冷蔵庫の最新テクノロジーで最も大きいトピックスは、スマホアプリやセンサーなどを駆使して庫内の食材をユーザーが把握できるようにすること。各メーカーとも工夫を凝らすアプローチは様々で、いずれも社会的な課題になっている〝フードロスの削減〟にもつながるものばかりだ。家電に詳しいジャーナリスト・大河原克行さんの分析を交えながら、それぞれの方向性の違いについて解説しつつ、今後の冷蔵庫について占う。
ジャーナリスト 大河原克行さん
IT業界の専門紙「週刊BCN」の編集長を経て、フリーランスとして独立。IT産業を中心に白物家電分野も含めて幅広く取材。雑誌やWebなど様々なメディアで執筆している。
■ これまでの冷蔵庫にも採用されてきた食材を使い切る工夫
「そもそも冷蔵庫は食品を長期保存するための家電製品。これまでには、チルド室やパーシャル室を採用し、野菜や肉などを長期間おいしく保存するために温度・湿度の自動調整機能を搭載するなど、フードロスにつながる機能の進化を続けてきました」
■ フードロスの削減につながる最新冷蔵庫の様々な提案
「スマホアプリを活用するものが多く、パナソニックと日立は買い物先で庫内の在庫を確認するのに重宝します。ツインバードは扉の外から中身が透けて見えるので、その日の献立を考えやすい。三菱電機はAIで庫内の整頓を促す工夫が実にユニークです」
■ 今後考えられるフードロス対策機能のさらなる進化
「冷蔵庫はライフステージによって使い方が変わり、庫内に置かれる食材も世代によって様々です。今後は、そもそも食材を買いすぎないようライフステージに合わせて選べるラインアップの多様化や、効率よく食材を使い切れる工夫も進むかもしれません」
フードロス削減のアプローチ【1】スマホアプリで庫内をチェック
たまごの数をスマホで確認!
「たまごの個数などを、外出先からでもスマホアプリで確認できる〝ストックマネージャー機能〟を備えています。『たまごの賞味期限を過ぎていた』『買い忘れた』といった〝うっかりミス〟が防げます」(大河原さん)。このほかにも、パナソニックの最新冷蔵庫では、冷凍食品を、おいしさを守りながら約1か月間の保存を可能にする「うまもり保存」を採用。気象情報との連携で停電の危険がある場合には、自動で予冷運転を開始し、停電時の保冷時間を約2倍に長続きさせる心強い機能も。食品ロスを防ぐ多彩な機能を搭載している。
パナソニック『「はやうま冷凍」搭載冷蔵庫 NR-F659WPX』
オープン価格(実勢価格約39万6000円)
スピーディーに食材を冷凍し、解凍する際に〝うまみ成分〟が流出してしまうのを抑える「はやうま冷凍」などの新機能も充実。容量は650L。
専用トレイにのせる
たまご、ビール、牛乳といった頻繁に消費する食材を付属の重量検知プレートにセット。定期的に重さを量り、その結果がアプリに反映される。
スマホで確認する
食材の残量は専用アプリで見やすく表示。買い物の際に残りの量がわかるから、無駄な重複購入を減らせる。
消費期限をアプリ通知でチェック
重量検知プレートにたまごを置き、アプリで食材の消費期限を設定しておくと「使い忘れ防止」の通知がスマホに届く。うっかり食べ損ねてしまう心配もない。
残り食材を使ったレシピをアプリがレコメンド!
食材を収納時に専用アプリに登録しておけば、賞味期限が切れる前に使い切るメニューを提案。食材の登録は専用アプリまたは冷蔵庫で行なえる。「冷蔵庫本体の音声認識によって、食材を登録できるのが便利。活用しやすい機能です」(大河原さん)。使い切るメニューは同社の『ホットクック』『ヘルシオ』にも対応するため、併わせて使えば料理がはかどる。
シャープ『プラズマクラスター冷蔵庫 SJ-GK50K-T』オープン価格(実勢価格約42万6800円)
冷却ファンの回転数を高めて冷凍室下段の冷却速度を向上する「快速冷凍」も採用。素早く冷凍して食材をおいしく長持ちさせられる。容量は504L。
買い物の時に庫内の様子がわかる!
本体上部にカメラを搭載。ドアを開けるたびに冷蔵室内を撮影し、スマホアプリで確認できる。「買い物の際『あれ? 何が残っていたっけ?』と思った時にチェックできるのが便利。残っている食材を有効活用しやすくなります」(大河原さん)。アプリで確認したい食材はカメラに写りやすい室内のスペースに置くなど、工夫すればより便利に使えるようになる。
日立『カメラ付き冷蔵庫 R-HXCC54S』オープン価格(実勢価格約33万円)
冷蔵室全体を約2℃に保つ「まるごとチルド」や、-1℃で肉や魚を凍らせずに保存する「特鮮氷温ルーム」など保鮮機能が充実している。容量は540L。