフォンのカメラでは、都内で星空の撮影はまだ難しいけど、デジカメでは長時間露光で撮影している人もいる。スマートフォンとして到達していない領域ではあるので、そこを目指すのはありなのかな。

石野氏:あと、AIが強くなったという面では、100倍ズームがかなりくっきり撮影できるようになりました。

房野氏:あれはすごいですよね。

石野氏:すごいですよね。開発の人に話を聞いたところ、ユーザーが100倍ズームで撮影しそうな被写体を、AIでとにかく学習させたとのことで、あまり撮らなさそうなシーンは確かに画質が落ちていました(笑)。アップデートで進化する可能性はありますけどね。とはいえ、手持ちであれだけの撮影ができるのはすごいです。

チップセットは「Snapdragon 8 Gen 2 for Galaxy」! 〝for Galaxy〟ってなに?

石川氏:少しびっくりしたのは、「Snapdragon 8 Gen 2 for Galaxy」という名前のチップセットを搭載した点ですね。〝for Galaxy〟ってなに? と疑問はありますが、これもマーケティング対策にはなっています。iPhoneがオリジナルのチップを搭載していることへの対抗にはなりますよね。

法林氏: 〝for Galaxy〟に関する正式な表明はないんだよね?

石野氏:そうですね。ただ、クロック数が上がっているという話はありますし、GPUの性能もいいはず。あとは、「Galaxyに最適化した」というぼんやりとした話しかなくて、サムスンもクアルコムも詳細は教えてくれません。

石川氏:マイクロソフトの「Surface Pro 9」の5Gモデルに搭載されている「Microsoft SQ 3プロセッサ」のようなもので、大手は自社の名前を付けたいんだなと(笑)。わかりやすさを重視した、マーケティングの世界の話ですね。

5G 対応 Surface Pro 9

石野氏:Galaxy S23のカメラはナイトグラフィーがすごい強くなっているので、カメラ担当者に聞いたところ、カメラに関しては特別チップのカスタマイズを行っていないとのことです。

房野氏:クアルコムはGalaxyに対してどれくらいコミットしているのでしょうか。

石野氏:前モデルまでは、「Exynos」というサムスン自社開発のチップを搭載したモデルと、Snapdragonを搭載したモデルの両方がありましたが、Galaxy S23シリーズはすべてSnapdragon 8 Gen 2 for Galaxyになっています。ここは両社で取引があったと思いますよ。

房野氏:サムスンはこのまま自社チップの製造をやめてしまうのでしょうか。

石野氏:一応、自社工場ではPixelシリーズに使われる「Tensor」チップを作っていますね。

石川氏:Galaxyのハイエンドモデルのためだけにチップを作るのは、限界なのかもしれません。

法林氏:台数的にね。じゃあTensorは作れるのかという話になるけど。

石野氏:一般的には、TSMC(Snapdragon 8 Gen 2などを製造する半導体製造会社)のほうがサムスン製よりも性能が良いといわれています。サムスンとしても、カメラやチップで部門は分かれていているので、そこまで自社チップに固執しなくてもいいのかもしれません。

 あと、カメラにあれだけAIを使っていると、チップの処理負荷が大きくなります。チューニングの観点から見ても、Snapdragonのほうが良いのかもしれません。

石川氏:OPPO(オッポ)のように、画像処理専門のチップを作るか、メインのチップに全部乗せするのかという方向性の違いです。

石野氏:クアルコムとしては、Snapdragon 8 Gen 2のカメラに関するAIを使った初めてのスマートフォンと表現していますね。

Galaxy S23のバッテリー持ちは?

