弔問時のマナーがよく分からず、不安に感じている人は少なくありません。弔問のタイミング・服装・持ち物など、把握しておきたい基本的なマナーを紹介します。お悔やみの言葉や線香の作法なども確認し、失礼のないよう弔問できるようにしましょう。
弔問時のマナー「タイミング編」
一般的に弔問とは、遺族を訪問しお悔やみの言葉を伝えることです。この弔問のタイミングを間違えてしまうと、マナーはもちろん、遺族に迷惑をかけてしまうことにもなりかねません。まずは、いつ弔問するのが適切なのかを確認しましょう。
通夜・葬儀前
通夜もしくは葬儀前に弔問するのは、基本的に親族や親しい間柄の人のみです。また、遺族に負担をかけないためにも、通夜前の弔問は避けた方がよいとされています。
親族ではなく友人や同僚であっても、故人と親しい間柄だった場合は、訃報を受けたらすぐにでも出向きたいと思うかもしれません。しかし、遺族は悲しみの中、通夜などの準備で慌ただしくしていることが多いため、配慮が必要というのが主な理由です。どうしても出向きたい場合は、まず事前に遺族に確認しましょう。
また、遺族からではなく、知り合いなどから訃報を耳にすることもあるものです。弔問したいと思うかもしれませんが、遺族から直に訃報の連絡を受けていない場合は、弔問を控えるのもマナーとされています。
葬儀後
葬儀に間に合わなかったり、都合が悪くて行けなかったりするケースもあるでしょう。葬儀後に弔問する場合は、基本的に葬儀後3日目から四十九日までに済ませるのがマナーとされています。
葬儀直後は、遺族が心身ともに疲れていたり、さまざまな手続きに追われたりしている可能性があるため、少し時間を空けるようにしましょう。
また、必ず四十九日までに済ませなければならないわけではありません。四十九日を過ぎてから知ったときなどは、遺族に連絡をし弔問について聞いてみましょう。
弔問時のマナー「服装編」
通夜・葬儀では喪服を着るのがマナーであるため、弔問時も同じだと思っている人もいるのではないでしょうか?どのような服装が正しいマナーなのか確認しましょう。
通夜・葬儀以外には平服で
通夜・葬儀以外で弔問する場合は、喪服ではなく平服を着用するのがマナーです。平服といってもカジュアルすぎる格好は避け、一般的に男性はスーツ、女性はスーツもしくはワンピースを着用します。
意識したいポイントは、紺色・グレーなど暗いトーンの色を選び、落ち着いた雰囲気にすることです。男性はネクタイ、女性はメイクやアクセサリーも派手になりすぎないように注意しましょう。
平服を着用する理由は、遺族に対する配慮からとされています。通夜前の弔問で喪服を着ていると、事前に不幸を予測していたように感じさせてしまう可能性があります。
葬儀後の弔問で喪服を避けるのも、葬儀を思い起こさせ、再び悲しい思いをさせてしまうことがないようにという配慮のためです。
弔問時のマナー「持ち物編」
弔問の際には、お供え物や数珠、香典を持っていく必要があるのでしょうか?香典を持っていく場合の香典袋や、金額の目安についても確認しましょう。
お供え物は必須ではない
お供え物は、必ず持っていかなければいけないわけではありません。ただし、地域によって慣習が異なるため、事前に周囲の詳しい人に確認するようにしましょう。
もし故人と親しい間柄で通夜前の弔問をする場合は、お供え物を持参しないのが一般的とされています。しかし、花やお菓子、果物といったお供え物であれば、持っていってもよいというケースもあるようです。
花の場合は、故人の近くに供える白を基調としたユリなどがよいでしょう。後日弔問での手土産の有無は、どちらでもよいとされています。お菓子や果物を持参するなら、故人が好きだったものや、常温でも日持ちするものがおすすめです。
数珠は宗派・宗教によって異なる
数珠は遺族の宗派・宗教に合わせて、必要なものを選ぶことが大切です。例えば、仏教の場合は数珠が必要になります。
数珠には本式と略式があり、本式の場合宗派によって種類が異なります。略式であれば宗派を問わず使えるため、一つ持っておくと便利でしょう。なお家族でも数珠の貸し借りはNGです。
数珠の持ち方は、合掌したときに左手のみに通す場合と、両手に通す場合の2通りがあります。宗派・宗教によって異なりますが、いずれの場合も親指・人差し指の間に掛けるのが一般的です。
なお、キリスト教や神道の場合は、数珠は使いません。間違えて持参しないように気をつけましょう。
香典について
通夜前の弔問の場合は、香典は持っていかないのがマナーとされています。事前に不幸を予測しているように感じられるためです。
香典は通夜や葬儀、葬儀後の弔問の際に渡しましょう。なお、通夜で香典を渡し、後日弔問する場合には、香典を再び持参する必要はありません。
香典袋には数種類あり、いつ渡すのかによって表書きが異なります。基本的に四十九日までは『御霊前』を使い、それ以降は『御仏前』を使います。キリスト教や神道では、異なる香典袋を使うので、注意しましょう。
香典の金額は、故人との関係性や住んでいる地域によって異なります。目安は、友人・知人や勤務先の同僚・上司、取引先の場合は5,000~1万円程度です。親戚は1万円程度が目安となります。なお、香典袋は袱紗に入れて持参します。
弔問時のマナー「作法編」
