都市計画税とは、市街化区域内の土地・家屋に課せられる地方税です。課税対象は市区町村の都市計画事業にもとづいて決められるため、同じ自治体でも納税義務がある人・ない人が混在します。都市計画税の詳細や計算方法、固定資産税との違いを紹介します。
都市計画税の内容と対象となる人とは
都市計画税は、税金の使途が定められている『目的税』です。都市計画税の概要や、課税対象となる要件を紹介します。
市区町村を発展させるための税金
都市計画税は、各自治体の『都市計画事業』『土地区画整理事業』などを実施するために集められる税金です。どのエリアを事業対象とするかの決定権は自治体にあり、同一市区町村内でも都市計画税の課税対象となる地域・ならない地域があります。
都市計画税のルーツは、大正時代に創設された『都市計画特別税』です。この税金は1940年に『都市計画税』という地方税となり、1956年に現在の形での運用がスタートしました。
各自治体の都市計画・土地区画整理は、国が定める『都市計画法』にもとづいて行われます。都市計画税によって集められた税金は、土地の効率的な利用や公共施設の整備、生活・交通インフラの整備など、自治体発展のために使われる決まりです。
参考:都市計画税の課税実態と人口減少期の都市計画事業を考慮した課税手法に関する研究|公益社団法人 日本都市計画学会
参考:総務省|地方税制度|都市計画税
参考:都市計画制度|国土交通省
市街化区域に土地・家屋を持つ人が納める
都市計画税の対象となるのは、『市街化区域』に不動産を持つ個人・法人など全てです。都市計画法第7条第2項では、市街化区域を「すでに市街地を形成している区域及びおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域」と定義しています。
出典:都市計画法 第7条 第2項 | e-Gov法令検索
すなわち市街化区域とは、自治体の都市計画にのっとって開発されたエリアや、今後開発が予定されているエリアと考えればよいでしょう。
総務省の発表によると、2020年度の都市計画税納税者は、土地で約2,220万人・家屋で約2,768万人でした。
なお、開発が進められる市街化区域に対し、開発行為・建築行為が抑制されているのが『市街化調整区域』です。土地の使用・住宅の建築には厳しい制限があり、市街化区域とは区別されます。
参考:総務省|地方税制度|都市計画税
参考:市街化区域と市街化調整区域〔区域区分〕|国土交通省
市街化区域・市街化調整区域を判断するには
購入したい土地が、市街化区域・市街化調整区域のどちらに該当するのかを調べる方法としては、『物件の用途地域をチェックする』『自治体の都市計画図を確認する』などがあります。
用途地域をチェックするのがおすすめなのは、具体的な物件を調べたい場合です。物件情報の『用途地域』の欄に『第1種住居』『商業』などと書かれていれば、その物件は市街化区域であると判断できます。
一方、自治体の都市計画図をチェックすれば、より広範囲な都市計画の概要が分かります。『○○エリアの市街化区域・市街化調整区域を知りたい』という場合におすすめです。
都市計画図は自治体の役所に行けば確認できますが、近年はインターネット上で開示されているケースも多々あります。手間なく都市計画図を確認したいなら、まず『○○市(区)都市計画図』で検索してみましょう。
参考:みんなで進めるまちづくりの話-国土交通省
参考:市街化区域・市街化調整区域又は用途地域などを知りたいときは/茨城県
都市計画税と固定資産税の違いは?
都市計画税は目的税、固定資産税は普通税に分類されます。両者は混同されがちですが、税金の種類や詳細は同じではありません。両者の違いについて、詳しく見ていきましょう。
税金の支払い義務を負う人の違い
両者の違いとしてまず挙げられるのが、納税義務者の違いです。都市計画税は、毎年1月1日時点で市街化区域内に土地・建物などを所有している、個人・法人を納税義務者としています。
これに対し固定資産税は、毎年1月1日時点で固定資産を所有している個人・法人に課せられる税金です。固定資産の所在地を問わず、全ての固定資産所有者に納税義務があります。
なお注意したいのは、都市計画税が全ての自治体で導入されているわけではない点です。例えば、青森県青森市や千葉県浦安市は、市街化区域に土地・建物を持っている人も非課税です。(2023年3月時点)
参考:総務省|地方税制度|固定資産税の概要
参考:総務省|地方税制度|固定資産税
参考:市民の声 固定資産税の税率について
参考:都市計画税について知りたいのですが|浦安市公式サイト
税率と課税対象の違い
都市計画税は『制限税率』が適用され、『上限0.3%』と定められています。税率の決定権は各自治体にありますが、0.3%を超えることは法律で認められていません。自治体によって、上限の0.3%を導入しているところ、0.2%を導入しているところなどさまざまです。
一方、固定資産税の税率は『標準税率』です。自治体の税率は基本『1.4%』に設定されていますが、1.4%以上としても法律には抵触しません。自治体によっては、1.4%以上の税率を設定しているところもあります。
また、都市計画税が『償却資産』を課税対象としない一方で、固定資産税では償却資産も課税対象です。償却資産とは、土地・家屋に当てはまらない、事業用として使える資産を指します。
例えば、事業用の機械・設備・大型特殊車両などを持っている人は、都市計画税の納付が不要でも、固定資産税の納付は必要です。
参考:建設産業・不動産業:土地の保有に係る税制 – 国土交通省
参考:固定資産税(償却資産) | 税金の種類 | 東京都主税局
都市計画税はいくら?いつまでに払う?
都市計画税の計算方法は、国によって定められています。市街化区域に土地・家屋がある場合、どのくらいの納税額となるのでしょうか?納税額の計算方法と納付時期を紹介します。
都市計画税の計算方法
都市計画税の計算式は『都市計画税額=課税標準額×税率』となります。
これをもとに、『都市計画税率0.3%の自治体の市街化区域に、時価2,000万円の宅地を所有していたケース』の都市計画税額を計算してみましょう。
まず課税標準額とは、『固定資産評価基準』にもとづいて算定された土地・家屋の価格です。宅地については、地価公示価格などの70%を目安に評価を行うこととされています。
よって、時価2,000万円の宅地の課税標準額は、70%に相当する1,400万円と仮定することが可能です。これを都市計画税の計算式に当てはめると、『1,400万円×0.3%=4万2,000円』となります。
すなわち、税率0.3%の自治体の市街化区域に時価2,000万円の宅地を所有していた場合、都市計画税は4万2,000円と計算することが可能です。ただし特例措置が適用される場合、納税額は上記の金額よりも低くなります。
参考:7割評価の意義は何ですか。|船橋市公式ホームページ
参考:総務省|地方税制度|都市計画税
納税通知書が届いたら納付書で支払う
おおむね4~6月の間に、各自治体は都市計画税額を明記した納税通知書・納付書を発送します。これらを受け取った人は、一括または4期分割で都市計画税を納めなければなりません。また、同時期に固定資産税の納付書も送られるため、併せて確認・納付が必要です。
都市計画税の納期は、各自治体によって異なります。例えば、2022年度の東京都の納期は、以下のとおりに定められました。
- 第1期:2022年6月1〜6月30日まで(納期限 6月30日)
- 第2期:2022年9月1〜9月30日まで(納期限 9月30日)
- 第3期:2022年12月1〜12月27日まで(納期限 12月27日)
- 第4期:2023年2月1〜2月28日まで(納期限 2月28日)
詳細は自治体によって異なるため、不安な場合は直接問い合わせることをおすすめします。