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【ヒャダインの温故知新アナリティクス】きつねダンスを聴いて欧州の一発屋に思いを馳せる

2023.03.28

 2022年、いろんなものが流行しましたがちょくちょく見かけたのが日本ハムファイターズの「きつねダンス」。ノルウェー出身のコメディアン2人組「イルビス」によるEDMテイストのコミックソング『The Fox』に乗せてチアガールがきつねの耳や手をつけてかわいくダンスする、というもの。TikTokとの相性も良くて大バズリ。なんかの歌番組でイルビスの2人がノルウェーから来日、わけもわからずチヤホヤされていてちょっとおもしろかったです。 

 さて私ったら、本業は音楽家。バズリの分析!とかしたいところですが、そんなものわかっているならとっとと自分で作ってるよね。こればっかりはわけわかめ。とはいえサウンド的には『江南スタイル』や『Perfect Human』に似ていて、日本人は2010年代のEDMが好きなんだなあ、などとぼんやり思ったりします。

ヨーロッパ発、洋楽一発屋の系譜

 で。私は今回うれしいんですよ。というのも近年洋楽の「一発屋」と言われる楽曲が出てこなくて寂しいな、なんて思っていたんです。邦楽ではドルチェ&ガッバーナ的な曲とかポコポコ出てきていたんですが洋楽でドカン、てのは私の記憶の限り思い当たりません。しかし、今回のイルビス。洋楽、そしてヨーロッパ。これは「洋楽一発屋」の正しい系譜でゾクゾクします。そう。ヨーロッパから生まれる一発屋って多いんですよ。少し振り返りましょう。

 まず日本のみならず世界を席巻した一発屋。1996年のスペイン人デュオ「ロス・デル・リオ」による『恋のマカレナ』です。ラテンサウンドをデジタルでまぶした楽曲ですが8小節の簡単なダンスが大バズリ。これって今のTikTok売れに似てますよねえ。当時の米大統領も踊っていたことが思い出されます。スペインの中肉中背おじさんがスペイン語で歌う珍妙さも耳に心地よかったですね。一発屋は2人組が多く、イギリスから1994年に出てきた女性デュオ「シャンプー」なんてのも良かったですね。パンクな出で立ちの少女2人が投げやりのような歌い方で『Trouble』という曲を歌い大ヒット。推測ですがPuffyってシャンプーが元ネタじゃないのかな。

 さて、まだまだ二人組はいます。1996年のデンマーク。「Me&My」という女性デュオなんですが『ドゥビ・ドゥビ』というユーロビートソングでブレーク。日本でCDが150万枚売れたとか。ひええ。ナースやバニーガールのコスプレ、金髪でかなりセクシーでしたね。 

 そして忘れてはいけない女性デュオといえば「t.A.T.u」の2人でしょう。ヨーロッパというかロシアですが、2002年に『All The Things She Said』が世界的に大ヒット。女性同士の同性愛を思わせるパフォーマンスは奇抜でしたね。まあ日本ではMステをブッチしたことのほうがインパクト強いとは思いますが。そして、これはデュオではないですが、ルーマニアのグループ「O-Zone」による『恋のマイアヒ』。2004年に流行したユーロビートナンバーです。インターネット黎明期のアスキーアートとの相性もよく、ネットで火がついた楽曲第1号とも言えるのではないでしょうか。

きつねダンス写真:時事

なぜヨーロッパから一発屋が生まれるのか

 長くなりましたが、このようにヨーロッパ方面からの一発屋の比率は非常に高いわけです。ここからはなぜ欧州から生まれるのか仮説を立ててみましょう。ソースはありません。

 まず「言葉、およびアクセントの特異性」。英語で歌っていたとしてご当地の訛りがあります。さらにマカレナやマイアヒのように日本人にはなじみのない言語により響きがコミカルかつ、キャッチーに聞こえるのかもしれません。

 次に「ビルボードチャートでは排斥される楽曲」アメリカのメインストリームではなく、ちょっと時代的には古いユーロビートがいきなり流行ったりするのは、在米アーティストが「もう恥ずかしくてやらない」ことを全力で振りかぶった結果かもしれません。今回のきつねダンスもサウンド的には10年前だし。

 最後は「権利関係がアメリカより楽」。ま、これは完全に想像ですが。てな感じで久方ぶりの欧州一発屋に感動しているわけです。次は欧州のどこか楽しみですね!

文/ヒャダイン

ヒャダインヒャダイン
音楽クリエイター。1980年大阪府生まれ。本名・前山田健一。3歳でピアノを始め、音楽キャリアをスタート。京都大学卒業後、本格的な作家活動を開始。様々なアーティストへ楽曲提供を行ない、自身もタレントとして活動している。

※「ヒャダインの温故知新アナリティクス」は、雑誌「DIME」で好評連載中。本記事は、DIME4月号に掲載されたものです。

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