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教えてかなえ先生!自分をアシ代わりにしようとする友人とどう付き合うべき?

2023.03.28

妥協への処方箋

過酷な環境に晒されつつある現代のビジネスパーソンの悩みは多い。だが、日々直面する課題の中には、私たちの人生をより豊かにするためのヒントが詰まっているという。異色の経歴を持つVTuberの短期集中連載、まだまだ続く第3回!

妥協への処方箋

運転免許を持っていない友人から「買い物に連れてってよ」とお願いされます。でも、多少のガソリン代を渡されるだけで都合よく利用されているようでモヤモヤしています。

【結論】他人に勝手な期待をせず、諦めて自身を省みよう

実は「妥協案を出すことのできる人」こそが評価される

 まず、本件の相談者にはいろいろと言いたいことがありますが、回答は後半で詳しく触れるとして、最初に知ってほしいことがあります。それは、妥協することは悪いこと・恥ずかしいことじゃないということです。

 ここ数年、インターネット(主にSNS)を中心に、論争の際には「揚げ足取り的に論破して自身の主張を通したら勝ち」という風潮が蔓延しているように感じます。「妥協」という言葉を聞くと、自分が「負け」「損する」といった印象を持ってしまう人が多いのかもしれません。ただ、『損して得取れ』ということわざがあります。目先の感情にとらわれず、将来の利益を確保するように思考の奥行きを広げることは、特にビジネスパーソンに必要な能力だと言えます。

 例えば、わかりやすく新聞勧誘の営業場面に置き換えて考えてみましょう。

「新聞を1年間取ってほしい」と積極的な勧誘を受けたアナタ。「いや、1年間は無理ですよ! お金もそこまでないので」と回答したところ、勧誘員が「それじゃ半年で結構です。さらに購読特典も付けます!」と提案してきます。そして、アナタは「何回も勧誘に来られても困るし、特典もくれるなら……」と納得したうえで半年の購読契約を交わしたとします。

 このような会話は営業や勧誘の場面で多く見られますが、これも一種の妥協でしょう。しかし、この勧誘員が最初から半年間の契約を取ることが目的だったらどうでしょうか? もしそうなら、この勧誘員は最初に希望以上の条件を提示して断られた後に、当初の希望を提示したことになります。

 これは心理学の世界で「ドア・イン・ザ・フェイス」と呼ばれるもので、先に大きな要求を提示した後に徐々に要求を小さくして当初設定した要求をのませる交渉手法です。自然と使っている人もいるかもしれません。逆に、小さな要求をのませてから徐々に大きな要求を提示して目標とする要求をのませることを「フット・イン・ザ・ドア」と言います。

 もちろん、セールスの交渉は非常に複雑で今回のように簡単なものではありません。しかし、新聞勧誘の例では、「1年間の定期購読契約をしてほしい」勧誘員と「何回も勧誘されることを迷惑に思う」アナタの間で「半年契約」をするという妥協点が生まれたわけです。

 視野を広げてみると、ビジネスの多くの場面で妥協が見られます。極端なことを言えば、社会は多くの「妥協」の積み重ねによって、円滑に動いていると言えます。

必要なのは「相手の譲歩できる範囲を正確に把握する能力」

 さて、妥協するうえで大切なのは「相手が譲歩できるライン」を正確に読み取る能力です。自分の利を求めるばかりではまとまる交渉も難航しますし、仮に無理やり交渉をまとめても結果として後で損することになってしまうかもしれません。

 しかし、いきなり相手に「譲歩できるラインを教えてください!」なんて馬鹿な話ですし、自分の腹を全部見せて交渉に臨むのも愚作です。

 あらゆるビジネス場面において言えることですが、相手の譲歩できるラインを先に正確に読み取ることに成功した側が、交渉のイニシアチブを取ることが多いのではないでしょうか。さっきの新聞の勧誘の場面でも、結果として「妥協案」を提案した勧誘員側が交渉の主導権を持って契約を成立させました。必要なのは情報収集する能力とメタ認知能力を鍛えることだとわかります。

 メタ認知能力とは「自身の認知活動を客観的に捉える能力」です。自身を第三者から見たように捉え感情をコントロールすることで、冷静な行動や判断を下す、というものです。

 また、妥協点を探るには「相手の情報」も必要です。ほとんどの人には思考にクセがありますから、そこを事前に見抜くことで、より自分に利益が残る形で交渉を終えることができるでしょう。

 一般的に「妥協」とは「諦め」と似たニュアンスで捉えられることも多いですが、本来「妥協」とは互いに歩み寄って利益を最大化するための行為を指すものなのであり、多くの社会的場面において見ることができます。社会は「妥協」によって円滑に進んでいるとも言えます。必ずしも悪いことではないのです。

モヤモヤは不快感情の消化不良、自身と妥協するべし……だけど?

 今回の相談者の場合は、「一緒に買い物したくない気持ちを優先したい自分」と「自分の気持ちを抑えて穏便に今のままの関係を続けておくべきと考える自分」の葛藤がモヤモヤを生んでいるのだろうと考えられます。まずは、自分の気持ちの妥協点を見つけ出し、そのうえでご友人と交渉すれば良いと思います。

 ただ、相談を受けた率直な感想としては、相談してきているアナタのほうが少々身勝手な方のような印象を受けました。確かに、アナタのご友人は、アナタを「タクシー代わり」として使っているかもしれません。しかし、アナタはガソリン代を受け取ってクルマを出している以上、ご友人が提示した条件に同意してクルマを出してしまっているわけです。もし条件が不満なら、「クルマを出すんだから、ランチくらいおごってよ」といったように、相手に対して言葉にして要求を伝えましょう。言葉にせずとも相手がこちらに配慮してくれるだろうというのは、かえってアナタのほうが厚かましいように感じました。

 そんなアナタには「持たざる者は持つ者の気持ちがわからない」という言葉を送ります。運転しない人は運転する人の気持ちのすべては理解できないこともあります。そこを理解せずに、自分の感覚と常識がすべて正しいと言わんばかりに相手を非難するようでは、今後も対人場面では良い結果を生まないことが多くなるのではないでしょうか。

モヤモヤしたら……

相手からずうずうしい要求をされても、それをのみ込んでしまったら「同意している」のと同じ。自分の主張も言葉に出して、互いの意見を押し引きしないと「正しい妥協点」は生まれない。

犯罪学教室のかなえ先生犯罪学教室のかなえ先生
元少年院の先生で、犯罪心理学や教育犯罪学の知見からニュースなどを解説するVTuber。近著に『もしキミが、人を傷つけたなら、傷つけられたなら』。

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©夢乃とわ SDイラスト/紀羅わたり

※「教えてかなえ先生」は、雑誌「DIME」で好評連載中。本記事は、DIME4月号に掲載されたものです。

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