「なにかある、きっとある」をコンセプトに、生活雑貨専門店ならではの独自の仕入れで消費者からの支持を集めてきたロフト。「ロフト コスメフェスティバル 2023SS-1st-」を開催し、コスメ事業にも注力している。無数のコスメを取り扱うロフトから見た、2023年春夏に注目のコスメトレンドを4つ紹介しよう。
1.計画が立てやすく、新規参入が多い「プロデュースコスメ」
低価格・高品質。かわにしみきさんがプロデュースする「muice(ミュアイス)」。
「大きな潮流の中で、最も注目のトレンドはプロデュースコスメです」。そう話してくれたのは、株式会社ロフト・バイヤーの工藤恭郁さん。プロデュースコスメとは芸能人やYouTuberなど、求心力のある有名人がプロデュースしたコスメを示す。
2022年には辻 希美さんや青山テルマさん、2023年には美容系動画クリエイターのかわにしみきさんがプロデュースするコスメブランドがデビューするなど、ブランド数がここ数年で急増。特に2021年に誕生した指原莉乃さんプロデュースコスメブランド「Ririmew」はその質の高さからファン以外にも注目を集め、継続して人気となっている。
ただし、単に有名人にプロデュースしてもらえば売れるのかと言うと、そうとも限らないと工藤さんは話す。
株式会社ロフト 商品本部 健康雑貨部 バイヤーの工藤恭郁さん。
工藤さん「プロデュースコスメは化粧品メーカーだけではなく、全く別の事業をしている企業がOEMで商品を製造するケースもあります。つまり、PR会社など異業種からの新規参入のハードルが低い。いつ発売するか、どういったキャンペーンを打つか、どこで何を先行販売するかなどの計画を事前からしっかり立てており、その点もプロデュースコスメがトレンドとなっている理由の一つです。
ただし、ロフトでもさまざまなプロデュースコスメを取り扱ってきましたが、ブランドの入れ替わりの激しさを感じています。限られた売り場で常時30種類前後のプロデュースコスメが代わる代わる並ぶイメージです。モノが良いだけでは売れない時代のため、特にSNSのマーケティング戦略を有効活用している企業が成功しています」
2.アフターコロナに向けてメイクを楽しむ人が増加
爆発的な人気となっている「TIRTIR」のファンデーション。
メイク用品では化粧下地、ファンデーションなどのベースメイクの売り上げが2023年2月、前年同月比で200%を超えるほど順調。コロナ禍で外出の機会が減ったことで一度消費が落ち込んだものの、近づくアフターコロナでメイクを楽しむ人が増えていることが、顕著に現れている。
特にロフトのベースメイクの売り上げを押し上げたブランドが「TIRTIR(ティルティル)」。韓国で人気のインフルエンサーが手がけたプロデュースコスメで、マスクにつきにくいファンデーションがコロナ禍で多くの女性の心を掴んだ。ベタつかず、電話した時にスマートフォンにもつきにくいなどメリットが多いことから、マスクを着ける機会が減る今後も人気の継続が予測される。
エッジの効いたカラーで盛りメイクができる「&be」の新パレットアイシャドウ。
ファッションで2000年前後のトレンドが注目されているように、メイクにも同様の傾向が見られる。ロフトでは目を大きく見せるためのブラックマスカラの売り上げが伸び、血色感を高めるチークの新作も数多く登場。近年はふんわりとした抜け感のあるメイクが主流だったが、2000年前後を実際に生きてきた世代には意外にも思えるようなエッジの効いた商品が注目されているのだ。再流行しているミニスカートを身につけ、目を強調させた「盛りメイク」をする若者も増えるだろう。
3.「濃度」も重要。成分訴求の美容液がトレンド
(左)化粧品で配合できる最高濃度のレチノールが配合された、「クオリティファースト」の新美容液。
スキンケアでは「美容液」の売り上げが2023年2月、前年同月比で150%増加。化粧水・乳液の基本スキンケアだけではなく「たるみ」「美白」など、より積極的に、具体的に悩みを解決したいという人が増加しているのだ。これはマスクを外す機会が増え、隠せなくなった素肌の悩みに向き合い始めた消費者の変化も推測される。
美容液のトレンドでユニークなポイントが「成分推し」。しみ・そばかすを防ぐ「ビタミンC」やハリが出る「レチノール」など、ブランド名や商品名ではなく、「成分」を全面に推す美容液が増加している。また、その成分がどれほど入っているかという「濃度」も重要視されており、「高濃度レチノール配合」と訴求する商品も多く見受けられる。ネットやSNSで情報が手に入りやすい時代だからこそ消費者が注目する点が深くなっており、自分で調べ、品質が高いと納得できる商品が選ばれているのだ。
工藤さん「少し前に肌荒れを防ぐシカ成分が流行しましたが、その流れを汲んで成分訴求をしたスキンケア商品がヒットしています。特にSNSで成分訴求の結果、バズった商品が売れているという印象です」
4.ヘアケアは細やかなニーズを拾った商品が人気
ひと塗りで前髪やアホ毛を整えるプリュスオーの「ポイントリペア」。
ヘアケアでの注目は「前髪」や「アホ毛」に特化したスタイリング剤。ヘアケア全体を見た時に外出自粛によって消費が落ち込んでいたが、アフターコロナに向けて回復傾向にあり、中でも「ポイントで使えるスタイリング剤の売り上げが大きく伸長しています」と工藤さんは話す。
特にZ世代は「前髪命」と言っても過言ではないほど前髪にこだわる傾向があり、SNSでは「前髪が変だから学校に行きたくない」という投稿すら見られる。人気はマスカラタイプの小さなスタイリング剤。「ハードスプレーで全体を固めてしまえば良いのでは」と思ってしまいがちだが、あくまでもナチュラルな印象はキープしたいというのが女心。全体はふんわりとさせ、前髪の一部分や飛び出るアホ毛だけを固定させることが、今の若者に重要視されている。
SNSマーケティングを有効活用し、アフターコロナを見据えた商品が人気となっている2023年のコスメトレンド。新型コロナウイルスが5類に移行予定で過渡期を迎える今、揺れる消費者のニーズに合致したコスメがより求められるだろう。マスクを外した後の自分に、いかに自信を持てるかーーそんなコスメが、注目を集めそうだ。
取材・文/小浜みゆ