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脳が活性化して心も安定する「ありがとう」という言葉の力

2023.03.27

ハーバードの研究員たちは、困難なミッションを達成するため、まだ、発見されていない「価値」に到達するために日々、研究を続けています。そこで働く研究員たちが重要視しているある習慣。それは、「1日5分好奇心を刺激し、思考の固定化を避ける」「どんな時でも、新たな発見を求める」「チームや同僚の助けを得て、日々前進しようとする」といったことです。

ハーバードでは、これらの習慣を、「なんとなく」重要視しているのをではありません。一言でいうなら、「脳が冴えた状態をキープする」ための習慣として大切にしているのです。脳が冴えた状態をキープできるとどんな時でも思考が止まらなくなります。ビジネスから日常のモヤモヤまであらゆることがスムーズに運ぶようになるのです。

本記事ではハーバード大学の医療機関に在籍し、多くのプロジェクトを通じて学んできた脳の使い方を紹介する川﨑康彦氏の著書「ハーバードの研究員が教える脳が冴える33の習慣」からビジネスパーソンが仕事に使える「脳が冴える33の習慣」を抜粋、再構成してお届けします!

自信がつき信頼関係も深まる

日常的に口に出して感謝の意を相手に述べる習慣をつけておけば、相手が誰であっても、すぐに「ありがとう」という言葉を発することができるようになります。

そうはいっても、会社の上司や同僚などには感謝の気持ちを伝えることができても、身近な人ほどおろそかにしてしまいがちです。

私も長年、母に「ありがとう」と言えませんでした。

それは、何かをしてくれて当たり前と思う相手に、わざわざ感謝の気持ちを伝えなくても分かってくれるという、甘えの感情が出てくるからです。改めて「ありがとう」と言うのが恥ずかしいというのもあるでしょう。また、近すぎて悪いところばかりが目に入ってしまいやすいのかもしれません。

感謝の気持ちを表すのが苦手だったり、照れくさかったりするなら、「感謝ゲーム」をするとよいでしょう。これは、私がハーバードの研究所に在籍中、ミーティングなどで人が集まった際に、儀式の1つとして行っていたものです。私が所属していた麻酔科では、集まった人が、次々に人への感謝の意を思いつく限り素早く挙げていくことで、脳が活性化するのを目的として行っていました。

感謝ゲームは、次のような要領で行いましょう。

[STEP1]近くに座っている同僚などで、2人以上集まって行う

[STEP2]今、自分が感謝している事柄について順番に1つずつ挙げていく

[STEP3]これを2分間、なるべく考え込まず、素早く続ける

このゲームをすると、普段人に感謝の気持ちを伝えるのが苦手な人でも、自然にあらゆることに感謝する習慣がつきます。習慣化することで周りの人との関係性が良好になれば、さらに感謝の気持ちが芽生え、チャンスも倍増する好循環が生まれます。

そうはいってもつき合ってくれる同僚がいない、親しい人に改めて感謝の言葉をかけるのがどうしても恥ずかしいという方も安心してください。その場合、最初は、自室で、1人こっそりと感謝の気持ちを思いつくまま挙げていっても同じような効果があるので、試してみてください。

私のメンター(優れた指導者)の1人に、竹田和平先生がいらっしゃいます。竹田先生は「日本一の個人投資家」とも呼ばれた方で、104社の上場企業の大株主になったこともありました。そんな竹田先生も、「ありがとう」を言うのをとても大事にされ、1日3000回「ありがとう」と言うのを毎日継続することを推奨していました。それを実行に移した周囲の人たちは、運気が見違えるほど上昇したとのことですよ。竹田先生が亡くなった今も、ありがとうのエネルギーが私の心に宿っています。

もちろん、全部口にする必要はなく、心の中でつぶやくだけでも構わないとのことです。1時間継続すれば、3000回には達するとのこと。1秒に1回言えれば、50分で終わります。脳を冴えさせるため、チャンレンジしてみてはいかがでしょうか。

もう1つ、「ありがとうのシャワー」というトレーニングもあります。

1人を中央に置き、周りの人は中央に立つ1人に対して感じる感謝の気持ちを1分間、一斉に投げかけるのです。まるで、「ありがとう」というシャワーを浴びているかのような状態です。

私が体験したセミナーでは、20人が一緒に話し始めるので、一人ひとりの言葉を聞き分けることはできませんでした。とはいえ、弾丸のような感謝のエネルギーを感じると、中心に立った人は「自分って、こんなにも素敵なところがあるのか!」と気づきます。すると、自信が持てるだけでなく、相手への感謝の気持ちが湧いてきます。

結果的には、相互への感謝の気持ちが深くなり、ありがとうと言った人と言ってもらった人との信頼関係がいっそう深まります。このような一石二鳥の効果が、複数の人と同時に達成できるわけです。

20人ともなると大掛かりですが、5〜6人でも、十分に感謝のエネルギーは感じられます。その際、単に「ありがとう」と言うだけでなく、「いつも○○をしてくれて、ありがとう」「こんなところに感謝しています、ありがとう」というように、感謝の理由を一緒に伝えましょう。

