コピーライターとして、テレビやラジオのCMをつくったり、企業のブランディングを手掛けてきたコピーライターの川上徹也さんはうまく伝わらないのは、あなたの考えが間違っているからではなく、伝え方次第で、生じることのなかった誤解やすれ違いをなくすことができる、人はもっとわかり合うことができると言います。川上さんがハーバードやスタンフォードなど世界中の研究から、日常に取り入れやすいものを選んでまとめた伝え方の法則を、著書「面倒なお願いでも、気持ちよく相手に届く伝え方は?人を動かす伝え方50の法則」から一部抜粋・再構成してお届けします。
まずは認めて、自分以外のせいにしない
最近、政治家や芸能人の不祥事が相次いでいます。初動のFAXでのコメントやTwitterでのつぶやき、あるいは会見の内容が火に油を注ぎ、SNSなどで炎上してしまう案件も少なくありません。
もちろん、これはあなたにも起こり得ることです。
あきらかに失敗をしてしまったとき、どのようにすればイメージを回復できるでしょうか? たとえば自分もしくは自分たちの組織の責任にするのがいいのか? それとも外部的な環境のせいにするのがいいのか?
ミシガン大学のフィオナ・リーらは、それをたしかめるために、架空の会社の「年次報告書(昨年度の業績不振の原因を説明したもの)」を2種類用意し、227名の大学生に分けて読ませました。報告書は次のようなものでした。
A 本年度における予想外の減収の理由は、主に、当社が昨年度に下した戦略的判断によるものである。(中略)また経営陣は国内外の要因から生じた不測の事態に対して準備が十分でなかった。
B 本年度の減収は、主に国内外における景気の予想外の悪化と、国際競争の激化によるものである。(中略)これらの予想外の状況は、連邦政府の法律が原因であり、当社が制御できない問題であった。
Aは減収の原因を自社の責任であると認める一方、Bは外部環境のせいにして、自らの責任は認めないというものでした。すると報告書Aを読んだグループのほうが、多くの点でその会社に好感を持つことがわかりました。つまり、自社の責任をきちんと認めた企業のほうが、好感度が高かったのです。
これは、さまざまな不祥事の会見などを見ても明らかです。最初にきちんと謝り、原因を解明する約束をし、「今後二度と起こらないようにする」と語った場合、そこまで炎上しないことが多いものです。一方、責任逃れをして、外部環境のせいにすると、炎上する可能性が高まります。
失敗してしまったとき、人はつい責任逃れをしたくなってしまいます。しかし大切なのは失敗をきちんと認め、今後どういう対策をたてるのかを真摯に伝えることです。
自分以外の環境のせいにしていると、信用をなくしてしまいます。何かミスや不手際があったときこそがむしろチャンスだと考え、しっかりと失敗を認めるようにしましょう。
【まとめ】
失敗をしっかり認めることで、ピンチをチャンスに変えられるかも
☆ ☆ ☆
「最新の知見」や「新しい視点」のヒントが詰まった「面倒なお願いでも、気持ちよく相手に届く伝え方は?人を動かす伝え方50の法則」。やみくもに大きな声で叫んでも、伝わらない。相手に伝わるからこそ対話は成り立ちますし、そうでなければただのひとりごとになってしまいます。どうにかして、この気づきをわかりやすく役に立つ形で伝えられないかというところからこの本の制作は始まったそうです。伝え方を工夫することで、相手とのコミュニケーションがうまくいく可能性があるなら、手に取って学んでみる価値は十分あるのではと思います。
「面倒なお願いでも、気持ちよく相手に届く伝え方は?人を動かす伝え方50の法則」
著者/川上徹也
発行/株式会社アスコム
川上徹也
湘南ストーリーブランディング研究所 代表/コピーライター
大学時代、霊長類学や社会心理学の研究に没頭。世界中の論文との出会いを求めて図書館に通いつめ、狭いアパートの部屋を学術論文のコピーでいっぱいにして暮らす。「人の心を動かす」仕事に興味を持って、広告代理店に入社。大阪支社で暗黒の営業局時代を経て、29 歳で転局しCMプランナーに。しかしそこでも芽が出ず、会社を辞め何のあてもなく上京。フリーランスという名のフリーターをしながら通った広告学校の講師から、コピーライターとしての才能を見いだされ、TCC 新人賞を受賞。その後、フジサンケイグループ広告大賞制作者賞、広告電通賞、ACC賞などを多数受賞する。現在は、ブランドの魅力を物語にして伝える「ストーリーブランディング」という手法を確立し、企業や団体のマーケティング・アドバイザーとして活動。ジャンルの垣根を越えて、様々なものの魅力を伝え続けている。『物を売るバカ』『1行バカ売れ』( 角川新書)、『ザ・殺し文句』(新潮新書)など著書多数。海外へも広く翻訳されている。