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給与のデジタル払い解禁で注目される「給与口座の多様化」で何が変わる?

2023.03.20

■連載/阿部純子のトレンド探検隊

給与が決済アプリや電子マネーで受け取れる「給与デジタル払い」

「給与デジタル払い」とは、給与を「○○ペイ」などの資金移動業者が運営する決済アプリや電子マネーで受け取れる制度で、2023年4月の労働基準法施行規則の改正により、デジタルマネーアカウントへの給与支払が可能となる。

給与は現金手渡しから銀行口座への振り込みと変遷してきたが、1998年の改正では証券口座が解禁、今年の改正ではデジタルマネーでも給与を受け取れることになり、25 年振りに給与振り分け先が広がった。

日本では、給与のデジタル払いは外国人労働者の給与の受取方法として一部使われていたが、今回の法改正は、海外に後れを取っているキャッシュレス決済を促進するという国の政策的な側面もあると考えられる。

給与のデジタル払いは、指定を受けた資金移動業者の決済アプリ、電子マネーだけが指定日以降に、給与デジタル払いの対象となる。ただし、決済アプリ、電子マネーに保有できる金額は100万円以内と定めているので、デジタル給与で100万円を超えた場合は当日中に超過部分を従業員の金融機関口座、または証券口座に返金しなければならないと規定されており、給与デジタル払いを受けるには、デジタル払いを受ける従業員が銀行口座を持っている必要があり、資金移動業者がその銀行口座を把握していなければならないということになる。

2023年1月にPayment Technologyが実施した「従業員のデジタル給与払いに対する意識調査」では、45%の事業者が「積極的にデジタル給与払いを活用したい」と回答。「活用したい」を合わせると70%に上った。活用したい理由として「口座からお金を引き出す手間が省けるから」が最多で約66%。ただ、全額デジタル給与で受け取りたいという人は少なく、83%は、デジタルは一部で口座振り分けの併用を希望している。

2020 年にローンチした「エニペイ」は、従業員が指定した支払い先に自動で給与を振り分けることができるサービス。給与デジタル払い解禁に伴いエニペイにデジタルマネーアカウントへの支払機能を実装、毎月の給与を、デジタルマネーを含む最大5口座に振り分けるサービスを順次実施していく。

企業がエニペイと契約することで、従業員が電子マネーを含む各口座に指定した金額、もしくはパーセンテージで振り込みできる。給与額が変わっても都度指定する必要がなく、振分けから振込までをエニペイ側で対応するため人事部の手間が削減される。月額1万円~(従業員数に応じる)でコストを抑えて導入企業の負担削減にも寄与する。

振り込み手数料は、第一口座は企業負担だが、第二、第三の口座については本人に確認したうえで、1口座200円で従業員の負担となる。資金移動業者は振込手数料なしの場合も多く、無料で振り込めると想定される。

「従業員にとって給与は活動の源泉であるにも関わらず、一つの口座でしか受け取ってこなかったことで意識しないうちに消費、投資などの経済活動に制限がかかっていました。

証券口座で給与を受取る事が推進されれば貯蓄型投資の流れが進み、『貯蓄から投資』政策につながります。メインバンクはメガバンクという人が多い中で、地方銀行の口座で受取る事が推進されれば地銀にお金が流れることで『地方創生』につながります。デジタルマネーで受け取ることが推進されれば日本のキャッシュレス決済の割合を高めていく一助となり、キャッシュレス化が実現する社会に寄与します。

エニペイのリニューアルを皮切りに、“給与口座の多様化” 促進を掲げ、日本社会を豊かにすべく、『給与口座の多様化で日本を元気に』プロジェクトを発足しました。本プロジェクトに賛同し、エニペイとの連携を図るパートナー企業と共に、給与DXを推進していきたいと考えています」(Payment Technology代表取締役 上野亨氏)

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