「生きているだけでお金が掛かるとは」よくいったもので、お金の悩みは日々つきまとうものだ。このように、我々の生活と切っても切り離せない「お金」は、慣用句やことわざなどに使われることも多い。「泡銭」もお金にまつわる言葉の一つ。言葉の響きから大体の意味は想像できても、具体的に泡銭がどのようなお金を指すのかピンとこない方も多いだろう。
そこで本記事では、泡銭の意味と由来や使い方を解説する。行動心理学の観点から見た泡銭の使い方に関しても解説するので、併せてチェックしてほしい。
泡銭の意味と由来
泡銭の読み方は「あぶくぜに」。「泡」をひらがなにして「あぶく銭」と表記することも多い。まずは、この言葉の意味と由来、類語などを確認していこう。
泡銭とは苦労せずに得たお金のこと
泡銭は苦労をせずに得たお金を表す言葉。また、不当に得たお金を指す場合もある。具体的には、人からもらったお金や、宝くじの当選金、ギャンブルの勝利金が泡銭に該当する。他にも、詐欺や窃盗など法に反した行動によって不当に得たお金を泡銭と呼ぶこともある。
由来は「泡のようになくなる様」から
「努力が水の泡」の表現からもわかる通り、「泡」は儚いことの例えとして使われる。泡銭の泡には、まさに「すぐ消える」「儚い」といったニュアンスが含まれている。ちなみに、「あぶく」は「あわ」の俗な言い方とされている。
泡銭の類語
泡銭と似た表現に「悪銭」という言葉がある。悪銭は、悪いことをして手に入れたお金を指す。ちなみに、「悪銭」の読み方は「あくせん」。泡銭と異なり、「銭」を「ぜに」ではなく「せん」と読む点に注意しよう。
また、「悪銭身につかず」ということわざもある。盗みや賭け事などで得たお金は無駄なことに使われ、すぐになくなってしまう様を表すことわざだ。「ギャンブルなどで得たお金はすぐになくなってしまうので、使い方に気をつけよう」との戒めの意味を込めて使われるのが一般的。
「ぼろ儲け」も泡銭と類語関係にある言葉で、元手となったお金や掛かった労力に対して多大な利益を得るという意味を持つ。泡銭とは異なり、不当なお金や、労力をかけずに得たお金という意味は含まれていない。
泡銭の英語表現
泡銭は英語で「easy money」と表現される。また、「easy come, easy go」は「簡単に手に入るものは失いやすい」ことを示す慣用句。お金に関してだけでなく、男女関係を指して使われることもある。「悪銭身につかず」の英語表現としても使えるが、「easy come, easy go」には「簡単に手に入れたお金だから簡単に失っても仕方がない」と開き直ったニュアンスが含まれている。同じ現象を表す言葉でも、戒めとして使用される「悪銭身につかず」とは違ったニュアンスであることをおさえておこう。
「泡銭」の表現を使う時の注意点は?
苦労をせずに得たお金を指す泡銭。ここでは、「泡銭」という言葉を適切な場面で使えるように、使い方や注意点を順番に見ていこう。
どのような時に使う?
「泡銭」は、「悪銭身につかず」のように「身につかない」と一緒に使われることが多い。
【例文】
・ギャンブルで得たお金は翌日には使ってしまった。泡銭は身につかないとよくいったもんだ。
・泡銭が手に入ったら最新家電を購入したい。
「泡銭」と表現するのが適切ではないケース
苦労せずに得たお金というと、真っ先に思い当たるのがギャンブルで得たお金ではないだろうか。競馬やパチンコなどで幸運にも得た大金については「泡銭」という表現が使える。ただし、同じ競馬やパチンコでも、勝つための研究を重ねた末に勝利金を得た場合には、苦労をして得た結果のため「泡銭」とは言わない。
なお、還付金も泡銭に該当しない。還付金は払いすぎていた税金が手元に戻ってくることで、本来は私たちの手元にあるべきお金であるため、苦労せずに得たお金とは異なる。いずれにしても、泡銭には、「苦労せずに得たお金」というニュアンスを含むことを覚えておこう。
泡銭は無駄遣いしやすい?
行動経済学的に見ても、泡銭は浪費しやすいということが証明されている。
アメリカの経済学者リチャード・セイラ―によって提唱された「メンタル・アカウンティング(心の家計簿)理論」によると、人は無意識のうちにお金の価値を「得た手段」や「使用目的」によって測り、心の家計簿の中でカテゴリごとの仕分けを行っているという。
例えば、泡銭の例のように、同じ1万円でも労働によって得たお金は慎重に使い、ギャンブルによって得た臨時収入は無駄遣いしてしまうのもメンタル・アカウンティングによるもの。また、スーパーで購入する食品や日用品は1円でも安く買いたいと思うにもかかわらず、家電などの大きな買い物になると1円の差など気にならないという心理も、お金を使う目的によって同じ金額でも価値が異なって見える心理が働くためだとされている。
また、「ハウスマネー効果」という理論も存在する。ハウスマネーはカジノで得たお金のこと。カジノで得た勝利金のように、予想外に得られたお金は、普段より無駄遣いする傾向が強くなる現象だ。ギャンブルや投資などで稼ぎが出た後はリスクを取りやすいのもハウスマネー効果の一例。
どちらの理論も、「お金の重みの感じ方は、そのお金を得た時の状況などによって変化する」ということを示している。泡銭を得た際には使い方に気を付けたい。
※データは2023年3月中旬時点のもの。
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