2つのノブで素早く動く!「SIRUI A-10R」
昔の自由雲台は重かった。耐荷重が増えるごとに雲台の重量も増加してボールの直径も大口径化するのが当たり前だった。現在もφ55mmの重量級モデルが存在する。三脚のカーボン化と撮影機材の軽量化によって雲台も軽いことが重要視されるようになった。そこでφ40mm、36mm、30mm、25mmなどの小口径で低重心の自由雲台が登場した。「A-10R」はウォームギアロックフォースの採用により軽量なボディで確実なロックを実現。その重量は同じ耐荷重20kgのST-10Xよりさらに110gも軽い360gなのだ。軽いだけでなく操作もシンプルでパンロックとボールロックと2つのノブで操作できる。さらにプレート側にもパンニング機能搭載。
そして本機の特徴はロックノブにフリクションノブが内蔵され親指で固さの範囲を調整できることだ。これによって、ガックン首振り現象を防止できる。アルカスイス互換プレートは単品販売でも人気のクイックシュー「TY-50」を採用。こちらのプレートはプッシュボタン式の落下防止機能に対応、回転防止用の爪も付いている。ネジはツマミ付きでマイナスドライバーまたは六角レンチで増し締めもできる。
一昔前のGitzoの自由雲台「G1275」は実測725gもあった
「SIRUI ST-10X」はプレートレスで実測407gと軽い
「SIRUI A-10R」はプレートレスで340gとさらに軽い
ST-10Xより低重心化されプレート受けまでの高さは実測72.5mm
ロックノブの表面に小さな銀色のノブがある。これを回してフリクションの範囲を調整する
プッシュ式の落下防止ピンを内蔵。両端にネジがあるプレートは取り外さないと装着できない
プレート側のパンロックは引き上げてノブを好みの角度に変更できる
付属プレートには落下防止用のネジはなく内側の溝にピンが引っかかる方式
回転防止用の爪はOM-1なら液晶モニターを開いてギリギリ対応可能
液晶が固定式でスリムなFUJIFILM「X-E3」なら問題なく爪が使える
結局どっちの低重心がいいのか?
どちらもボール直径36mmで最大搭載荷重20kgのST-10X(1万3750円)とA-10R(1万3200円)。私の結論はST-10X推しである。ボールの滑らかな動きと汎用製の高いネジ付きプレートに対応した低重心自由雲台である。A-10Rは操作がシンプルなので素早い動きが要求され、登山など究極の軽量化が求められる場合に最適だ。フリクションノブが小さいせいか、ロックノブの動きを渋くせずにガックンさせない設定が難しい。私はカメラ側のプレートを雲台側にスライドしてロックしたい派なので、プッシュ式のロックピンがあるとワンアクションで操作できない。さらにネジを使った落下防止プレートとの混在ができなくなり、他の機材もロックピン式に統一する必要が出てくるのも悩ましい所だ。
古い自由雲台を使っている人はどちらを選んでも目からウロコの滑らかな操作性なのだ。さらにハイコスパで作りのいいことにも驚くに違いない。そして、アルカスイス互換の沼にも足を踏み入れていただきたい。
メーカー製の交換レンズもアルカスイス互換三脚座を採用。これならプレート不要で取り付けられる
写真・文/ゴン川野