体に貼り付けるデバイスによるモニタリングで心不全患者の再入院リスクが低下
体に貼り付ける遠隔モニタリング用のデバイスにより心不全患者の再入院リスクを38%下げられることが、新たな研究で示唆された。
μCorシステムと呼ばれるこのデバイスを通じて、医師のもとに患者の状態に関する有用な情報が届けられるため、医師が早期に薬剤を調整し、合併症の悪化を阻止することが可能になるのだという。
米ペンシルベニア州立大学のJohn Boehmer氏らによるこの研究結果は、米国心臓病学会年次総会(ACC.23、2023年3月4〜6日、米ニューオーリンズ)で発表された。
米国での心不全患者の数はおよそ600万人に上る。心不全患者には通常、毎日体重を測り、むくみや疲労、息切れ、胸痛などの症状が現れていないかを自分で確認することが求められる。
それでも入院から数カ月以内に胸水が原因で再入院する例は珍しくない。
μCorシステムでは、心不全患者の左側胸部に接着用のパッチで貼り付けたデバイスが、無線周波数信号を利用して胸水のレベルを評価する。
このデータは、医師のもとに送信される。今回の研究では、心不全による入院患者522人が、入院後10日以内に試験に登録された。試験ではまず、登録者の半数を、装着したデバイスのデータが医師のもとへ送信されない対照群として設定。
対照群から集めたデータを基に胸水のレベルの正常/異常(増加)の閾値が設定された。
その後、残る半数(介入群)にデバイスを装着し、設定した閾値を超える胸水の貯留が検出された場合には、アラートを伴うデータがデバイスから医師の元に送信された。両群ともにデバイスは90日間装着した。
その結果、介入群では90日以内に心不全による再入院のリスクが対照群よりも38%低いことが明らかになった。また、心不全に関連した救急外来の受診や入院、死亡が生じるリスクも38%低かった。
Boehmer氏は、「遠隔モニタリングに関する研究では、医師に、データに反応してもらうことが課題となる。われわれが期待したのは、医師が送られてきたデータを見て、これまでの対面診療と同様に患者を管理することだ。今回の試験では、胸水の閾値が設定されていたため、医師はそれにきちんと反応して、患者への治療が行われた。その効果が、再入院リスクの低減という形で示された」と述べている。
通常、胸水の貯留に対しては、利尿剤により体内からの液体の排泄を促し、また、心不全治療薬の用量を増やすなどの処置が講じられる。
心不全をモニタリングするためのデバイスとしては、他に、心拍リズムの異常をモニタリングする植込み型除細動器(ICD)と植込み型ループレコーダーや、肩に取り付けたデバイスで胸水をモニタリングするReDSシステムなどがある。
Boehmer氏は、μCorシステムはReDSシステムよりもかさばらず、また植込み型のデバイスよりも侵襲性が低い点を利点として挙げている。
Boehmer氏は、「今回の結果は、ランダム化比較試験で確認する必要がある」と話す。
同氏らの研究グループはまた、このデバイスが、心不全だけでなく肺疾患のモニタリングにも活用できる可能性を見据えた上で、デバイスにより収集された、心拍数や呼吸数などの追加データを役立てる方法についても検討する予定だとしている。
なお、本研究は、μCorシステムの開発会社であるZoll Medical Corp.による資金提供を受けて実施された。学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものとみなされる。(HealthDay News 2023年3月7日)
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(参考情報)
Press Release
https://www.acc.org/About-ACC/Press-Releases/2023/03/06/14/01/Stick-on-Device-Provides-Early-Warning-of-HF-Complications
構成/DIME編集部