ハーバードの研究員たちは、困難なミッションを達成するため、まだ、発見されていない「価値」に到達するために日々、研究を続けています。そこで働く研究員たちが重要視しているある習慣。それは、「1日5分好奇心を刺激し、思考の固定化を避ける」「どんな時でも、新たな発見を求める」「チームや同僚の助けを得て、日々前進しようとする」といったことです。
ハーバードでは、これらの習慣を、「なんとなく」重要視しているのをではありません。一言でいうなら、「脳が冴えた状態をキープする」ための習慣として大切にしているのです。脳が冴えた状態をキープできるとどんな時でも思考が止まらなくなります。ビジネスから日常のモヤモヤまであらゆることがスムーズに運ぶようになるのです。
本記事ではハーバード大学の医療機関に在籍し、多くのプロジェクトを通じて学んできた脳の使い方を紹介する川﨑康彦氏の著書「ハーバードの研究員が教える脳が冴える33の習慣」からビジネスパーソンが仕事に使える「脳が冴える33の習慣」を抜粋、再構成してお届けします!
固定観念のない会話は想像以上のアイデアを生む
人の観念は、長い年月をかけて固定化して、脳の使い方をパターン化します。固定観念を持つと、人の脳は自由に物事を発想できなくなってしまいます。
脳は柔軟どころか、頑固な脳になってしまうというわけです。よく言えばこだわり、自分のポリシーを持った人というように言えますが、選択や決断が制限され、チャンスを活かすことがなかなかできません。
こうした凝り固まった脳を切り替えるのは容易ではありません。しかし、いったんパターン化されてしまったとしても、脳に新たなネットワークを作るトレーニングは、どの年齢になってからでも遅いということはありません。
この章では、私自身も行っているトレーニング方法を紹介していきましょう。最初のトレーニングは、子どもと真剣に会話を交わすことです。
自分よりも知識や経験が乏しい子どもの動きを見ているだけでは、とても脳のトレーニングにはならないのではないか、と感じた人もいるでしょう。
しかし、幼児と話をしていて、その純真無垢な反応に驚いたことがある人も多いはずです。彼らは驚くほどの発想力と、新しく何かを生み出す想像力に長けています。
まだ固定観念を持たない幼児からは、思いもよらないような言葉を聞くことがよくあります。さらに言えば、言葉だけでなく、子どもの動きや表情を見ているだけでも、驚きや発見がもたらされます。かっこつけず、ありのままの自分で輝いています。
個人差はあるものの、人の観念は、子どもの頃からの環境やさまざまな体験の積み重ねによって徐々に固まり、小学校低学年の頃(6〜8歳)には確立されるといわれています。扁桃体と呼ばれる部位に、情動が記憶される場所があり、幼少期からのさまざまな体験が記憶されます。すると、あらゆる物事に固定観念や先入観を持つようになるのです。
そこから脳が凝り固まり始めるのです。ですから、6〜8歳のときに起きたことは、一生忘れずに脳の記憶として無意識の決断、選択となってあなたの行動範囲を決めるおおもととなっていると言っても過言ではないでしょう。
大人同士で話をするとき、相手の話している内容などから動きや表情はおおよその見当がつくものです。ところが子どもと話していると、予想をはるかに超えるような動きや表情に出会うため、驚かされます。彼らは固定観念に縛られていないため、そのときの気分のままに自由な動きや表情をすることができるのです。
大人が、このような子どもたちの自由な動きや表情を見たり、あるいは会話を交わしたりする時、脳ではどんなことが起きるのでしょうか。
驚きによって、脳内ではこれまでにはない新しいシナプスの活動が始まり、今まで照らされていなかった部分に光が当たります。つまり、脳細胞と脳細胞の連携プレイが起きやすくなります。こうして新たな回路が作られると、脳は学習します。その結果、今まで想像もしなかったようなアイデアや発想が生まれるのです。
その他にも、子どもと接することで脳にとってよいことは、数多くあります。
子どもから町づくりの意見を取り入れるなど、子どもの社会参画に力を注ぐ自治体も増えています。こうした例がさらに増えれば、今後は、子どもの意見を取り入れる企業もたくさん出てくるのではないでしょうか。実際に小学生の起業家も世界にいるわけですから。
会議などのフォーマルな場だけでなく、日常的に子どもと真剣に接する時間を作るのも有効です。脳内に新たなネットワークが築かれ、よりフレキシブルな発想力が身につくでしょう。私は、ボウリングやロッククライミングをして子どもと遊んだり、子どもを先生と崇めてゲームの攻略法を聞いています。
