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本人確認システムの電子版「eKYC」を導入するメリットとデメリット

2023.04.16

『eKYC』とは、『電子本人確認』を意味する言葉です。eKYCの導入により、対面・郵送で行われていた本人確認手続きが、オンライン上で完結するようになりました。eKYCの内容や導入の背景を、メリットや導入企業の事例と併せて紹介します。

eKYCって何?導入が進む背景もチェック

『eKYC』は、本人確認のデジタル版です。どのようなものなのか、具体的に見ていきましょう。

オンライン上の本人確認システム

『eKYC』とは『electronic Know Your Customer』を省略したもので、オンラインによる本人確認を意味します。

従来の対面式、あるいは郵送式の本人確認は『KYC』と呼ばれていました。『eKYC』とは、KYCに『電子』を意味する『electronic』を加えた言葉です。

社会全体のデジタル化が進む近年では、さまざまなサービスがオンライン上で提供されています。eKYCで本人確認が電子化したことにより、オンラインサービスの利便性はより向上しました。

例えば、eKYCを導入しているネット銀行などでは、口座開設手続きがスマホ・パソコンで完結します。口座開設までにかかる時間は、これまでより大幅に短縮されました。

参考:eKYC(オンラインで行う本人確認)を知る|国民生活センター

eKYCは大別すると2種類ある

eKYCの種類は、『セルフィー型』『フェデレーション型』に大別できます。

セルフィー型とは、本人の自撮り写真(セルフィー)と、本人の住所・氏名・生年月日・顔写真が載っている書類を、撮影・アップロードする本人確認方法です。自撮り写真・書類に相違がなければ、本人であると認められます。

一方のフェデレーション型とは、本人確認済みのサービスを利用する本人確認方法です。過去に本人確認を行った携帯電話会社などがあれば、本人の同意のもとにその情報を利用して本人確認を行います。

どちらのタイプの本人確認方法となるかは、利用するサービス次第です。

導入が進められている背景

eKYCが普及した背景には、社会全体のデジタル化があります。さまざまなサービスがオンライン上で提供される中で、本人確認だけがアナログでは非効率です。デジタル化に対応した安全性の高い本人確認方法として、eKYCを導入する事業者が増加しました。

また、『犯罪収益移転防止法』の改正によってオンラインでの本人確認が可能なったのも、eKYCが普及した背景の一つと考えられます。

犯罪収益移転防止法とは、犯罪組織などへの資金流用を防ぐために制定された法律です。法律では、金融機関など特定の事業者が取引を行う際の本人確認を義務付けています。

本人確認のオンライン化に関する法整備が進んだことで、フィンテック事業者などがオンライン完結型のサービスを提供しやすくなりました。

参考:犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則 第六条一項 | e-Gov法令検索
参考:eKYC(オンラインで行う本人確認)を知る|国民生活センター

eKYC導入のメリットは?

パソコンを打つ手元

(出典) pixta.jp

eKYCによって本人確認がオンライン上で完結すれば、ユーザーの利便性向上・企業の生産性アップなど、さまざまなメリットがあります。それぞれ具体的に見ていきましょう。

ユーザーの離脱リスクを低減

eKYCの導入によって本人確認手続きが簡略化すれば、ユーザーの手間・待機時間が減少します。サービス利用までがスムーズになれば、ユーザーの離脱を防ぎやすくなるはずです。

対面・書類による本人確認は、書類をそろえる手間や、窓口に足を運ぶ手間がありました。忙しい人・面倒なことをしたくない人にはハードルが高く、サービスの申込を行っても途中で断念するケースが少なくありません。

eKYCを導入すれば、手元にあるものだけで本人確認が完了します。『利用したい』というユーザーの熱が下がる前にサービスを提供できるため、加入率・申込数の増加が期待できます。

業務効率の向上が見込める

eKYCを導入すれば、本人確認をツール・AIに一任できます。記入漏れ・記入ミスのチェックが早くなる上、精度も高めです。画像から文字を抽出して転記できるツールを使えば、本人確認作業で人手が入るフェーズはごくわずかとなります。

また本人確認書類がデータ化されれば、郵便で書類をやりとりしたり、個人情報を一つひとつシュレッダーにかけたりする必要がありません。本人確認業務の工数・手間が減り、配置する人員を減らすことが可能です。

eKYCの導入により、企業は人的リソースをより重要なコア業務に回せます。本人確認業務の効率アップはもちろん、企業全体の生産性の向上が期待できます。

コスト削減ができる

eKYCによって本人確認がオンラインで完結すれば、紙のやりとりが不要になります。

サービス提供側は返送用の封筒を準備する必要がなくなるほか、ユーザーへの郵送代も不要です。コスト面での負担が減るのは、事業者にとって大きなメリットといえます。

また本人確認書類を紙で受け取った場合、処理するための人員・保管スペースを確保しなければなりません。eKYCの導入でこれらが不要になれば、人的コスト・保管のためのコストもかけずに済みます。

eKYC導入のデメリットは?

