こんにちは。
弁護士の林 孝匡です。
宇宙イチわかりやすい解説を目指しています。
今回、不倫している男性必見です。
裁判例をザックリ解説します。
ラブラブな【オトナの関係】に見えた上司と部下。部下の女性は上司のことを「お兄ちゃん」とまで呼んでたのですが・・・突如、部下の女性が声を上げます。訴訟を提起。
女性
「この上司から性行為を強要されました」
上司
「してません」
「この女性と付き合っていました」
「性行為は同意のもとです」
〜 結果 〜
裁判所は概要「メッセージのやりとりなどからすればオトナの恋愛だよね。同意があった」と認定。
以下、分かりやすく解説します(ワールドイン テリジェンスパートナーズジャパンほか事件:東京地裁 H28.8.30)
登場人物
▼ 会社
・海外調査、マーケティングを行う会社
▼ Xさん
・女性(当時37歳)
▼ Yさん
・男性(Xさんより年上)
・会社と業務委託契約を結んで個人事業主として活動
どんな事件か
▼ 面接合格
Xさんが会社から内定をもらいました。Yさんは会社と業務委託契約を結んで個人事業主として活動していました。
Xさんは、入社するまでの間、Yさんのアシスタントとして勤務するようになりました。
▼ はじめは関係が良好
はじめは2人の関係は良好だったようです。メッセージを見てみると、YさんはXさんに「理想の妹」と送信し、Xさんは「憧れていた兄が突然あらわれた」と返信しています。(私も言われてみたいもんです)
XさんはYさんのことを「お兄ちゃん」と呼ぶようになりました。
YさんはXさんの面倒をカナリ見てますね。Yさんは、Xさんが東京で新生活を始める時に、入居物件を探したり、洗濯機・電気ポット・ドライヤーをプレゼントしたりしています。
▼ 飲みに行くなど
2人は新大久保の焼肉屋で朝5時まで飲みました。以下は翌日のメッセージのやりとり(判決文より引用)仲良いですね。
その後もデートのようなものを重ねました。ちょいちょいプレゼントもしていたようです。ブラウスなど(3万6000円)・HDDレコーダー(4万2000円)など。
▼ 手をつなぐようになる
その後、だんだん距離が縮まっていったようで、手をつないで歩くようになりました。Xさんは、Yさんに妻子がいることを知っていました。
▼ 初めてのDo
4日前、東日本大震災が起きました。Yさんは「原発が爆発して東京が危険なので浜松に避難する」とXさんに言って、深夜に車で静岡県のビジネスホテルに行きました。そこで3泊4日し、初めて性行為をしました。
この性行為について、両者の主張が激突。
■ Xさんの主張
Yさんが「放射線で外は危ない」言ってきて部屋の外に出ることはできませんでした。私が原発事故の恐怖と軟禁状態の絶望感で抵抗する気力を失っていたのに乗じて「あ、入っちゃった」と言いながら性交に及んできました。
■ Yさんの主張
違います。同意がありました。
▼ 静岡から東京へ戻る
その後、Yさんは東京に戻って大丈夫だと判断し、2人で東京に戻ります。2人がどこに戻ったのかというと上司Yさんの自宅です。Yさんの妻子が大阪に避難していたからです。
Yさんの自宅で4泊くらいし、何度か性交渉をしました。妻のいない自宅でニャンニャン、カナリの度胸です。
Yさんの自宅から出勤した日もあります。その日のメッセージは以下のとおり。
メッセージだけ見ればラブラブですわな。その後も、週1くらいのペースでラブホテルへ行っていました。
▼ プレゼント
引き続きプレゼントもしまくってます(合計33万円くらい)内訳は以下のとおり。
あとは、熊本へ温泉旅行いったり、北海道旅行してカニを食ったり。
関係がこじれたのか?
きっかけは不明なんですが、2人の関係がこじれたようです。Xさんは労働相談センターに電話をします。
相談の概要は「Yさんから性的関係も迫られ、言うことを聞かないと内定も取り消されることを恐れ、結局は関係を持たされた。昼間は普通に働いているけど、夜になるとホテルに呼び出される」というもの。
Xさんが訴訟を提起
Xさんは損害賠償請求訴訟を提起します。「Yから性行為を強要をされた」という主張です(パワハラされたとも主張していますが棄却されてます。以下セクハラに絞って解説します)
裁判所の判断
Xさんの敗訴です。裁判官は2人の関係やメッセージのやりとりなどを見てザックリ「性的行為の強要じゃないくてただの不倫関係、オトナの恋愛でしょう」と認定。具体的には以下のとおり認定しました。
XさんがYさんとの不利関係の継続を心から望んでいなかったとしても、会社に正社員として早期に入社するという目的を叶えるためにYとの不倫関係を選択したといえ、年相応の男女交際経験を踏まえた女性が自ら決断した
付け加えた根拠事実として、Xさんが「だって私たちの関係自体、浮気でしょ」と言っていたこと、Xさんはラブホテルに行くことを前提に待ち合わせ時間やラブホ滞在時間を調整していたことなどを挙げています。
▼ Xさんの反論
Xさんは「メッセージが改ざんされている」「前の会話が削除されている」「このように返信せざるを得なかった」と反論したんですが、裁判官の心を動かすには至りませんでした。
さいごに
真実は分からないんですがこの裁判では「性行為の強要はなかった」と認定されました。
Q.
真実は分からないんですか?裁判所は「性行為の強要はなかった」と言ってるんでしょ。
A.
裁判官の目に映ったものが【裁判上の真実】となっているだけです。裁判官は神様じゃないので絶対的真実は分かりません。「出された証拠によるとこういう事実が認定できるよね」ってだけです。なのでやはり証拠=メッセージの存在はデカイですね(LINEのやりとりなど)。
以下、一般論。
▼ 女性へのアドバイス
女性は上司の機嫌を損ねないように「めっちゃ楽しかったです!また誘ってくださいね」みたいなLINEをすることがあると思います。
でもこういう時は【敬語を崩さない】【一定の距離を保った表現を心がける】などの対策を心がけましょう。というのも裁判官が「上司に好意を抱いてるじゃん」と認定し、そこからズルズルと「性行為も同意してた」と結論づける可能性があるからです。
▼ 男性へのアドバイス
男性はマジで恐怖ですよね。どれだけラブラブでもいつハシゴが外されるか分かりません。【戦国時代の同盟】と【不倫関係】には寝返りがつきものです。てことで、何やかんや頑張ってください!
今回は以上です。「こんな解説してほしいな〜」があれば下記URLからポストして下さい。ではまた次の記事でお会いしましょう!
取材・文/林 孝匡(弁護士)
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