脳が活性化し心も安定する

人に「ありがとう」という言葉が素直に言えるようになれば、脳細胞と脳細胞がシナプスを介して強く連結されていき、脳は活性化していきます。たとえネガティブな感情があっても、感謝の気持ちでつなげられたら全体としてポジティブに変えることができます。これがオープンハートの力です。ここで、このような相乗効果がもたらされているとき、脳はどのように働いているか、その仕組みを解説しましょう。

人には誰にでも、自分では持っているけれど他の人は持っていないものと、逆に他の人は持っているけれど自分では持っていないものがあります。脳が固定観念によって縛られている状態では、自分が持っていないものを持つ相手のことは、排除しようと考えがちです。自分の考えとは違う相手とは関わらないと決めつけてしまうのも、その一例です。

しかし、自分が関わるすべての人に心を開き、固定観念に縛られない状態を作っていれば、自分にないものを持っている人も受け入れようと考えられるようになります。

そうすると、自分の強みだけでなく自分の弱みも受け入れられます。このように、すべてが自分だと認められ、自分をリスペクトできるようになれば、自ずと相手への共感や感謝の念も持てるようになります。

常に1つの方向、1つの考えだけにとらわれず、多様な考えや物事といった刺激を取り入れようとすれば、脳は変化し、進化していきます。こうした変化や進化は、外側からの刺激によって臨機応変に変動する神経細胞の特性の一種「シナプスの可塑性」によって起こっていると考えられます。

シナプスとは、情報を化学的に伝達する部位です。シナプスとシナプスの間は完全につながっているのではなく隙間があり、そこで電気的信号を化学的信号に変換します。つまり、ここで次の神経細胞に情報を伝えるのです。細胞と細胞のコミュニケーションは、こうして起こっているわけです。

元来、人間の脳はワクワクやドキドキした行動によって進化するものですから、多くのさまざまな人と共感し、受け入れ、咀嚼していくことで、ますますワクワクが加速していきます。よい、悪い、優れている、劣っているなどにとらわれない発想で、すべてを愛おしく見る姿勢です。

人への「ありがとう」という感謝の念を持つことには、他にも脳にとってよい効能があります。その1つが、心が安定することです。

というのも、他者との信頼という心の状態が作り出されると、幸せホルモンとも呼ばれる「オキシトシン」という脳内の神経伝達物質が、視床下部と視し 索さく上じょう核かく(脳下垂体)から分泌されるからです。特に、人に親切にして感謝されるだけでなく、人に感謝する感情を持つと、大きな癒やしが得られます。これによって、オキシトシンの分泌が活発になります。

近年の研究では、オキシトシンは以下のような働きがあると分かっています。

[1]人への親近感や信頼感が増す

[2]ストレスが減少して幸福感が得られる

[3]血圧の上昇を抑える

[4]心臓の機能を高める

オキシトシンが分泌されると、心の安定がはかられます。逆にマイナスの感情にとらわれて脳が、怒りや不安などの感情でいっぱいになれば、ワクワクする感情が持続したり、ワクワクする物事に取り組む情熱がそがれたりしてしまいます。

ですから、たとえ些さ細さいなことにでも感謝し、その気持ちを伝えることは、相手のためになるだけでなく、自分にとっても非常に有用なのです。

まずは身近な人に「ありがとう」と伝えることから始めてみてください。3000回は無理でも「1日に最低10回は言う」くらいにすれば、無理なく長く続けられますよ。

☆ ☆ ☆

いかがでしょうか? ビジネスも自分の成長も、プライベートなこともすべての「源」は脳です。脳の活用の仕方をさらに知りたい方はぜひ、「ハーバードの研究員が教える脳が冴える33の習慣」で紹介されている脳が冴える33の習慣を実践して自分らしい人生を発見してみてください。

ハーバードの研究員が教える脳が冴える33の習慣
著者/川﨑康彦
発行/株式会社アスコム
https://www.ascom-inc.jp/books/detail/978-4-7762-1270-6.html

川﨑康彦
医学博士。脳科学者。元ハーバード大学医学大学院研究員(2003~2008年)。専門は神経生理学。佐賀大学医学部大学院神経生理学博士課程卒業。中国医科大学(旧満州医科大学)医学部卒業。中国では、東洋医学と西洋医学の両方を学ぶ。その後、これまでの研究成果を買われ、ハーバード大学医学部ブリガム・アンド・ウィメンズ病院麻酔科の研究員として招かれる。在籍中に、論文がネイチャー関連誌にも掲載される。日本に帰国後は、医学博士、理学療法士、カウンセラーとして運動、睡眠、痛みなどに対し、多方面からの知識でアプローチしている。現在は、チャレンジ、感動、旅を通して「多様な脳の共存、共感、共鳴を通して個々の意識と集合意識の成長」をテーマに研究活動を展開し、それらを通して社会に貢献していくコミュニティIBTA(Impact your Brain and Tuning them All)実現のための活動のほか、脳の研究とハーバードでの経験から得た、固定概念を覆して生き方を変えるためのメソッドをオンラインサロンで伝えている。

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