自動車税の月割が必要となるのは、年度途中で納税義務が生じたり税金の還付を受けたりする場合です。自動車税は12カ月分の一括納付が原則のため、納税額・還付額は月割額を用いて算出されます。自動車税の月割や計算方法、還付について紹介します。
自動車税が月割になるケースは?
自動車税とは主に『自動車税(種別割)』のことを指し、自動車を所有する人が必ず納付しなければならない地方税です。自動車税の月割について見ていきましょう。
年度途中で車を購入する場合
自動車税が月割となるのは、年度の途中で自動車を所有する場合です。
自動車税は、4月1日時点で自動車検査証(車検証)に『所有者』として登録されている人、または自動車をローンで購入し『使用者』として登録されている人に課せられる税金です。年度初めの『一括納付』が原則とされ、自動車の所有者はその年の4~3月までの自動車税をまとめて支払います。
年度の途中で自動車を購入した場合は、自動車を購入した月の翌月から3月までの月割分をまとめて納付する決まりです。
なお、月割で自動車税を納める必要があるのは、自動車を新規で購入した人のみに限定されます。名義変更で自動車を入手した人は、年度途中でも自動車税の納付は不要です。
軽自動車は月割の対象外
軽自動車に課せられる軽自動車税には、月割納付が適用されません。軽自動車税の課税対象は『毎年4月1日時点の所有者』に限定されるためです。4月2日以降に軽自動車を購入した場合、軽自動車税の納税義務が生じるのは次の年度からとなります。
注意したいのは、このケースでは納税証明書が発行されないことです。納税証明書がないと、車検を受けられません。これによって起こる弊害としては『中古車を購入して、すぐに車検』が必要な際です。
2023年1月より、軽自動車の車検はシステム上で納税情報の確認が行われることとなりました。システムにより納税の不備を指摘された場合は、自治体で納税義務がないことを証明してもらう必要があるでしょう。
なお、2023年3月時点の軽自動車の規格は、『排気量0.660L(660cc)以下』『長さ3.40m以下・幅1.48m以下・高さ2.0m以下の三輪または四輪自動車』です。
参考:軽自動車税の現状等|総務省
参考:軽自動車とは | 軽自動車検査協会 本部
参考:軽自動車の車検は軽JNKSで変わる!|国土交通省・総務省・軽自動車検査協会・地方税共同機構
自動車税月割額の計算方法と税額一覧
自動車を年度途中で購入した場合、自動車税の月割額を計算し、正しい納付額を算出しなければなりません。自動車税の月割額の計算方法と、税額の一覧表を紹介します。
月割の計算方法
自動車税の月割額を算出する計算式は、『排気量別で定められている自動車税÷12』です。導き出した月割額に、購入した翌月から年度末までの月数を掛ければ、納付すべき自動車税額が分かります。
例えば、標準税額『3万4,500円(排気量1L超1.5L以下)』の自動車を12月に購入したケースでは、『税額3万4,500円÷12カ月×残月3カ月=8,625円』となります。100円未満は切り捨てのため、納付が必要な自動車税額は8,600円です。
計算が面倒な人は、東京主税局が公表している『自動車税月割税率表(自家用)』を利用すれば、納税額が一目で分かります。
なお、自動車税は『月単位』でカウントされるため、同月ならいつ購入しても納税額は変わりません。納税額が変わるのは、月をまたぐ場合のみです。
排気量別・自動車税一覧【標準税率】
自動車税は、排気量と初回登録時期によって税額が異なります。以下は、2019年10月1日以降に初回登録を行った自家用自動車の税額一覧表です。
総排気量 | 税額 |
1L以下 | 2万5,000円 |
1L超~1.5L以下 | 3万500円 |
1.5L超~2.0L以下 | 3万6,000円 |
2.0L超~2.5L以下 | 4万3,500円 |
2.5L超~3.0L以下 | 5万円 |
3.0L超~3.5L以下 | 5万7,000円 |
3.5L超~4.0L以下 | 6万5,500円 |
4.0L超~4.5L以下 | 7万5,500円 |
4.5L超~6.0L以下 | 8万7,000円 |
6.0L超 | 11万円 |
2019年の税制改革により、2019年10月1日以降に初回新規登録を行った自家用車の税率が引き下げられました。同じ排気量の自動車でも、初回登録年度によって税額が異なります。
また、排出ガス性能・燃費性能の優れた自動車に適用されるのが、種別割の『グリーン化特例』です。特例期間内に電気自動車・プラグインハイブリッド車などを新規登録した場合は、翌年の自動車税がおおむね75%軽減されます。
特例期間は、2026年3月31日までです。(2023年3月時点)
参考:自動車税種別割月割税額表(自家用)※令和元年10月1日以後初回新規登録|東京主税局
参考:令和5年度税制改正(車体課税の見直し及び延長)|経済産業省 自動車課
排気量別・自動車税一覧【重課版】
種別割のグリーン化特例により、環境への負荷が大きい車には、より重い税金が課せられることとなりました。新規登録をしてから13年以上経過したガソリン車・LPG車(ディーゼル車の場合11年以上)については、おおむね15%の自動車税が増額されます。
増額後の税額は、以下で確認しましょう。なお、以下の税率表は2019年9月30日以前の税額をもとに算出しています。
総排気量 | 税額 |
1L以下 | 3万3,900円 |
1L超~1.5L以下 | 3万9,600円 |
1.5L超~2.0L以下 | 4万5,400円 |
2.0L超~2.5L以下 | 5万1,700円 |
2.5L超~3.0L以下 | 5万8,600円 |
3.0L超~3.5L以下 | 6万6,700円 |
3.5L超~4.0L以下 | 7万6,400円 |
4.0L超~4.5L以下 | 8万7,900円 |
4.5L超~6.0L以下 | 10万1,200円 |
6.0L超 | 12万7,600円 |
増税の対象となる期間は、13年を経過した次の年度から廃車までです。
参考:自動車税(種別割)グリーン化特例|新潟県
参考:自動車税のグリーン化特例の概要|国土交通省
売却時に支払い済みの税金はどうなる?
