連載/ゴン川野の阿佐ヶ谷レンズ研究所
自由雲台は低重心が使いやすい!
三脚に欠かせない雲台も進化を続けている。まず基本は3Way雲台、垂直方向のチルトと回転方向のパン、そしてカメラの水平を決めるロールを別々に調整する方式だ。風景やマクロなどじっくり構図を決める撮影に向いているが、野鳥や航空機など動くモノを撮るのには向いていない。
そこで注目されたのが自由雲台である。上下に左右に自由に動くボールをネジで固定する方式で、操作がカンタンでカメラを自由な方向に動かせ、雲台自体も小型軽量といいことずくめなので三脚に標準搭載される事も多い。これに動画用のビデオ雲台、ブツ撮り用のギア雲台を加えれば、雲台コンプリートと言える。
無敵と思われた自由雲台にも弱点はある。スクリューノブをゆるめたときにレンズやカメラが重いとガクッとおじぎしてしまうこと。チルトとパンを独立しておこなえないこと。カメラをタテ位置にすると重心が高くなって不安定になりやすいこと。
あとは使ってみると分かるが、チルトの振りに制限があり、雲台のミゾに入れないとカメラを下に向けられない。またロックノブを締め込むと微妙に構図がズレる。カメラ側のアルカスイス互換プレートが重みに耐えられずにズレることがある。タテ位置撮影でのブレを抑えるために生まれたのが最新設計の低重心自由雲台である。
今回は2001年に創業、ハイコスパなプロ用カーボン三脚でお馴染みの「SIRUI」が発売している最新の低重心自由雲台から、1万4000円以下で購入でき、最大搭載荷重20kgの2モデルを選んで、その違いを検証していこう。
4つのノブを使いこなせ!「SIRUI ST-10X」
自由雲台の弱点の1つ、ノブをゆるめるとガクッと来ないようにフリクション調整ノブが設けられているのが「ST-10X」だ。これを締めておけばガクッとこないが、締めすぎると自由雲台のボールの動きが渋くなってしまう。それからカメラ水平方向に回すパンをおこなうためのパンニング機能を搭載。もちろん、雲台全体をパンニングできるのだが、それとは別にプレートクランプ側にもパンニング機能がある。これが何の役に立つかと言えば、ボールを動かして水平を出した後にパンしても水平が保たれるのだ。これは動画撮影には欠かせない、静止画撮影ではなくてもいいがあると便利な機能だと思って欲しい。
ノブは全部で5つあり、その役目は、雲台のパンロック、ボールのロック、フリクション調整、プレート固定、プレート側のパンロックとなる。プレート固定とパンロックは同軸にノブが設けられ、内側のノブでプレートを固定する。基本操作するのは1番大きなノブで、これだけでカメラを自由に動かせるのだ。このノブの締め具合でジワーッと滑らかにボールが動くかどうかが自由雲台のキモになる。
「ST-10X」は気分良く動いてくれる。オイルレスダンピングボール構造なので、油が切れて動きが渋くなる心配はない。ボールの直径は36mmで、雲台重量470g、スペックの最大荷重は20kg。実際にOLYMPUS OM-1に100-400mmのズームを付けて斜めに固定してもガッチリとロックできた。カメラ重量は実測で2070gだった。
正面から左側にパンロックとフリクション調整用のノブがある
正面から右側にボールのロックと、同軸構造のプレート側のパンロックを並べた
アルカスイス互換プレートは両側に落下防止ネジが両端にあり、カメラ回転防止の爪も装備
プレートが回転しないようにカメラボディの背面にオレンジ色の爪を立てる
私が使っているOM-1は三脚ネジ穴が異常に前にあるので爪が届かなかった
約2kgの超望遠レンズとカメラを装着、ピタリと固定できて動かない