『誼』は、『よしみ』『ぎ』などと読まれる漢字です。字面だけ見ると難しそうですが、『近所の誼』『幼なじみの誼』など、日常で使われることも少なくありません。『誼』の意味や使い方、さらには熟語や類義語まで紹介します。
「誼」の読み方と意味、使い方は?
『誼』という文字だけを見ると、読み方に悩んでしまう人も多いでしょう。まずは、『誼』の正しい読み方や意味、使い方を紹介します。
読み方は「よしみ」または「ぎ」
『誼』の読み方は、『よしみ』『ぎ』の2種類です。『よしみ』と読む場合は、『人との縁・つながり』 を指します。単なるつながりというよりは、深い親愛があり、とりわけ親しい間柄で使われるのが一般的です。
また、『ぎ』は『義』と似たような意味として用いられます。意味は、『正しい道筋』『よいこと・よしとしていること』などです。『誼』はごんべんの横に『宣』に似た字が使われていることから、『せん』と誤読されるケースが多々あります。紛らわしい読み方ですが『ぎ』と覚えておきましょう。
なお、ごんべんの横に宣を配した『諠』の読みは『けん』です。意味は『やかましい』『うるさい』などがあり、『誼』とは全く異なります。
参考:誼 | 漢字一字 | 漢字ペディア
参考:よしみ | 言葉 | 漢字ペディア
「誼」の使い方を例文で紹介
『誼』の使い方は、以下の例文をチェックしましょう。
- ○○君が困っているらしいから、同郷の誼で助けてあげたい
- 彼の父親はこの町の有力者なので、誼を通じておいて損はない
『同郷の誼』とは、『同じ故郷のつながり』『故郷を同じくする者同士』などの意味になります。同郷以外にも、『同じクラスの誼』『同じチームの誼』などと言い換えて使うことが可能です。
また『誼を通じる』とは、『親しくなろうと働きかけること』を意味します。『親しくなっておいて損はない』『親しくしておくと有利だ』というときに、『誼を通じておいて損はない』と使うとよいでしょう。
「誼」を使った熟語もチェック
『誼』は、ほかの言葉と合わせて熟語としても使われています。教養の一つとして、読み方や意味を知っておくことは有益でしょう。『誼』を使った熟語を紹介します。
古いなじみ「旧誼」
『旧誼』は『きゅうぎ』と読みます。『旧』は『古いこと・昔・過去』などを意味する言葉です。
『誼』と合わさると、『古くからなじみのある間柄』『長く続く親しい関係』などの意味となります。どちらかというと古くかしこまった言い回しで、日常生活で使うことはまれです。
- 君の顔を見れば、彼も旧誼を思い出すだろう
- 今回のことは、君と私の旧誼に免じてゆるすことにしよう
『旧誼を思い出す』とは、『昔親しく付き合っていたことを思い出す』という意味です。縁遠くなった友人に会うとき、緊張する人は少なくありません。「君の顔を見れば、彼もすぐに昔を思い出すよ」と言いたいときに使えます。
親しい付き合い「厚誼」
『厚誼』と書いて『こうぎ』と読みます。文字通り、『情のこもった親しい付き合い』を指す言葉です。
『厚誼』は、ビジネスシーン・冠婚葬祭などで多用されますが、『厚誼』のみで使われることはありません。使う場合は『ご厚誼』とし、必ず『ご』を付けましょう。
- これからも変わらぬご厚誼を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます
- 生前は格別のご厚誼にあずかり、遺族一同心より感謝申し上げます
このように、目上の相手・格式のある場面で使うのが一般的で、取引先へのビジネスメール・冠婚葬祭の挨拶などに適した言い回しです。
なお、『厚誼』と似た言葉に『交誼』があります。どちらも同じ読みですが、『交誼』は『友人や仲間との親しい交わり・関係』を指す言葉です。同格の相手に対して使う言葉とされており、目上の人に使うと失礼に当たりかねません。書面で挨拶をしたためるときは、『厚誼』との書き分けに注意しましょう。
「誼」の類義語・関連語も併せて覚えよう
『誼』と同様に、人のつながりや親しい付き合いを示すのが『縁故』『宥和』『修好』などの言葉です。『誼』と併せて、類義語・関連語もチェックしておきましょう。
特別なつながり「縁故」
『縁故』は『えんこ』と読みます。一般的には、『血縁や姻戚関係でつながった人・その人たちとの関係』を指します。
『人と人との特別な関わりを示す』という点で、『誼』と通じる意味を持つ言葉です。縁故を使った例文は、以下のとおりです。
- 祖父の代からの縁故で、誰もが憧れる大手企業に入社できた
例文を使うシチュエーションは、試験ではなく縁・つてで就職が決まったときです。企業の役員などと親しいつながりのある人は、その縁により採用が決まることも珍しくありません。縁故による採用は『縁故採用』といわれ、ごく一般的な就職ルートの一つです。
大らかに付き合う「宥和」
『宥和』と書いて『ゆうわ』と読みます。『宥』は『なだめる』『ゆるす』などの意味を持つ言葉です。
『宥和』には『対立する相手に寛大な心で接して親しくする』『相手の態度を大目に見て仲良くする』といった意味があります。
誰かと親しく付き合うという点で、『誼』と『宥和』は似ています。ただし、『誼』には『ゆるす』『なだめる』などの意味はありません。『誼』と比較して、『宥和』の方は相手との関係に若干の緊張を含んでいます。
『宥和』が頻出するのは、国際政治の場面です。例えば『宥和政策』というときは『外交上の譲歩をし、戦争を避けようとする政策』を意味します。1938年のミュンヘン会談にて、イギリスのネヴィル・チェンバレン首相が取った政策として有名です。
主に国家間の友好関係を指す「修好」
『修好』は『しゅうこう』と読みます。『誼』と同様に『親しく交わること』を意味しますが、個人間の関係で使われることはほぼありません。『修好』というときは、国と国との関わりを指すのが一般的です。
『修好』を使った言葉としては、『日米修好通商条約』がよく知られています。日米修好通商条約とは、1858年に江戸幕府とアメリカの間で締結された条約です。
関税自主権や治外法権など日本に不利な内容で締結されており、いわゆる不平等条約として認識されています。後の明治政府は、日米修好通商条約の改正のため、多大な労力を注ぎ込むこととなりました。
このほか、国家間の付き合いが一定期間を超えたときは『日タイ修好135周年』『日加修好90周年』などといいます。
構成/編集部