DIME MAGAZINE
コピーライターとして、テレビやラジオのＣＭをつくったり、企業のブランディングを手掛けてきたコピーライターの川上徹也さんはうまく伝わらないのは、あなたの考えが間違っているからではなく、伝え方次第で、生じることのなかった誤解やすれ違いをなくすことができる、人はもっとわかり合うことができると言います。川上さんがハーバードやスタンフォードなど世界中の研究から、日常に取り入れやすいものを選んでまとめた伝え方の法則を、著書「面倒なお願いでも、気持ちよく相手に届く伝え方は？人を動かす伝え方50の法則」から一部抜粋・再構成してお届けします。
「可能性」を感じさせる
人は、初対面の相手を評価するとき「実績」と「将来性」のどちらを重視すると思いますか？
スタンフォード大学のトーマラ博士らは、それを明らかにする研究を行いました。「大企業の役員に応募してきた」という設定で、被験者たちに、次の2人の人物について2～5年後の活躍を予想してもらいました。学歴はまったく同じ、顔写真などの外見的な情報は一切ありません。
どちらが、2～5年後にリーダーとして活躍できそうでしょうか？
A 関連分野の仕事で、実務経験が2年ある。
「リーダーシップ達成度テスト」の成績は92点。
B 関連分野の仕事で、実務経験がまったくない。
「リーダーシップ将来度テスト」の成績は92点。
現実的に見れば、実務経験があるAさんだと思います。
しかしこの研究では、まったく逆の結果が出ました。Bさんを評価する割合が高かったのです。
経験値はAさんのほうが優れているのに、意外にも「実績」より「将来性」を重視した人が多かったということです。
その理由についてトーマラ博士らは、「過去の実績はすでに起こったことであるが、将来性は不確かであるがゆえに興味をかきたてられやすいのだろう」と考察しています。
これは、新人オーディションやスカウトなどからも理解できます。たとえ実績がなくても、「将来性」を感じる要素があれば、人は強く惹きつけられるものなのです。
どんな人も、最初は実績なんてありません。だから実績がないうちは「将来性」を上手にアピールしていきましょう。採用試験なら、自分がその役職についたらどんなことができるかを伝えるのはいかがでしょうか。
このことは、商品やサービスを売るときにも応用できます。たとえ実績がなくても、将来の可能性を伝えることで、価値を評価してもらえるのです。
【まとめ】
実績がないうちは、「可能性」を最大の武器にする
☆ ☆ ☆
「最新の知見」や「新しい視点」のヒントが詰まった「面倒なお願いでも、気持ちよく相手に届く伝え方は？人を動かす伝え方50の法則」。やみくもに大きな声で叫んでも、伝わらない。相手に伝わるからこそ対話は成り立ちますし、そうでなければただのひとりごとになってしまいます。どうにかして、この気づきをわかりやすく役に立つ形で伝えられないかというところからこの本の制作は始まったそうです。伝え方を工夫することで、相手とのコミュニケーションがうまくいく可能性があるなら、手に取って学んでみる価値は十分あるのではと思います。
「面倒なお願いでも、気持ちよく相手に届く伝え方は？人を動かす伝え方50の法則」
著者／川上徹也
発行／株式会社アスコム
川上徹也
湘南ストーリーブランディング研究所 代表／コピーライター
大学時代、霊長類学や社会心理学の研究に没頭。世界中の論文との出会いを求めて図書館に通いつめ、狭いアパートの部屋を学術論文のコピーでいっぱいにして暮らす。「人の心を動かす」仕事に興味を持って、広告代理店に入社。大阪支社で暗黒の営業局時代を経て、29 歳で転局しCMプランナーに。しかしそこでも芽が出ず、会社を辞め何のあてもなく上京。フリーランスという名のフリーターをしながら通った広告学校の講師から、コピーライターとしての才能を見いだされ、TCC 新人賞を受賞。その後、フジサンケイグループ広告大賞制作者賞、広告電通賞、ACC賞などを多数受賞する。現在は、ブランドの魅力を物語にして伝える「ストーリーブランディング」という手法を確立し、企業や団体のマーケティング・アドバイザーとして活動。ジャンルの垣根を越えて、様々なものの魅力を伝え続けている。『物を売るバカ』『１行バカ売れ』（ 角川新書）、『ザ・殺し文句』（新潮新書）など著書多数。海外へも広く翻訳されている。
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