とにかく「シンプルでやさしい言葉」を使う
「誰かにほめられたい!」と思って文章を書くと、つい難しい言葉や言い回しを使おうとしてしまいませんか? 相手によく思われたいと思うほど、気をつかってあれこれ表現を考えるものです。
でも、それで本当に理解度や好感度が上がるのでしょうか?
プリンストン大学心理学部のダニエル・M・オッペンハイマーは、「長くて難しい言葉」を使った場合と、「シンプルでやさしい言葉」を使った場合とを比べたとき、文章の印象がどう変わるかを調べました。
その結果、同じ内容でも「シンプルでやさしい言葉」を使った文章のほうが知的だと思われ、著者への評価が高くなることがわかったのです。
つまり、難しい言葉を使うことが知的な印象につながるのではなく、「やさしい言葉」を使ったほうがむしろ知的に思われたというわけです。
これは、私たちの脳が「複雑な情報」を嫌い、「スムーズに処理できるシンプルな情報」を好むためだと考えられます。
ちなみにこれは、文章に限りません。社名や商品名、サービス名も、できるだけシンプルでわかりやすく、発音しやすいものにしたほうがいいようです。
前述したオッペンハイマーが、プリンストン大学心理学部のアダム・オルターと組み、社名の響きが株価に影響するかどうかを調べました。すると、株式市場で使われるアルファベット3文字の「ティッカー・コード」が発音しやすい会社の株価は、発音しにくい会社に比べて上がっていたのです。
この「発音しやすさ」をチェックするときは、次の5つの視点で見るのがおすすめです。
①目でチェック 文字で見たときわかりやすくバランスがいいか?
②口でチェック 声に出したとき言いやすいか?
③耳でチェック 耳で聞いたときスムーズで心地いいか?
④脳でチェック 特性がわかり、一度聞いただけで記憶してもらえるか?
⑤心でチェック その商品名が会社のカラーや品性等に合っているか?
このチェックで大丈夫なら、まずは第一段階クリア。脳に負担をかけないネーミングにできている可能性が高いでしょう。
【まとめ】
シンプルに表現するほど、知的だと思ってもらえる!
☆ ☆ ☆
「最新の知見」や「新しい視点」のヒントが詰まった「面倒なお願いでも、気持ちよく相手に届く伝え方は?人を動かす伝え方50の法則」。やみくもに大きな声で叫んでも、伝わらない。相手に伝わるからこそ対話は成り立ちますし、そうでなければただのひとりごとになってしまいます。どうにかして、この気づきをわかりやすく役に立つ形で伝えられないかというところからこの本の制作は始まったそうです。伝え方を工夫することで、相手とのコミュニケーションがうまくいく可能性があるなら、手に取って学んでみる価値は十分あるのではと思います。
「面倒なお願いでも、気持ちよく相手に届く伝え方は?人を動かす伝え方50の法則」
著者/川上徹也
発行/株式会社アスコム
川上徹也
湘南ストーリーブランディング研究所 代表/コピーライター
大学時代、霊長類学や社会心理学の研究に没頭。世界中の論文との出会いを求めて図書館に通いつめ、狭いアパートの部屋を学術論文のコピーでいっぱいにして暮らす。「人の心を動かす」仕事に興味を持って、広告代理店に入社。大阪支社で暗黒の営業局時代を経て、29 歳で転局しCMプランナーに。しかしそこでも芽が出ず、会社を辞め何のあてもなく上京。フリーランスという名のフリーターをしながら通った広告学校の講師から、コピーライターとしての才能を見いだされ、TCC 新人賞を受賞。その後、フジサンケイグループ広告大賞制作者賞、広告電通賞、ACC賞などを多数受賞する。現在は、ブランドの魅力を物語にして伝える「ストーリーブランディング」という手法を確立し、企業や団体のマーケティング・アドバイザーとして活動。ジャンルの垣根を越えて、様々なものの魅力を伝え続けている。『物を売るバカ』『1行バカ売れ』( 角川新書)、『ザ・殺し文句』(新潮新書)など著書多数。海外へも広く翻訳されている。