コピーライターとして、テレビやラジオのCMをつくったり、企業のブランディングを手掛けてきたコピーライターの川上徹也さんはうまく伝わらないのは、あなたの考えが間違っているからではなく、伝え方次第で、生じることのなかった誤解やすれ違いをなくすことができる、人はもっとわかり合うことができると言います。川上さんがハーバードやスタンフォードなど世界中の研究から、日常に取り入れやすいものを選んでまとめた伝え方の法則を、著書「面倒なお願いでも、気持ちよく相手に届く伝え方は?人を動かす伝え方50の法則」から一部抜粋・再構成してお届けします。
相手の名前をたくさん呼ぶ
出会ったばかりの異性と親しくなりたいとき、手軽で簡単な方法があります。それは、相手の名前を覚えて呼ぶという方法です。
クレアモント大学のクラインクらは、「初対面の男女ペアでの会話の実験」と称して、女子学生を集めました。
彼女たちを2つのグループに分け、初対面の他大学の男子学生と15分会話してもらいます。実は男性は実験の協力者で、それぞれのグループによって話し方を変えていたのです。
グループ① 男性が女性の名前を呼ばないで会話する
グループ② 男性がときどき女性の名前を呼んで会話する
会話終了後、女性たちに話した男性の印象を聞きました。
するとグループ①に比べてグループ②のほうが、2倍以上も相手のことを「フレンドリー」「社交的」「もう一度会いたい」と好印象を持ったのです。
このように、会話の途中に相手の名前を呼ぶことで「自分の印象がよくなる」ことを「ネームコーリング効果」と呼びます。
では、なぜこのような現象が起こるのでしょう?
まずは「承認欲求」が満たされるということがあげられます。人は自分の名前を呼ばれることで「個人として認めてもらえている」と感じるからです。
次に「返報性の原理」からも説明できます。
人は自分の名前を呼ばれることで「相手は自分に親しみを持ってくれている」と感じます。すると自分も無意識のうちに「相手に親しみを返さないと」と感じます。
さらに「ネームレター効果」もあります。
ベルギーの心理学者ジョゼフ・ヌッティンが提唱した理論で「人は無意識のうちに自分の名前で使われる文字に強い愛着を持っていて、同じ文字が使われる人や物に対して好意的に評価する傾向がある」というものです。
『人を動かす』で有名なアメリカの実業家デール・カーネギーも「世の中でもっとも耳に甘く響くよい音楽は、自分の名前の響きである」と語っています。それだけ人は、自分の名前を呼ばれるのを快く感じるものなのです。
あなたも異性と(もちろん同性とでも)親しくなりたかったら、相手の名前を覚えてできるだけ呼ぶようにしましょう。
ただし、不自然に名前を呼びすぎるとわざとらしく感じて逆効果になってしまうかもしれないので、その点には気をつけましょう。
【まとめ】
名前をたくさん呼んでくれる人には、いい印象を抱いてしまう
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「最新の知見」や「新しい視点」のヒントが詰まった「面倒なお願いでも、気持ちよく相手に届く伝え方は?人を動かす伝え方50の法則」。やみくもに大きな声で叫んでも、伝わらない。相手に伝わるからこそ対話は成り立ちますし、そうでなければただのひとりごとになってしまいます。どうにかして、この気づきをわかりやすく役に立つ形で伝えられないかというところからこの本の制作は始まったそうです。伝え方を工夫することで、相手とのコミュニケーションがうまくいく可能性があるなら、手に取って学んでみる価値は十分あるのではと思います。
「面倒なお願いでも、気持ちよく相手に届く伝え方は?人を動かす伝え方50の法則」
著者/川上徹也
発行/株式会社アスコム
川上徹也
湘南ストーリーブランディング研究所 代表/コピーライター
大学時代、霊長類学や社会心理学の研究に没頭。世界中の論文との出会いを求めて図書館に通いつめ、狭いアパートの部屋を学術論文のコピーでいっぱいにして暮らす。「人の心を動かす」仕事に興味を持って、広告代理店に入社。大阪支社で暗黒の営業局時代を経て、29 歳で転局しCMプランナーに。しかしそこでも芽が出ず、会社を辞め何のあてもなく上京。フリーランスという名のフリーターをしながら通った広告学校の講師から、コピーライターとしての才能を見いだされ、TCC 新人賞を受賞。その後、フジサンケイグループ広告大賞制作者賞、広告電通賞、ACC賞などを多数受賞する。現在は、ブランドの魅力を物語にして伝える「ストーリーブランディング」という手法を確立し、企業や団体のマーケティング・アドバイザーとして活動。ジャンルの垣根を越えて、様々なものの魅力を伝え続けている。『物を売るバカ』『1行バカ売れ』( 角川新書)、『ザ・殺し文句』(新潮新書)など著書多数。海外へも広く翻訳されている。