パソコンのセキュリティのイメージ

(出典) pixta.jp

eKYCは、システムの不安定性や、対象が限定されることなどが課題とされます。どのようなことがデメリットといわれるのか、詳しく見ていきましょう。

システムによる精度の問題

eKYCのシステムによっては、認証の精度が低いケースがあります。例えば、『本人確認書類が読み取れない』『顔認証できない』などはよくあるトラブルです。

システムによって本人確認ができない場合、カスタマーサポートに問い合わせが集中する恐れがあります。受付担当者の業務負担が減ったとしても、ほかの部署にしわ寄せが行けば、業務効率がアップしたとはいえません。

また、どうしてもeKYCで本人確認できない場合は、紙ベースでの本人確認が必要となります。ユーザー側の負担・不満が大きくなりやすく、申込前の離脱が頻発する可能性が高まるでしょう。

全ての人が利用できるとは限らない

eKYCのサービスを使いこなすには、一定レベル以上のITリテラシーが必要です。デジタルデバイスの扱いに慣れていない人・そもそも持っていない人は、オンラインでの本人確認よりも、対面・書類での本人確認を希望するかもしれません。

またeKYCを利用するには、顔写真付きの本人確認書類が必要です。運転免許証・パスポートなどを所持していない人は、そもそもeKYCによる本人確認の対象外となります。

eKYCを導入したとしても、eKYCを利用できない人には、従来通り紙ベースでの本人確認業務が必要です。サービスのターゲットとなる層・年齢によっては、eKYCの導入が利益につながらない可能性があります。

eKYC導入の企業例を紹介

スマホとパソコン

(出典) pixta.jp

eKYCは、今やさまざまな企業で導入されています。ここでは、ゆうちょ銀行と楽天モバイルのeKYC導入事例を見ていきましょう。なお紹介している情報は、いずれも2023年3月時点のものです。

ゆうちょ銀行(日本郵政グループ)

日本郵政グループの株式会社ゆうちょ銀行は2022年1月、ゆうちょ銀行の本人認証アプリ『ゆうちょ認証アプリ』に、セルフィー型の『LIQUID eKYC』を導入しました。

ゆうちょ認証アプリとは、ゆうちょ銀行のオンラインサービス『ゆうちょダイレクト』へのログインや、各種取引認証に使用されるスマホアプリです。

ゆうちょ認証アプリで口座情報などを登録する際は、自撮り画像・本人確認書類をアップロードしなければなりません。アップロード後は、提出された本人確認書類・顔の情報・銀行に提出済みの情報の照合により、厳正な本人確認が行われます。

従来の生体情報による認証に、さらにeKYC認証が加わったことで、ゆうちょ銀行のセキュリティリスクがより低く抑えられるようになりました。

参考:ゆうちょダイレクト等のセキュリティ強化・機能追加について(2023年2月17日(金)更新)-ゆうちょ銀行
参考:LIQUID eKYC機能詳細 – 株式会社Liquid(リキッド)

株式会社ゆうちょ銀行

楽天モバイル

楽天モバイル株式会社は、スマホからの加入申込に、セルフィー型の『AIかんたん本人確認(eKYC)』を導入しています。運転免許証またはマイナンバーカードがあれば、スマホのみの本人確認が可能です。

eKYCを利用する際は、アプリまたはWebから『my 楽天モバイル』を開きます。本人確認書類の提示方法として『AIかんたん本人確認(eKYC)』を選択すれば、本人確認はオンラインで完了します。

eKYCの導入により、開通までの待ち時間は大幅に短縮されました。さらに、ユーザーが楽天回線に対応したeSIM対応製品を持っている場合は、最短3分ほどで乗り換えが完了します。

参考:eKYCとは | 本人確認 | お客様サポート | 楽天モバイル

楽天モバイル

構成/編集部

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