ヨーグルト生まれの「EPS」で野菜の栄養吸収UP
ニンジンのβ−カロテンやトマトのリコピンなど、緑黄色野菜に多く含まれる栄養素、カロテノイド。このカロテノイド、目のピント調節や血圧を下げるといった様々な健康機能がある一方で、吸収率の低さが課題となっていた。例えばニンジンの場合、生で食べるとわずか10%のカロテノイドしか吸収できないのだ。
そこで、近年注目されているのが、ヨーグルトの製造過程で乳酸菌が産生するネバネバ物質「EPS」。昨年発表された論文では、ヨーグルトと野菜の同時摂取で栄養の吸収率が、生野菜のみの摂取より1.8〜6.5倍UPしたという研究結果も報告された。乳酸菌生まれのヨーグルト+生野菜の組み合わせこそ、野菜の栄養を効率よく吸収する秘訣なのだ。
【EPS(菌体外多糖=exopolysaccharides)とは】
EPSは乳酸菌が自らの防御や環境適応のために体外へ分泌するネバネバした粘質性の多糖体。これまで主に「乳酸菌1073R-1株」などで免疫細胞の活性化機能が知られていたが、今回、野菜の栄養吸収力UPに関わる機能もわかった。
〈DOCTOR’s EYE〉
EPSの示す免疫活性化機能に加え、野菜の栄養吸収を高める働きは、栄養効率を考える上でとても重要です。これは乳酸菌の新たな機能性の発見であり、非常に興味深い報告です。
東北大学名誉教授
農学博士 齋藤忠夫先生
NEWエビデンス!
「生野菜+ヨーグルト」で栄養吸収力が最大6.5倍に!
健常な男性を対象に野菜のみ、または野菜と発酵乳(OLL1251株/OLS3290株)を同時に摂取してもらった。摂取前、摂取後2時間ごとに血漿中のカロテノイド濃度を測定した結果、ニンジン由来のβ-カロテンは1.8倍、トマト由来のリコピンは6.5倍吸収力が高まった。
平均値±標準誤差(n=16)
*P<0.05
出典:Morifuji et al. Am J Clin Nutr 2020;111:903–914
ヨーグルト乳酸菌栄養吸収のメカニズム
腸管表面は、細菌の侵入を防ぐためにムチン層で守られている。カロテノイドはそのムチン層に跳ね返されるため、単体では腸に吸収されにくいが、ヨーグルト乳酸菌が産生するEPSや乳たんぱく質が、カロテノイドを包み込むことでムチン層を通過、吸収率を高めると考えられる。
取材・文/内野智子
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