年度途中で自動車を廃車にしたり売却したりした場合、自動車税の過払いとなります。払い過ぎた税金は還付されるのでしょうか?廃車・売却それぞれのケースを見ていきましょう。
年度途中で車を廃車にすると還付がある
年度途中で廃車手続きを行った場合、納め過ぎた自動車税は還付されます。還付のための特別な手続きは必要ありません。
廃車手続きが完了すると、運輸支局から各自治体に廃車の事実が伝えられます。廃車から1~2カ月半ぐらい後には還付通知書が送られてくるので、通知された金融機関で還付金を受け取りましょう。
還付の対象期間は、廃車手続きをした翌月からその年度の3月までです。還付額は、自動車税と同様に月割で計算されます。月をまたぐと還付額が減額されるため、なるべく早めの手続きがおすすめです。
年度途中で売却・譲渡したら買手側と要確認
自動車税が還付されるのは、抹消登録を行った場合のみです。売却・譲渡は『名義変更』となるため、還付の対象とはなりません。その年度の4月1日時点で、自動車を所有・使用していた人に納税義務があります。
買取業者に自動車を売却した場合は、自動車税額を上乗せして買い取ってくれるケースが多々あります。売却前に提示された査定で、残存期間分の自動車税が含まれているかどうか確認しましょう。一方、個人同士の売買では、自動車税の扱いは交渉次第となります。
留意したいのは、残存期間分の自動車税について、買手側には支払い義務がないことです。売却・譲渡の相手が業者・個人のどちらでも、自動車税を取り返せるとは限りません。
廃車にする2種類の方法もチェック
自動車税が還付される『抹消登録』には、『一時抹消登録』と『永久抹消登録』の2種類があります。それぞれの概要を見ていきましょう。
一時的に車を使用不可にする『一時抹消登録』
一時抹消登録とは、一時的に自動車の登録を凍結する手続きです。廃車とはいえ自動車をスクラップにする必要はなく、そのまま所有し続けられます。
手続きを行えば、自動車の所有者であっても自動車税の納税義務はありません。ただし、再び同じ車に乗りたくなった場合は、車検の受け直しとナンバープレートの再交付が必要です。
一時抹消登録は、「転勤などで長期間自動車を使わない」「自動車に乗ることはないが、廃車にはしたくない」などのケースや、「廃車にしようか迷っていて、しばらく考えたい」などのケースに選択されます。
注意点は、一時抹消登録では『自動車重量税(車検などで課される国税)』が還付されないことです。自動車税と自動車重量税の還付を受けられるのは、自動車を完全にスクラップにする『永久抹消登録』を選択した場合です。
車を完全に使用不可にする『永久抹消登録』
永久抹消登録とは、自動車のスクラップを伴う廃車手続きです。手続きには解体の証明が必要となり、自動車の解体後でないと手続きできません。一時的に使用を中断する一時抹消登録とは異なり、永久抹消登録は永久的に自動車を失うときに行われます。
税における永久抹消登録と一時抹消登録との違いは、永久抹消登録では自動車重量税も還付される点です。
自動車重量税は、自動車の車種・重量・年数などによって額面が異なり、車検証を交付される人に支払い義務があります。永久抹消登録をすると車両そのものがなくなるため、自動車重量税も還付の対象となるのです。
参考:No.7192 自動車重量税のあらまし|国税庁
参考:使用済自動車に係る自動車重量税還付申請書の記載の手引|国税庁