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なぜ、銀行株は突如として上昇し始めたのか?金融政策決定会合に注目が集まる理由

2023.03.13

2022年12月後半から銀行株が上昇しています。

みずほフィナンシャルグループの株価は2022年12月19日の1,698円から2023年3月10日は31.8%高い2,238円をつけました。三菱UFJフィナンシャル・グループも12月19日は772円でしたが、2月29日に29.4%高い999円をつけました。

この傾向は、ゆうちょ銀行、SBI新生銀行、横浜銀行と東日本銀行が統合して誕生したコンコルディア・フィナンシャルグループなどの地銀に至るまで、ほぼ共通して起こっている現象です。

銀行株が上昇しているのはなぜなのでしょうか?

まさかのイールドカーブ・コントロールの変動幅拡大

銀行株は2022年12月19日に潮目が大きく変化しました。ここが一番のポイントです。12月19日と20日に日本銀行の金融政策決定会合が開催されています。この会合でサプライズが起こりました。

日銀は2016年9月にイールドカーブ・コントロールと呼ばれる長短金利操作付き量的・質的緩和を行い、短期金利を-0.1%、長期金利を0%前後に抑え込みました。2021年3月以降は10年国債利回りの変動幅をそれまでの0%前後から±0.25%程度へと修正しました。変動幅を拡大したのです。

日銀の狙いの一つに、イールド・カーブの傾きを急にすることで、金融機関の収益改善を行うことがあったと言われています。

2021年3月の10年国債利回りの変動幅拡大も、やはり銀行株の上昇を促しました。みずほフィナンシャルグループの2021年1月29日の株価は1,378円でしたが、同年3月19日には25.7%高い1,732円を付けています。

2022年12月の金融政策決定会合では、長期金利の変動幅を±0.25%から±0.5%程度に拡大することを決定しました。当時、黒田総裁を含む日銀高官は10年金利の変動幅拡大は利上げに当たるなどといった発言があり、2022年12月の会合では政策変更は行われないとの見方が大半でした。まさかの変動幅拡大に銀行株は急上昇したのです。

現預金を使いきれずに総資産が膨張するメガバンク

みずほフィナンシャルグループの代表執行役社長兼グループCEOの木原正裕氏は日本経済新聞のインタビューで、日銀の政策修正によって10年国債利回りが0.4%程度となるなどの好条件が重なると、350億円程度の利益の上振れ要因になると話しています。金利が正常化すると、銀行本来の貸し出し業務がしやすくなるためです。

ここで、異次元緩和と呼ばれる金融緩和が、メガバンクにどれほどのインパクトを与えたのか見てみましょう。

日銀は2013年4月にマネタリーベースを2年で2倍にするなど、大規模な金融緩和をスタートしました。この時期からメガバンクの業績は横ばいになります。2014年10月に長期国債の買い入れ額を増やすなどの追加緩和を実施しました。そして2016年1月にマイナス金利を導入します。

各社の利益は2016年3月期から2017年3月期にかけて急速に減少します。

※決算短信より
みずほFG
三菱UFJFG
三井住友FG

興味深いのは、利益が減っているにも関わらず、各グループの総資産が膨張していることです。三井住友フィナンシャルグループの2022年3月末の総資産額は257兆7,000億円で、2014年3月末と比較して1.6倍に膨らんでいます。三菱UFJは1.4倍、みずほは1.3倍になりました。

※決算短信より
みずほFG
三菱UFJFG
三井住友FG

総資産が膨張している背景の一つとして、現金・預け金が増えていることがあります。メガバンクは低金利で利ザヤが稼げないため、顧客から預かった資金を持て余し、日銀の当座預金に預けています。

異次元緩和で銀行は構造改革が迫られ、非金利ビジネスで稼がなければならないと言われるようになりました。非金利収入には様々な種類があり、M&Aの仲介や保険・投資信託の販売による手数料収入、証券仲介手数料などがあります。

銀行は1998年に投資信託の販売、2007年に保険の販売が可能になりました。

しかし、現実はそううまくはいきません。メガバンク各社は、利ザヤが得られずに利益水準を下げ、豊富な現金は日銀に預ける他ありませんでした。その実態が浮かび上がったのです。

植田和男氏が就任して初の会合は4月27日・28日

2023年3月9日・10日の金融政策決定会合では、現状維持が決定しました。サプライズはなく、従来の大規模な金融緩和を継続することとなります。2023年4月からは植田和男氏がかじ取りを行います。植田氏は国会の所信聴取で「金融緩和を継続し、企業が賃上げできる環境を整える」と述べています。黒田総裁の方針を継続すると考えられています。

ただし、金融緩和には出口戦略が必要で、いつかは金融政策を正常化しなければなりません。このまま大規模緩和を続ければ、円安の過度な進行などの副作用が起こります。

イールドカーブ・コントロールの変動幅を拡大したことは、出口を探る動きの一つ。植田氏の手腕が問われますが、出口戦略を意識する動きが加速するほど、銀行株は上昇する可能性があります。次の金融政策決定会合は4月27日・28日。植田氏初の会合であり、世界中の金融関係者が注目する2日間です。

取材・文/不破 聡

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