法林氏:あとは、バッテリー持ちがどうなるかだね。Galaxy S22では、バッテリー持続時間に関する不満がたびたび上がっています。

石野氏:あくまで体感ですけど、良くなっている気がします。

法林氏:一応200mAh増量しているので、前年比で5%アップはしているけどね。

房野氏:5Gでミリ波に対応して、バッテリーを多く消耗するといった心配はないのでしょうか。

法林氏:そこまで心配しなくてもよいと思います。もともと5Gは、クライアント側(スマートフォン側)電波の出力をコントロールできるので、バッテリーへの影響は少なくなっています。

石川氏:ただ、ミリ波に繋がりにくくて、ミリ波とSub6を行ったり来たりしてしまうような場所だと、バッテリーは消耗します。

石野氏:あと、Galaxyシリーズはもともとパワーを優先していて、バッテリー持ちはそこまで良くないですよね。

法林氏:Galaxy S22の評判が良くないといわれているのも、独自OS、独自プラットフォームを搭載したiPhoneと、価格帯が低くて、電池持ちが優秀なAQUOSと比べられているから。ちょっとかわいそうだよね。

石川氏:GalaxyはOSがAndroid、チップはSnapdragonで、両方から上がってきたものを合体させないといけない。どちらかがいまいちだとそっちに足を引っ張られてしまう。水平分業の壁はあると思います。

石野氏:Galaxyと同じバッテリー容量を搭載したXiaomi端末のほうが、バッテリー持続時間が長かったりはするけど、Xiaomi端末は逆に通知の取りこぼしが結構ある。Galaxyではそのリスクが小さくて、イメージとしてはアイドリングせずにガンガン回しているような形です。

法林氏:結局、バッテリーを消費するのはディスプレイの要素が大きい。大画面ディスプレイを搭載しているので、それだけで不利だけど、Galaxy S23 Ultraは1Hzから、Galaxy S23でも48Hzからとリフレッシュレートを低めに設定できるように工夫はしています。

eSIMクイック転送や衛星通信への対応にも期待

石野氏:Galaxy S23シリーズのもう1つのトピックスは「eSIMのクイック転送」に対応した点ですね。日本版がどうなるかは未確定ですが、eSIMクイック転送に積極的だったKDDIあたりで採用されることに期待できます。Android端末でもようやくという形ですね。

石川氏:あとは、宇宙関連、衛星通信に関する話がなかったのは意外でしたね。

石野氏:なかったですね。

石川氏:ただ、Androidの次のバージョンに使われているアイコンが宇宙を想起させるようなデザインになっているので、グーグルの発表次第で動きがあるかもしれません。

石野氏:一応、Snapdragon 8 Gen 2では衛星通信にも対応していますからね。

石川氏:そう。だからアップデート次第で動き出すかもしれません。

法林氏:昔から「Galaxyのアップデートは早い」といわれていたけど、今はPixel、AQUOSに次ぐ3番手くらいだよね。だいぶ遅くなってきた。

石川氏:なんだかんだカスタマイズしていますからね。

石野氏:4年のアップデート保証をしているのは偉いところですけどね。スマートフォンを買い替えない要因にもなり得ますが(笑)。

……続く!

次回は、LINEのヤフー、ZHDとの統合について会議する予定です。ご期待ください。

法林岳之(ほうりん・ たかゆき)
Web媒体や雑誌などを中心に、スマートフォンや携帯電話、パソコンなど、デジタル関連製品のレビュー記事、ビギナー向けの解説記事などを執筆。解説書などの著書も多数。携帯業界のご意見番。

石川 温(いしかわ・つつむ)
日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社後、2003年に独立。国内キャリアやメーカーだけでなく、グーグルやアップルなども取材。NHK Eテレ「趣味どきっ! はじめてのスマホ」で講師役で出演。メルマガ「スマホで業界新聞(月額540円)」を発行中。

石野純也(いしの・じゅんや)
慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。

房野麻子(ふさの・あさこ)
出版社にて携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年からフリーランスライターとして独立。携帯業界で数少ない女性ライターとして、女性目線のモバイル端末紹介を中心に、雑誌やWeb媒体で執筆活動を行う。

構成/中馬幹弘
文/佐藤文彦

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