和菓子には欠かせない存在である「あんこ」。そのあんこが、なにやら進化しているようだ。最近では和菓子だけにとどまらず、さまざまなスイーツに形を変えて活躍している。新しいブランドから、老舗和菓子店の新商品まで、既成概念にとらわれない“進化系あんこスイーツ”が登場し続けている。
なぜ今あんこなのか?
なぜ今、あんこが改めて注目を集め、進化を見せているのだろうか?まず考えられるのは、あんこは“ヘルシー”な印象があるという点だ。もちろん、印象があるだけではなく、小豆から作られるあんこには、食物繊維やポリフェノールなどの体に嬉しい栄養素が含まれている。また、洋菓子より脂質が少ない和菓子はダイエット中でも、罪悪感が少ないお菓子のひとつである。
コロナ禍を経ての健康面への意識の高まりや、在宅勤務での運動不足によるダイエット人口の増加などが、再び“あんこ”への注目を集めた一因ではあるだろう。
映える“進化系あんこスイーツ”3選
また、最近登場している“進化系あんこスイーツ”の特徴として“映える”という点にも着目したい。SNSが日常に溢れている現代、やはり“映え”への進化は必須なのかも知れない。和菓子は素朴でシンプルな見た目のものも多いが、若者の心を捕えるには“映え”が効果的といえる。
“進化系あんこスイーツ”は、従来の素朴なあんことは違い、インパクトのある見た目のものが多い。今回はそんな中から3つの商品をご紹介したい。
■1.アスリート達が飲むあんこ!?「theANko」
パウチに入ったスタイリッシュな見た目が印象的な「theANko」。この商品はアスリート達のために開発された“飲むあんこ”だという。
株式会社UNDERWATER代表取締役の平子勝之進氏は、以前は水球の選手であった。引退後もスポーツの現場に足を運ぶことは多く、そこでアスリート達が栄養補給にあんこを食べているのを見たんだとか。
「アスリート達が、缶からスプーンであんこをすくったりして食べていました。昔からスポーツの栄養補給にはあんこがいいと言われていました。その光景を見た時に商品化を思いついたのです」
商品はキャップ付きのスパウトパウチ入りであるため、手を汚さずに飲めるものだ。
「アスリートだけではなく、コロナ禍では食事を取る時間もなく忙しい医療従事者の方々の、手軽な栄養補給源として飲まれたりもしていました。最近は『お昼の休憩が取れない』という美容師さんなども購入されています」
仕事や運動の合間の栄養源として手軽であるだけでなく、あんこの味わいがどこかほっと気持ちも緩ませてくれるとの反響があるという。オンラインショップのほか、現在はスポーツ関係のショップや山荘等でも販売されているとのこと。
つぶあん、こしあん、しろあん各100g(各380円 税込)
・築地果汁創作所オンラインショップ(https://tsukijikajuu.tokyo/theanko/)
■2.年配の方にも人気のあんこのお花のケーキ!「あんフラワーケーキ」
続いてご紹介するのはSNS映え間違いなしの「あんフラワーケーキ」を販売している「華見月(ハナミズキ)」。あんフラワーケーキとはあんこを花の形に絞り、その花を土台のケーキに乗せたものだという。華見月の代表である金森麻希湖氏に商品について聞いた。
「当店のあんこは自家製で、ケーキにあうようによりクリーミーなあんこを作ってつくっています」
洋菓子やバターが得意ではなかったという金森氏。和菓子が好きだったことから「バターや生クリームが苦手な人でも楽しんでケーキが食べられるように」との思いであんこでケーキを作るようになったとのこと。
「甘さ控えめで安心な材料、バターフリー、グルテンフリー、添加物などもないということで、お子さまをお持ちの奥さまや糖分控えめを好まれる方、年配の方へのギフトでのご購入が多いです」
カップケーキ4個セット (あんクリーム)税込3,900円
・華見月オンラインショップ(https://hanamizukist.thebase.in)
■あんこの糖度や種類が選べる「あんこの勝ち」
最後にご紹介するのは「あんこの勝ち」という、なんともユニークなネーミングのブランドだ。和菓子であるあんこを、誰もが知っている洋菓子とコラボさせ、新しいあんこの楽しみ方を提案している。代表取締役の森大氏に開発の経緯を聞いた。
「パンケーキやロールケーキなどの洋菓子の人気が続く中、あんこがもっと目立ってもいいだろうと思っていました。洋菓子に合わせても、『あんこが勝つだろう』と考えました」
年齢層の高い方に好かれるイメージが強いあんこを、若い年齢層にもアプローチするため、さまざまな工夫をしたという。
「若者にもあんこの良さを伝えるためにはその世代に刺さる工夫が必要と考え、商品にボリュームやインパクトを加え、SNS映えも意識しました。また、チョコレートのカカオのパーセンテージが記載されているように、あんこの糖度や種類を選択できるようにして、選ぶ楽しさも考慮しました」
あんこは、つぶあん(糖度60°)、こしあん(糖度52°)、皮むきあん(糖度45°)の3種から選べる。「糖度の低い皮むきあんがアッサリして美味しい」という方や、逆に「つぶあんの甘さが疲れに丁度いい」など、選択肢を楽しんで欲しいという、森氏が求めていた反響が得られているという。
「Anしゅーくりーむ」左から順に、つぶあん(税込486円)、皮むきあん(税込590円)、こしあん(税込540円)
・あんこの勝ち(http://www.annokachi.com)
伝統的なあんこの和菓子は味わい深い。しかし、新しいあんこスイーツからは、思いもよらぬ斬新な美味しさを発見できるかも知れない。あんこはどこまで進化して行くのか…、あんこ好きとして見届けたい。
取材・文/まなたろう