SDGsでビジネス・チャンスにつなげる
カウアイ島にはSDGsの新しい形と言える観光ビジネスもある。カウアイ島はかつて日系移民などによるサトウキビ栽培が盛んで、プランテーション文化を形成していた。
およそ200年前に建設された灌漑用水路跡が残るが、それを活用し、浮き輪に乗って水路を下るチュービング・アクティビティーを楽しめるようにしたのが、カウアイ・バックカントリー・アドベンチャー(Kauai Backcountry Adventures)だ。
北米でチュービング・アクティビティーと言えば、通常は川下りとなるため、水泳やハンドリングのスキルを要する。しかし、この歴史的水路は子どもでも足が着く程度の水深で、敷居が低い。
老若男女、浮き輪の上で流れに身を任せ、目に鮮やかな大自然の中をのんびりゆらゆら。緩急のバランスも良く、ウォータースライダーさながらに大興奮間違いなし。途中、いくつもの長いトンネルを通り、ちょっとした探検家気分を味わえる。
チュービングに使う浮き輪は米軍仕様の頑丈さ。穴にお尻をフィットさせ、取手をつかんで乗るスタイル
水路のスタート地点までは専用ワゴン車で移動。私有地を通り、世界有数の降水量を誇るワイアレアレ(Waiʻaleʻale)山などの展望スポットにも立ち寄る
カウアイ島では食もサステナブル。農家による青空市、ファーマーズ・マーケットは島内のどこかで毎日開催されており、オーガニック栽培の新鮮な野菜や果物ほか、食べ歩きにぴったりのご当地グルメが充実。
そして、コロナ禍を経てハワイ通がひいきにするのが、ローカルの味覚をそろえるフード・トラックだ。
カウアイ島ではカパア(Kapaʻa)、ハナレイ(Hanalei)を中心に、コロア(Kōloa)、リフエ(Līhuʻe)、ポイプ(Poipu)などほとんどの街にフード・トラック・パークが見られ、人気レストランが支店代わりにフード・トラック・ビジネスに乗り出す例も目立つ。
その背景には、西海岸を中心に北米からの旅行者が主流となり、カリフォルニアなどから多くのリモート勤務者がワーケーションで訪れ、「カリフォルニア化」が進んだという事情もあろう。
今や全米に広がるフード・トラック文化だが、その発祥はカリフォルニアと言われ、一大ブームとなってから早15年が経つ。カウアイ島のフード・トラックにも、ベジタリアンやオーガニック、おしゃれカフェ系のラインナップが増え、観光客はもちろん、地元の人もよく利用しているようだ。
カウアイ島の中でもカパアはフード・トラックの選択肢が豊富。青い空と海を眺めながらのランチは最高だ
ハワイ名物、スパムむすびやポキ丼を、おしゃれなカフェ・スタイルで提供するフード・トラックも登場している
カウアイ島の夜は早い。日没とともにフード・トラック含め、多くの店が閉まるため、その前に夕食の確保をお忘れなく。そんな独特の島時間も、省エネルギーの意味でエコと言えるかもしれない。
雨が多く、1日のうちで降ったり止んだり、そして晴れたりの天候も、ワーケーションで仕事がはかどる秘訣か。
街から山から、野生化したニワトリがヒヨコを何羽も従えながら島中を闊歩しているため、「チキン・アイランド」との異名も。駆除するのではなく、むしろ、それもカウアイ島の魅力と、観光客にアピールしているのもユニークだ。これも環境との共存、ローカル・エコノミーの一環なのであろう。
何より、女神が降らすと伝わる豊かな雨の恵みで緑あふれるカウアイ島は、足を踏み入れた瞬間から非日常感たっぷり。これまでに見たことのない景色の連続で、ハワイのほかの島とは全く異なる独自の波動のようなものを感じる。
新しくも懐かしい、今のカウアイ島の風景をぜひその目で確かめてみて欲しい。
あまりのニワトリの数に最初は面くらうかもしれない。島のマスコット的存在となった今は、ニワトリをモチーフにした土産物も多く売られ、新たなビジネスを生んでいる
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文・写真/ハントシンガー典子
アメリカ・シアトル在住。エディター歴20年以上。現地の日系タウン誌編集長職に10年以上。日米のメディアでライフスタイル、トレンド、アート、グルメ、カルチャー、旅、観光、歴史、バイリンガル育児など、多数の記事を執筆・寄稿する傍ら、米企業ウェブサイトを中心に翻訳・コピーライティング業にも従事。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」会員。