世間に浸透している名前が、実は企業の登録商標だったというケースがあります。『マジックテープ』もその一つです。マジックテープの正式名称やそのほかの呼び方、製品が誕生した経緯などを紹介します。登録商標の意味や、具体例についても見ていきましょう。
マジックテープの正式名称は何という?
2枚の布を合わせるとくっつく『マジックテープ』ですが、正式名称が別にあることを知らない人もいるのではないでしょうか?正式名称と併せて、発明に至った経緯についても紹介します。
正式名称は「面ファスナー」
耳にしたことがないという人もいるかもしれませんが、マジックテープの正式名称は『面ファスナー』です。面ファスナーは、マジックテープをはじめ、ベルクロなどの元になった製品でもあります。
発明したのは、スイス人のジョルジュ・デ・メストラルです。犬とともに山を歩いているときに、自分の衣服や犬に野生ゴボウの実が、たくさんくっついているのに気が付きました。
子どもの頃から発明好きだった彼は、顕微鏡でその実を観察したのです。その実の表面がいくつもの鉤で覆われていることからヒントを得て、2枚の布を密着させたり取り外したりできる面ファスナーを思いついたといわれています。
参考:面ファスナーの歴史 – マジックテープについて|クラレファスニング
「マジックテープ」は登録商標の1つ
マジックテープは、日本で初めて販売された面ファスナーで、『株式会社クラレ』の登録商標の一つです。2枚の布を押さえるだけでしっかり密着し、簡単に剥がせる『魔法のテープ』として、1960年に販売が開始されました。
1964年には新幹線の客席に付いているヘッドレストカバーに使われ、一躍有名になりました。軽量で耐久性にも優れ、用途に合わせて大きさも簡単に調整できることから、家庭用品・工業用品などさまざまな分野で幅広く使われています。
現在、マジックテープの製造販売を行うクラレファスニング株式会社では、マジックテープ以外にも『フリーマジック』『マジロック』など用途・目的に合わせた面ファスナーを開発・販売しています。
クラレファスニング – 「マジックテープ」のリーディングカンパニー
まだまだある!面ファスナーの呼び名
面ファスナーは他の企業でも開発されており、マジックテープ以外にも面ファスナーの呼び名がいくつか存在します。
例えば、世界各地で販売されているベルクロ社の『ベルクロ』や、ファスナーで有名なYKK株式会社の『クイックロン』が特に知られています。なお、『ベルクロ』と『クイックロン』は、登録商標名です。
また、株式会社アラコーが作っている面ファスナーは『AKテープ』という名称で販売されています。
VELCRO® Brand Fastening Solutions | Velcro Companies
YKK㈱ ジャパンカンパニー
面ファスナー、繊維製品の製造メーカー 株式会社アラコー
知らない間に使ってる?登録商標名とは
登録商標という言葉は知っていても、実際にどのような役割があるのか知らない人もいるでしょう。ここでは、登録商標の制度について具体例と併せて紹介します。
オリジナルのマーク・名称を守る制度
商標は自社が取り扱っている製品・サービスの、オリジナルのマーク(識別標識)や名称のことで、他社製品と区別するためのものです。商標制度は商標権に基づき、特許庁へ出願し商標登録することでオリジナルマーク・名称を守る制度です。
登録商標名となれば、自社の商標として安心して独占的に使えるというメリットがあります。登録されている商標は無断で使用できないため、他の企業に勝手にマネされたり、使われたりするのを防げます。
登録商標であることは、ブランドの信頼・イメージを守ることにもつながるため、企業にとって大切なことなのです。
意外と多い!実は登録商標だったもの
普段、何気なく会話で使っている名称が、実は登録商標であることは珍しくありません。例えば、『ウォシュレット』はTOTO株式会社の登録商標です。TOTOの製品以外は『温水洗浄便座』と呼ばれます。
また『セロテープ』は、ニチバン株式会社の登録商標です。ニチバンの製品以外は、一般的に『セロハンテープ』もしくは『セロハン粘着テープ』と呼ばれます。
『ポスト・イット』は、アメリカに本社がある3Mの登録商標です。それ以外は『ふせん』と呼ぶのが一般的です。
総合トップ | TOTO株式会社
ニチバン株式会社:製品情報サイト|ぴったり技術で明日をつくる
3M|3Mジャパングループ
面ファスナー(マジックテープ)に関するQ&A
面ファスナーの仕組みや長持ちさせる方法など、よくある疑問をまとめました。知識を深め、日常生活のさまざまな場面で活用してみましょう。
くっつくのはどんな仕組み?
面ファスナーがくっつく仕組みは、繊維形状の異なる二つの面を使用していることにあります。面ファスナーには、触れるとチクチクする『フック』が付いた面と、ふかふかした『ループ』が付いた面があります。
一般的にフックの面は『オス(A型)』、ループの面は『メス(B型)』と呼ばれており、ループがフックに引っかかることでくっつく仕組みになっているのです。
現在はさまざまな用途に合うように、ソフトなタイプからハードなタイプまでそろっており、面の繊維形状が異なるタイプもあります。
また、繰り返し使えるのは、ループから引き剥がされたフックが、元の形状に戻る弾性を兼ね備えているためです。
参考:どうして<マジックテープ>は、軽く押さえるだけで留まるの?|株式会社クラレ
くっつきを長持ちさせる方法はある?
面ファスナーのくっつきは、使い方や手入れ次第で長持ちさせることが可能です。
しまっておくときや洗濯をするときは、ほこり・ごみが付着して粘着力が低下してしまわないように、両面をくっつけておきましょう。一緒に洗濯するほかの衣類にくっついたり、摩擦で傷んだりするのも防げます。
また、優しく丁寧に少しずつ剥がすことも、長持ちさせるポイントです。勢いよく乱暴に剥がすと、繊維が伸びて劣化を早めてしまうことがあるためです。
構成/編集部