ハーバードの研究員たちは、困難なミッションを達成するため、まだ、発見されていない「価値」に到達するために日々、研究を続けています。そこで働く研究員たちが重要視しているある習慣。それは、「1日5分好奇心を刺激し、思考の固定化を避ける」「どんな時でも、新たな発見を求める」「チームや同僚の助けを得て、日々前進しようとする」といったことです。
ハーバードでは、これらの習慣を、「なんとなく」重要視しているのをではありません。一言でいうなら、「脳が冴えた状態をキープする」ための習慣として大切にしているのです。脳が冴えた状態をキープできるとどんな時でも思考が止まらなくなります。ビジネスから日常のモヤモヤまであらゆることがスムーズに運ぶようになるのです。
本記事ではハーバード大学の医療機関に在籍し、多くのプロジェクトを通じて学んできた脳の使い方を紹介する川﨑康彦氏の著書「ハーバードの研究員が教える脳が冴える33の習慣」からビジネスパーソンが仕事に使える「脳が冴える33の習慣」を抜粋、再構成してお届けします!
自分の感情と向き合う4つの質問と3つの置き換え
イライラしたり、緊張したりして、感情が高ぶると、冷静に考えることが妨げられて、私たちが本来持っている能力を発揮できなくなります。このように感情で選択したり決断したりしたことは、ほとんどが成功と呼ばれる方向に導かれず、後で後悔することになりかねません。
ここではもう1つ、扁桃体に働きかけて、感情をコントロールするメソッドを紹介します。それは、1人で自分の気持ちを問いつめていくというものです。
私は、この方法をロサンゼルスで行われたバイロン・ケイティ氏の「ザ・ワーク」というセミナーを受講した際に知りました。
まず、目を軽く閉じて、何か、過去にとても傷ついた、トラウマとなっている感情を思い出してみてください。またその感情が生まれた体験を、できるだけありありとイメージしてみてください。その経験を呼び起こします。
例えば、「私は上司に怒っている。なぜなら、上司は私の不平不満ばかりを言っているから」というイメージに対して、次の質問を投げかけてみてください。
1.それは本当ですか?
2.絶対にそうだと言い切れますか?
3.それが起こったときに、あなたはどういう反応をしますか?
4.この状況がなければ、あなたはどう感じますか?
そして、そんな気持ちを抱いている自分の姿を、上から眺めるかのように観察してください。ここで重要なのは、何かに気づくということです。
次に、「上司は私の不平不満ばかりを言っている」という「理由」の一部を置き換えて、次のA、B、Cの3つの文章を作ってみます。
A.「私は私の不平不満ばかりを言っている」というように、主語の「上司」を「私」に置き換え、実例を出す
B.「私は上司の不平不満ばかりを言っている」というように、主語を入れ換えて、実例を出す
C.「上司は私の不平不満をまったく言わない」と、否定文に置き換え、実例を出す
こうして自分が感情的になっていることに対して、ほんの少し視点を変えてみるのです。すると最後は、上司が私に対して不満を持っていたのではなく、自分自身が不平不満を言っているから、上司は私に対して不平不満ばかりを言うことに気がつくこともあり、感情が安定していきます。
※詳しい内容については次のURLを参照してください。
https://thework.com/sites/nihongo/
実際の「ザ・ワーク」のセミナーでは、2人一組になって感情と向き合いますが、ここでは1人で感情と向き合う方法にアレンジしました。
実況中継しているうちに冷静さを取り戻すことができる
次に、実況中継で感情をコントロールするというメソッドをご紹介しましょう。
その方法は、非常に簡単です。感情が乱れていると感じる際に、自分に対して「今の心境はどうですか?」「それは本当ですか?」などと問いかけ、それに対して実況中継風に答えるだけです。
これを習慣化すると、感情が揺さぶられるような事態が起きたときでも、冷静さを取り戻すことができるようになります。
例えば、得意先から理不尽な注文がきたときや、上司からできそうもないような仕事の指示を受けたときを想定してみましょう。
【問いかけ1】「今の心境はどうですか?」
実況中継の例 「今、私は、得意先(上司)のむちゃな注文に猛烈に腹が立っています」
【問いかけ2】「それは本当ですか?」
実況中継の例「そんなのあったりまえじゃん。そんなむちゃくちゃな注文、できるわけないだろ。『できるもんならお前がやってみろ!』と言ってやりたい」
というように、自分が今置かれている状況と、それに対して持っている感情を臨場感たっぷりに説明してみましょう。そして最後に、
【問いかけ3】「それは絶対に本当だと言い切れますか?」
実況中継の例「あれっ?? ちょっと待てよ。『絶対に』と言われたらそうでもないのかもしれない。もしかしたら得意先は、自分を信頼してこれだけのことをお願いしてくれているのかも。『自分の成長のために』と願って、きついことを言っているとしたら……」
実況中継をしながら、自分の内なる心と会話をすることで、その感情が思い込みだということに気づき、逆に得意先に感謝の気持ちまで出てくることもあります。
実況中継の例の続き「明日、『いつもありがとう』って感謝の気持ちを伝えよう。何かおみやげでも持っていくかな?」「明日からが楽しみ。なんかワクワクしてきたよ!」
そもそも感情が高ぶっているときには、冷静に思考できない状態です。このトレーニングは、逆に冷静に自分の考えを言葉にするときに働く脳のブローカ野の部分を積極的に使うことで、扁桃体を平静に戻そうというものです。
人は自分のことは分かっているようで、よく分かっていないもの。自分でなかなか感情がコントロールできないとき、少しだけ意識を変えて、客観的な視点で自分実況中継に取り組んでみてください。自分を知るための手がかりとなり、深遠なる自分自身に出会える機会となるでしょう。
鳥の目になった気分で、あなたという世界を見てみましょう。
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いかがでしょうか? ビジネスも自分の成長も、プライベートなこともすべての「源」は脳です。脳の活用の仕方をさらに知りたい方はぜひ、「ハーバードの研究員が教える脳が冴える33の習慣」で紹介されている脳が冴える33の習慣を実践して自分らしい人生を発見してみてください。
「ハーバードの研究員が教える脳が冴える33の習慣」
著者/川﨑康彦
発行/株式会社アスコム
https://www.ascom-inc.jp/books/detail/978-4-7762-1270-6.html
川﨑康彦
医学博士。脳科学者。元ハーバード大学医学大学院研究員(2003~2008年)。専門は神経生理学。佐賀大学医学部大学院神経生理学博士課程卒業。中国医科大学(旧満州医科大学)医学部卒業。中国では、東洋医学と西洋医学の両方を学ぶ。その後、これまでの研究成果を買われ、ハーバード大学医学部ブリガム・アンド・ウィメンズ病院麻酔科の研究員として招かれる。在籍中に、論文がネイチャー関連誌にも掲載される。日本に帰国後は、医学博士、理学療法士、カウンセラーとして運動、睡眠、痛みなどに対し、多方面からの知識でアプローチしている。現在は、チャレンジ、感動、旅を通して「多様な脳の共存、共感、共鳴を通して個々の意識と集合意識の成長」をテーマに研究活動を展開し、それらを通して社会に貢献していくコミュニティIBTA(Impact your Brain and Tuning them All)実現のための活動のほか、脳の研究とハーバードでの経験から得た、固定概念を覆して生き方を変えるためのメソッドをオンラインサロンで伝えている。