弔問の際に、どのように接したらよいのか分からず、戸惑う人は少なくありません。遺族に失礼にならず、かつスムーズに弔問できるように、基本的な作法を確認しましょう。
基本は玄関先で挨拶
通夜前も葬儀後も弔問は、玄関先で挨拶をし、お悔やみの言葉を伝えるのが基本です。お供え物や香典を持参している場合も、玄関先で渡しましょう。
故人との対面や線香は、遺族から勧められた場合のみ可能です。自分から申し出るのはマナーに欠けるとされているので、注意しましょう。
なお、親しい人が亡くなったときは、気持ちの整理に時間がかかることもあります。遺族から対面を勧められた際に、断るのは失礼にあたると感じる人もいるかもしれませんが、遠慮することも可能です。「まだ心の整理がつかず対面がつらい」など、気持ちを伝えて遠慮しましょう。
対面を勧められた場合
通夜前の弔問で、遺族から勧められ故人と対面をすることもあります。その場合は作法を心得て、マナーを守って対応しましょう。
まず、故人の枕元に向かい、正座をし、両手を床について一礼します。遺族が故人の顔に掛けてある白布を外したら、再度深く一礼してから合掌します。白布は自ら取らず、遺族が外すのを待つのがマナーです。立ち上がる前に正座のまま少し下がって、遺族に対しても一礼しましょう。
場合によっては、お茶などを勧められることもあります。しかし、遺族は通夜・葬儀の準備で慌ただしくしているので、気を遣わせないように心掛けることが大切です。弔問は手短に済ませ、場を辞するようにします。
弔問時のマナー「言葉編」
悲しみに暮れている遺族に、どのような言葉をかけたらよいのか悩むものです。適切な言葉をかけられるよう、お悔やみの言葉の例や注意点を紹介します。文言はある程度決まっているため、状況に合わせてアレンジして使ってみましょう。
お悔やみの言葉の例文
お悔やみの言葉は、状況に合わせて使い分けます。訃報の連絡を受けた際は、悲しみの中、連絡をくれた遺族への感謝やねぎらいの言葉を伝えましょう。例えば、「御傷心の中、ご連絡をくださりありがとうございます。心からお悔やみ申し上げます」などです。
弔問の際は、「この度は本当に残念でなりません。心からお悔やみ申し上げます」などが一般的です。「生前は大変お世話になり、感謝しております」のように、より個人的な気持ちを述べてもよいでしょう。
なお、キリスト教や神道など宗教によって、お悔やみの言葉は異なります。とはいえ、基本的に「お悔やみ申し上げます」は宗教にかかわらず使用できる言葉です。
忌み言葉は避ける
お悔やみの言葉を述べるときに注意しなければいけないのが、『忌み言葉』です。意図せずに使ってしまわないように、避けるべき言葉を把握しておきましょう。
主な忌み言葉の一つが、不幸が続くことを連想させる言葉です。例えば、『続く』『重なる』『再び』『繰り返し』『何度も』などです。
『度々』『重ね重ね』『ますます』などの重ね言葉も、同様に続くことを連想させるため使わないよう注意しましょう。『苦しむ』など不幸・不吉なことを連想させる言葉も避けます。
また、「元気を出してください」「がんばってください」など、つい励ましの言葉をかけたくなるかもしれません。しかし、相手を思ってのことだとしても、励ましの言葉がプレッシャーを与えてしまったり、より悲しい思いをさせてしまったりすることもあるため、控えましょう。
亡くなった理由は聞かない
それまで元気だった人の突然の訃報だと、動揺してつい理由を聞いてしまいがちです。しかし、亡くなった理由は聞かないのがマナーとされています。
気落ちしている遺族に、当時の悲しみ・つらさを思い出させてしまわないように配慮しましょう。
また弔問の際に、遺族から亡くなった理由を打ち明けられることもあります。その際も、根掘り葉掘り聞くのは避け、相手に失礼にならないようさりげなく受け流すようにしましょう。
弔問時のマナー「線香編」
弔問の際に、遺族から線香を勧められることもあるでしょう。仏教では、故人を清める意味を込めて線香を供えます。線香の作法は難しいわけではありませんが、宗派によって作法が異なるので、基本的な作法と併せて紹介します。
線香をあげる作法
線香をあげる基本の作法は、以下の通りです。
- 仏壇の前に座り、一礼する
- ろうそくに火がついていない場合は、ろうそくに火をつける
- 線香を取り、ろうそくから火をつける
- 焼香に線香を立て(または寝かせ)、おりんを1回鳴らし、合掌する
- 最後に遺影に一礼し、遺族にも一礼する
注意点として、線香にライター・マッチで直に火をつけないようにしましょう。煙が出てきたときが、線香に火がついた目安です。火を消す際は口で吹かず、左手で軽くあおいで消すのがマナーです。
なお、おりんは鳴らさなくても構いません。宗派によっては、おりんを鳴らさないこともあります。
宗派別の線香の作法
線香の本数や置き方は、宗派によって異なります。特に線香の置き方は、『立てて置く宗派』と『寝かせて置く宗派』があり、大きく異なるため注意しましょう。
例えば、『臨済宗』『曹洞宗』『日蓮宗』は、1~2本の線香を立てて置きます。『天台宗』『真言宗』は3本の線香を立てて置き、『浄土宗』は1本の線香を2つ折りにして立てて置くのが作法です。『浄土真宗』は本数に決まりはなく、寝かせて置きます。その際、香炉に入らなければ線香を折るとよいでしょう。
このように作法が異なるため、事前に故人の宗派を確認してから弔問すると安心です。
構成/編集部