脳が刺激され直感力が向上する
子どもと話すことは、次のような効果があり脳を鍛えるためにも有効です。
1感情を癒やす
言葉のバリエーションが少ない小さな子どもとのコミュニケーションは、心と心のやりとりになるので、言葉を使う思考と思考のコミュニケーション以上のヒーリング効果を生むことがあります。固定観念を持たない子どもが、純粋そのものなのが関係しています。普段ほとんど笑うことがない認知症の人が、小さな子どもやペットなどを見ると自然に笑ったというシーンをよく見かけます。
2直感力を磨ける
人の脳は、長年の間に蓄積された感情によってパターン化されています。
固定観念を持たない子どもは常に直感で動いているため、その行動を見ているだけで、これまで使っていない脳が刺激され、感情や思考に縛られた状態から解放されます。結果的に、直感力を磨くことにもつながります。新しいことも吸収でき、脳内ネットワークが広がります。
3自分を知る
子どもは、我々のマイナス感情からわき出るエネルギーを敏感に感じ取っています。
怒りの感情で爆発しそうなときに、自分よりまず子どもが反応して泣いてしまったという経験はありませんか? これは、子どもが近くにいる人の感情を映し出すことがあり、その状態について教えてくれている現象なのです。
彼らが一生懸命語ってくれていることに感謝し、何を訴えているのかを引き出してみてください。笑顔で話を盛り上げてください。子どもと会話がしっかりできれば、大人との会話が楽に感じるはずです。それくらい子どもとの会話は、心と心のつなぎあいの練習になるとも言えるでしょう。
以上のような効果を得るためにも、子どもと話す際に心がけたいことがありますので、最後に触れておきますね。
1口をはさまない
子どもの常識と大人の常識とは違いますから、「それは違う」と子どもの言葉を遮ったり、先回りして子どもの言葉を奪ってしまいたくもなるでしょう。
しかし、子どもが言おうとしている大事な言葉を逃してしまいます。時には、子どもが言いたいことを引き出しながら、完全に聴き手にまわるようにしましょう。あえて言葉をはさむとすれば、あいづちを打って話に勢いをつけてあげましょう。
2 内容にこだわらない
子どもの言葉には中身がないとか、薄いとか感じることもあるかもしれません。そこで、話を途中で打ち切ってしまっては、子どもも心を開いてはくれません。
言葉にならない言葉を発している幼児と接する際にも、こちらから話しかけて、表情や動きなどに着目しましょう。そんな子どもの話こそが、大人の脳を大いに刺激します。
愛を持ったコミュニケーションこそ、子どもの脳を育て、大人の私たちの脳の成長にも寄与していくことを覚えておいてください。
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いかがでしょうか? ビジネスも自分の成長も、プライベートなこともすべての「源」は脳です。脳の活用の仕方をさらに知りたい方はぜひ、「ハーバードの研究員が教える脳が冴える33の習慣」で紹介されている脳が冴える33の習慣を実践して自分らしい人生を発見してみてください。
「ハーバードの研究員が教える脳が冴える33の習慣」
著者/川﨑康彦
発行/株式会社アスコム
https://www.ascom-inc.jp/books/detail/978-4-7762-1270-6.html
川﨑康彦
医学博士。脳科学者。元ハーバード大学医学大学院研究員(2003~2008年)。専門は神経生理学。佐賀大学医学部大学院神経生理学博士課程卒業。中国医科大学(旧満州医科大学)医学部卒業。中国では、東洋医学と西洋医学の両方を学ぶ。その後、これまでの研究成果を買われ、ハーバード大学医学部ブリガム・アンド・ウィメンズ病院麻酔科の研究員として招かれる。在籍中に、論文がネイチャー関連誌にも掲載される。日本に帰国後は、医学博士、理学療法士、カウンセラーとして運動、睡眠、痛みなどに対し、多方面からの知識でアプローチしている。現在は、チャレンジ、感動、旅を通して「多様な脳の共存、共感、共鳴を通して個々の意識と集合意識の成長」をテーマに研究活動を展開し、それらを通して社会に貢献していくコミュニティIBTA(Impact your Brain and Tuning them All)実現のための活動のほか、脳の研究とハーバードでの経験から得た、固定概念を覆して生き方を変えるためのメソッドをオンラインサロンで伝えている。